47反撃
ナルと拳を軽くぶつけ合った後、僕は持ち場に戻り、サポートをするため状況をみる。
落ち込んでいたナルも復活し、ハルさんの加勢するために近くに行った。
「ナル、遅かったですよ。全く、使えませんね」
ステルスエボシから目を離さず、近くに来たナルに文句を言うハルさん。
「おまっ、それがあたしを傷つけてんだよ!まぁ〜あ?あたしがいなきゃ勝てないんだし、ハルも一緒じゃね?」
「私はメインの武器を持っていなく、1番刃物で苦手な小太刀を使っているからで、あなたとは違います」
「くっ、コノヤロー」
ダメだ、また内輪揉め始まっちゃう。
「ふ、2人共ケンカしないで!もし、ここを切り抜けて無事、シーサイドまで着いたら、どこか良いお店で一緒に何か美味しい物食べよう。奢ってあげるから」
なーんて、ダメだよね。
こんな誘いに乗る訳、
「マジか!絶対だぞ、約束だからな?」
「レヴィ様と一緒に、景色が良いお店でご飯。最高ですね」
乗る訳あったー!
「う、うん約束ね」
「よしっ、ちゃっちゃと倒しちまうか」
「ですね。早くこの爬虫類を八つ裂きにし、洞窟を出て食事をしに行きましょう」
「が、頑張って」
生き生きし始める2人、取り敢えずケンカをやめて共闘してくれるなら、何でもOKです。
◇
「ナル、私に作戦があります。聞きなさい、そして実行しなさい」
「何だ?てか、お前の作戦実行する前提かよ!」
「良いから聞きなさい」
「ーーー」
ハルは少し声を小さくし、ナルに作戦を伝える。
「おー、分かった。やってみるよ」
それを聞いたナルは、名案とばかりにテンションを上げた。
「しくじらないで下さいね。しくじったら食事の話しは無しで」
「何でお前に言われなきゃならないんだよ!でも、やってやるよ」
「では、作戦開始です」
「おうよ!」
2人は言い争っているのか、戯れているのか分からないやり取りをした後、二手に別れた。
「おらぁ、こっちだぞカメレオン!」
ビシッ
『ギギー』
天井にいたステルスエボシに、ナルはそこら辺に落ちていた石を投げ挑発をし始めた。
石をぶつけられたステルスエボシも、煽られた事は分かったらしく、舌でナルを攻撃する。
だが、ちょこちょこ逃げるナルに舌は当てられず、イライラしたステルスエボシは、ドスンッと地面に着地した。
「ハル、今だ!」
地面に着地したステルスエボシを見たナルが、ハルに向かって叫ぶ。
「良くやりました」
ナルを労った後ハルは、地面を蹴りもの凄い速さでステルスエボシへ向かう。
「もう、動き回る事は許しません」
ブシュッ!
『ギー!ギー!』
ドシャァ
ステルスエボシへ辿り着いたハルは、そのままの勢いで相手の足の腱を切断、腱を斬られたステルスエボシは立っている事が出来ず地面に崩れ落ちる。
「喰らえっ」
倒れたステルスエボシにトドメを刺そうと、ナルが走り出した。
しかし、ステルスエボシも只々やられる訳もなく、直線的に走って来るナルに、舌を伸ばして攻撃を仕掛けた。
「同じでは喰らわないぜ!」
ナルは舌が届く直前にジャンプし、攻撃を回避。
『ギー』
ステルスエボシは、攻撃を寸前で回避したナルにイラつかせるも、空中に逃げたナルに追い討ちをかけるために顔を上に向け口を開けた。
「おー、あたしにご執心じゃない。でもさ、こっちばっか見てると、もう1人のレディが怒っちゃうよ?」
だが、今から避けようがない攻撃を喰らう筈のナルは余裕そうだった。
それもその筈、この場で1番見ていなくてはならない人を、見逃しているのだから。
「私は、レヴィ様以外に嫉妬などあり得ません」
『ギッ!』
声がした方へ、360度回る目だけを向けるステルスエボシ。
それが、このモンスターの最後の仕草になった。
「さようなら」
ドスッ
「はぁっ!」
ブシュー
首に小太刀を差し込むと、横にズラし一閃、そこから夥しい緑色の血が噴き出した。
『ギッ』
首から血が噴き出しているステルスエボシは、体は動かないが、一言だけ言葉を発した後ゆっくりそのまま横になり、動く事はなかった。