48救助
「やっ、やったぜー!レヴィ、やったどー!」
ナルは、ステルスエボシが動かなくなった事で、倒したという事を悟ると、僕に駆け寄って来た。
「わぁーい!ナル凄いじゃん」
僕も嬉しかったから、駆け寄って来たナルと抱き合い喜びを分かち合った。
「レヴィ様から離れなさい。馬鹿が感染る」
しかし、そんな僕とナルを、ハルさんは引き離す。
「うおっ。なんだよ!嬉しかったんだから良いだろう?てか、馬鹿が感染るってどういう意味だ!」
「レヴィ様と喜びを分かち合うのは私です。ナル、あなたではない」
な、なんか、ハルさん不機嫌そうだ。
でも、まだここからの脱出があるから、また2人とも険悪になられても困る。
そうだ、僕が一芝居打とう!
「あ、あ〜。さっきの戦闘で精神的にキタな〜。うっ、気を抜いたら足に力が入らなくなった〜」
我ながら演技が下手だなと思いました。
でも、ハルさんは信じてくれたのか、僕に近寄って来て、両肩に手を添えて話しかけてくれた。
その内容はびっくりした物だったけど。
「それは大変です。仕方ありません、あまり気は進まないのですが、助けを呼びますか」
「うん。ありが・・・えっ?」
ごめん、今なんて?
「あの、ハルさん。今、間違いじゃなければ、助けを呼ぶって言った?」
「はい。あっ、それとも、もう少し頑張ってみますか?付き合いますよ?」
イヤイヤイヤ、違う、そういう話しじゃないから!
「もういいです結構です。えと、どうやって助けを呼ぶの?」
僕の問いに、一瞬ハルさんはポカンッとしたが、それから微笑みながら言う。
「レヴィ様、お忘れですか?先日、ある方から指輪を渡されたじゃないですか?」
「あっ、忘れてた!」
そうだった。
王子から通信用の指輪を貰ったんだった!
と言うか、まさか。
「ハルさん」
「はい、どうしました?」
「まさか、僕が指輪の事忘れていたのを知っていたけど、あえて気付かないふりしてた。なんて事はない?」
僕がそう聞くと、ハルさんはそっぽを向く。
「やっぱり!」
僕とハルさんがそんなやり取りをしていると、話しに入れないでいたナルが間に入って来た。
「お、おい。いったいなんの話しをしてんだ?」
「あっ、ナル。実は、助けを呼ぶ事が出来て、この洞窟から出られるよって話しだよ」
「マジか!」
「うん、ごめんね。もっと早く救助の方法に気付いていたら良かったのに、忘れてた」
「いいって、いいって助かるんだからな」
ナルは、手をヒラヒラさせながら言う。
「ありがとう、今から助けを呼ぶね。あっ、そうだ」
多分、ナルにはまだ話してなかったよね。
「あの、ナル。今から会話をする人、実は王子様なんだけど、いいかな?」
「ええっ!王子?てか、今更なんだけどレヴィって何者?メイドのハルもいるし」
ああ、そうか。
まずは、そこから話さないといけないか。
「あの、実は僕お城で治癒師見習いとして修行しているんだ。でね、王子とは・・・」
それから僕は、ナルに大まかにだけど、王子と僕の関係を話した。
「へぇー、そうだったのか」
話しを聞いたナルは、納得したようで頷いていた。
「と言うわけで、今から王子に連絡するね」
「ああ、頼むよ」
僕は、指輪に魔力を流す。
すると、指輪に付いていたダイヤが青く光りだし、少ししてすぐに王子に繋がった。
「俺だ。どうしたレヴィ?」
何でだろう、そんなに時間経っていないのに懐かしい声に聞こえる。
「あ、あの王子。実は、ちょっと色々あって、洞窟の中に閉じ込められてしまったので、助けて頂けたらなと思いまして」
「か〜、お前はアクシデントやトラブルと仲良しなのか?」
ぐっ、何も言い返せない。
「す、すいません」
「まぁ良い、分かった。俺がそっちに行くまで、安全な場所で待機してろ。動き回られると、指輪の位置が分かりづらくなる」
この指輪、GPSの役割もあるんだ。
凄く優秀だ。
「分かりました。では、よろしくお願いします」
王子との会話を終えると、魔力を流すのを止め通信を切る。
「話しは終わりましたか?」
「あれ?会話聞こえなかった?」
「はい。あのクズ、自分とレヴィ様のみしか会話が出来ないようにしていたみたいですね。・・・しかし、今回だけは許しましょう」
少し眉間にシワを寄せながら話すハルさん。
「でっ、来てくれるのか?」
「うん。安全な場所で待機しててって」
「OK、ならここだな」
ナルは、ホッとした様な顔になり座り込み、僕もナルの隣に座ると、ハルさんはせっせと何処からか木々等を集めて火を起こしたりしてくれた。
◇
「レヴィ様、指輪が赤く光っていますよ?」
ハルさんが僕の指輪を見ながら言った。
「あっ、本当だ」
これ、多分王子からの着信だよね?
どうやって取れば良いんだろう?
魔力を流してみようかな。
「やっと繋がった。さっさとでろ」
ムカッ
いや、ダメだよレヴィ。
今回は助けてもらう身なんだから下手に出なきゃ。
「す、すいませんー。で、どうしました?」
「どうしたって、そろそろ着きそうだから連絡したんだろうが。お前らが崩した岩をわざわざどかしてな!」
ムカムカッ
「スーハー、スーハー。あ、ありがとうございます。では、すぐに動けるようにしておきますね」
「当たり前だ。あ、これ貸しだからな」
ブッ
それだけ言うと通信が切れた。
ああああ、ムカつく!
あー、ムカつく!
「ど、どうしたレヴィ?顔が説明し難いようになってるぞ?」
「な、何でも無いよ。あ、そろそろ来てくれるから、すぐに出だせるようにってさ」
「そうか、助かったんだ、良かったー。しかし、王子と初対面か。どんな人なんだろうな?」
ナルは、会った事がないから、勝手に良い妄想をしているのだろう。
顔が、うっとりしてるもん。
「顔は、まぁ恰好良いのかな?でもね、性格がもうね何ともねって感じだよ」
僕は腕を組みながら話していた。
その時、後ろから男性の声が聞こえて来た。
「おう、それはどんな性格なのかな?是非、聞いてみたいな。レヴィよ」
ヤ、ヤバい、絶対後ろを見ちゃダメだ。
「ナ、ナル。僕は別ルートから脱出を試みようかなと思うんだ。だから、じゃあね」
ここから一刻も早く逃げなければ。
「な〜に言ってるんだ。わざわざ助けに来たんだぞ?一緒に帰ろうぜ?是非、そのもうねなんともねと言う性格とは何だかを聞きながら、な?」
「王子、それ以上はやめて下さい。私のレヴィ様を困らせないで下さい」
「お前は黙ってろ。毎回毎回、横槍を入れるんじゃねー」
「ヤバい、王子マジでカッコ良いんだけど!」
ま、まぁ、何はともあれ助かった。
のかな?
いつも、お読み下さりありがとうございます^_^