第2話
私と幸は許嫁だった。
そもそも許嫁とは戦国の世、自分が討ち死にした際、相手に子供を託す意味合いがあったらしいが、天下太平の世になった今では、むしろ相手を見定めるためにも、紹介による見合いが一般的になった。
しかしその風潮を軟弱とし、古来の武士道に固執する小城家は、同様の考えを持った父と意気投合し、ここに当時四歳の自分と、六歳の幸の婚約が成立した。
初めて幸に会ったのは、父に連れられ小城家に行き、当主である義父に挨拶した時である。
「お初に御目にかかります。斉藤松千代と申します。」
たどたどしく挨拶をした自分に、義父は
「うむ、小城次郎である。この度は我が娘、幸との婚約を受けてくれ感謝しておる。歳は我が娘の方が上だが、古来『歳上の女房は金の草鞋を履いても探せ』という諺もある。松千代殿には曲げて御承知願いたい」
と、子供である私に頭を下げて対応して下さった。
私は慌てて頭を下げて返事をしようとしたその時である。
「父上!本日斉藤さまが来られると聞きました!いつ頃参られるのでしょうか!?」
勢いよく開いた襖から、一人の少女が飛び込んできた。
私はあの光景を生涯忘れる事はないだろう。
許嫁の由来については適当です。この話の時代設定については、江戸時代と似ているが何処かが違う程度のふんわりとした感じでお願いします。




