45カメレオン
明けましておめでとう御座います。
見てくださっている方々、今年も宜しくお願いします。
ハルさんの言葉で指揮が上がった僕らは、足を進み始める。
それから暫く歩くと、開けた場所に着いた。
「何か広い場所に着いたけど、ここにはモンスターはいなさそうだね」
周りを見回しながら僕は言う。
「だな。もう少し先にでもいるんかね?」
ナルも同じ感想を持った様だった。
しかし、ハルさんだけは天井を見上げ言う。
「いいえ、天井から此方を見ています」
「「えっ?」」
僕とナルは、ハルさんに言われ天井を見る。
だが、モンスターらしき生き物は見当たらない。
「おい、ハル冗談きついぜ。モンスターなんて、」
ガキンッ!
「うわっ、なんだ?」
ハルさんはナルが言い終わる前に、ナルの前に立ち小太刀で何かを防いだ。
ガキンッという音から察するに、モンスターがナルへ攻撃したのを防いだのかな。
「はあ!」
攻撃?を防いだハルさんは、その攻撃を受けた反動を利用し、小太刀を器用に回転させると何も無い空間を斬った。
ブシュッ
『ギー!』
青色の血が、何も無い空間からタラタラ垂れ、やがて顔から血が出たモンスターが姿を現す。
「カ、カメレオン?」
全身が緑色で、ギョロギョロした目、尖った頭に長い舌、爬虫類特有の気持ち悪い皮膚、という見たまんまカメレオンのモンスターだった。
「『ステルスエボシ』です。先程のモンスター、ミミクリバードとは少し違い、擬態するのではなく、透明になり人を欺くモンスターです」
「そんなん、良く分かったな」
「メイドたるもの当たり前です」
ナルがびっくりしながら言うが、ハルさんはさも当たり前かの様に返す。
「メ、メイドってすげーな!」
いやいや、ナル。
全てのメイドさんが、そんな戦闘が凄い訳ないじゃん。
ハルさんは、目が見えにくい分、他で補っているから分かるだけだと思うよ。
まぁ、目が見えにくい事を隠してるみたいだから言わないけどね。
「それより、敵が此方を見ていますよ。油断しない様に」
ハルさんが、ナルに忠告する。
「分かってるって。それに、さっきハルが斬った所から血が流れてるから、透明になっても丸分かりだから大丈夫だよ」
言われたナルも軽く返すが、顔は真剣でゆっくりと武器を構え戦闘態勢に入る。
「レヴィ様は、サポートをお願いします。絶対に無理はなさらないで下さいね」
「OK!2人共頑張ってね」
「あいよ」
「はい」
2人は返事をすると、ステルスエボシを討伐すべく走り出す。
ステルスエボシも近づいてくる2人をただ見ている訳はなく、ジャンプし天井に張り付くと舌を伸ばして、直線的に向かって来るナルに攻撃を仕掛けた。
「そんな攻撃当たるか!」
ナルは、舌攻撃をジャンプして避けると、そのまま落下速度を利用し全体重を乗せ、ナイフで舌を地面に刺した。
ブスッ
『ギー!』
痛みで叫ぶステルスエボシ、だが攻撃はこれで終わりではなかった。
「まだ、終わりではありませんよ」
何処からともなく現れたハルさんが、舌の上に乗ると凄い速さで走り出し、あっという間に敵の顔の前に到着、ステルスエボシはびっくりし、手でハルさんを攻撃するが、それを避け横っ腹を斬った。
ブシュッ
『ギギー』
更に攻撃を受けたステルスエボシは、倍になった痛みに暴れ出し、その拍子に舌に刺さっていたナイフが取れ、バランスを崩し天井から落下、ドシンッと地面に落ちる。
「ナイフは返してもらうよ」
ステルスエボシが暴れている内に、落ちているナイフをナルが拾い、サッと距離をとる。
その隣に攻撃を終えたハルが着地、ナルに話しかけた。
「やはり、皮膚が硬いですね。ナル、手数で応戦しましょう」
「だな。ベロも弾力あって、落下した力も乗せてなかったら、刺さらなかったかもだよ」
「なら、余計に手数を増やし少しずつ相手を切り刻んでいきましょう。あ、急所攻撃はやめなさい」
「なんで、急所攻撃は必要だろ?」
「必要ですが、あなたの今の実力では、罠だった場合の対処は不可能です」
「な、なんだと!」
「話しは終わりです。あちらさんも体勢を整えた様ですし」
ハルはそう告げると、戦いに戻っていった。
「クソッ、馬鹿にしやがって」
ナルはギュッと手に力を入れる。
◇
「あ、ハルさん戦い方を手数に切り替えたのかな?さっきよりも、左右に散りながら戦い始めた」
さっき、ハルさんとナルが何か話していたのは、きっと戦いの作戦だったのかな。
でも、
「おらぁ、どうだ!」
ナルの方は、言い方悪いけど、さっきにら比べると下手になった様な戦い方をしているんだよな。
あれも作戦の内なのかな?
あ、またステルスエボシが天井に張り付いた。
あれ、でも今度は舌も天井にくっつけたぞ?一応、2人には言っておこうかな。
「おーい、ハルさんとナル、ステルスエボシが舌も天井にくっつけたから、何かあるかも。注意して」
僕の忠告に、ハルさんは気付いてくれたみたいで頷いてくれた。
しかし、ナルは聞こえていなかったのか、何の相槌もしてこない。
聞こえていないのかなと思い、もう1回ナルに話しかけようとした時、ステルスエボシは舌以外を天井から離し宙ぶらりんになった。
「今だ!」
ナルが、宙ぶらりんになったステルスエボシに攻撃しようと助走をつけ跳んだ。
『ギー、ヒッヒ』
だが、宙ぶらりんになっていたステルスエボシは振り子みたいに揺れ、その勢いのまま助走をつけ跳んだナルに体当たりした。
ドカッ!
「あがっ」
ナルは、ドサッと地面に落ちると、そのまま動かなくなった。
「ナ、ナル!」