41アングリーチキンを探せ
最近、小説を書いてると寝てしまう。
「さて、お前達さえ良ければ、さっそく町の外に出ようか」
依頼受付を済ませた僕達は、ギルドの外に出た。
「ごめん、待って。その前に自己紹介しない?」
僕と同じ年くらいの女の子は、ナルっていうのはさっきの騒ぎから分かるけど、隣のお姉さんの名前は知らない。
「あ、そういえばまだ自己紹介してなかったな。じゃあ、改めて、あたしはナル。職業はシーフだ。隣にいるのがキーナ」
「キーナだ、よろしく。職業は剣士だ」
キーナさんが握手を求めてきたので、僕とハルさんは握手を交わす。
「よろしく」
「よろしくお願いします」
次は僕達かな。
「僕はレヴィ、職業は治癒師です」
僕がそう告げると、ナルは変な顔してジャンプした。
何この娘、面白い。
「ええっ!まさか、本当に治癒師だったの?」
さっきの行為は、驚いた行為だったみたいで、ナルは僕に詰め寄ってきた。
「えっ?う、うん。何驚いてるの?」
さっきまで、そんな話しをしていたじゃん。
「いや、治癒師って紋章持ちじゃなきゃ出来ない職業だろ。って事は、レヴィは紋章を持ってるって事だよな?あん時は、その格好を見て馬鹿にして言ってたのに、まさか本当の治癒師だったなんてびっくりしたからさ」
あれは馬鹿にされていたのか、知らなかった。
確かに、僕の服装は城から支給されている服と白いローブを羽織っていて、治癒師ですって格好だ。
紋章持ちじゃなかったら、馬鹿にされている発言かもしれない。
「ちなみに、ナルも私も紋章は持っていない形だけの職業さ。だから本業の君には失礼な発言をした、謝るよ」
えっ、そうなんだ。
でも、そう言えば自分が紋章持ちだから忘れがちだけど、紋章持ちってそんなにいないらしいからね。
「まっ、だから怪我したら頼ってね。治療するよ!」
取り敢えず笑顔を振り撒いておこう。
「おおっ、ついにあたし達のパーティーに治癒師が!」
いやナル、喜んでいる所申し訳ないけど、僕達このお仕事だけのパーティーだからね?
喜んでいるナルの隣で、キーナが右手を挙げハルさん質問した。
「もしかして、あんたも紋章持ちかい?ええっと・・・」
「ハルフィートです。いいえ、紋章は持っていません。私はただのメイドです」
キーナさんの質問にハルさんは、自己紹介と共に返す。
でも、ハルさん本人は隠しているけど、絶対何かの紋章持ちだと思うんだよね。
だって元お城の諜報員だし、すごく強いもん。
「まぁ、見たところただのメイドさんはだしな。さて、んじゃ、自己紹介もした事だし町の外に行くか?」
「待って」
「今度は何だ?もたもたしてたら日が暮れちゃうぞ」
「いくら怖い鶏の卵でも、そういうの扱っているお店ぐらいあるよね?まずは、そこで帰る分だけ買えば良いんじゃないの?」
今の時間帯なら、さすがにもう開いているんじゃない?
「馬鹿だなー、あたしは賢いからすぐに依頼クリアする為に、もう何件か回ったよ。なんたって、レヴィより先に目を付けていた依頼だからな」
ああ、そうなんだ。
だから僕が依頼書を持っていた時、私達のって言っていたんだ。
というか、馬鹿ってなんだ馬鹿って。
「でも、どこのお店も売り切れてたんだよ。なんでも、黒いフードを被った奴が買い占めてったんだってさ」
黒いフード、一体何のために卵を買い占めているんだろう。
「そうなんだ。もしかしたら、今回のスイスウィート店の事件と関係あるかも」
「そうかもな。でも、今考えるのはそこじゃない。早く、町の外に行って野生のアングリーチキンの卵を取りに行くんだよ」
「分かった。僕達も準備は出来てるから大丈夫だよ」
準備といっても、お店で買う気満々だったから、買った後、鶏にあげようかと思った鶏のエサくらいしか持ってきてないけどね。
「よし、行こう!アングリーチキンは、普通の鶏と違い少し空を飛べるからか、木の上に巣を作って卵を産む。だから、森に入ったら木の上を見て探すんだ」
「そうなの?それはもう、鶏の仲間じゃないんじゃない?」
「そんなのは、決めた学者に言ってくれ。さぁ、行くぞー!」
テンション高いなー。
まぁ、スイスウィートのケーキ1年間食べ放題だもんね。
仕方ないよね。
◇
「確か、ここら辺にいるって情報があったんだけど」
キーナさんが、木の上をキョロキョロ見ながら言う。
「へぇ〜、なんか良い所だね。ハンモック持ってきて寝たいな」
僕達が訪れた森は、町から少しだけ離れた所にあり、中に入ると木漏れ日が差し込む場所もあって、清々しいとても良い所だ。
「良い場所だが、モンスターが普通に出るから気をつけろ」
そうなんだよねー。
この世界はモンスターが出るから厄介だ。
「シッ、いたよ」
キーナさんが、左手の人差し指だけを立て口の前に出し、もう片方の手で木の上を指をさす。
そこには、普通の鶏の約3倍くらいの黒い鶏が巣の中で寝ていた。
僕は初めて見たアングリーチキンを見て、ナルにひそひそ声で話す。
「本当だ、寝てる。何と言うか鶏をまんま大きくした感じだね」
確かに、鶏の仲間と言われても仕方ない。
「だが、凶暴さは全然違うから気をつけろよ?」
まぁ、成人男性2人がかりで卵を収穫するくらいなんだから、それなりに暴れるんだろうとは思うけど。
「さて、どうする?殺してから卵を取るか?」
キーナが、腰に帯刀している剣に手をかけ聞いてくる。
「ええっ!そんな、可哀想ですよ」
そんな僕の返しに、ナルは呆れた様に言う。
「そんな事言ってられるか。アングリーチキンは、1日に2個くらいしか卵を産まないんだぞ?20個のノルマを達成するには、最短でも、10羽のアングリーチキンと遭遇し卵をとらなきゃならない。しかも、明日の早朝までに。多少の殺生は仕方ないだろう」
いや、確かに厳しい状況だけど。
「でも、何か良い方法がある筈だよ。皆で考えよう!30分くらいで良いからさ」
「はぁ、あんた・・・ハルはどう思う?」
僕のお願いをため息混じりに聞いていたキーナさんは、ハルさんに尋ねる。
「私は、レヴィ様に従います。もし案が浮かなければ、アングリーチキンは殺すんです。なら、皆で30分間の間に作戦を考えながら、残り9羽のアングリーチキンを探した方が賢明だと思いますが」
ハルさんの意見を聞いたキーナさんは、数秒目を瞑り考えた後頷いた。
「分かった。確かに、まだ1羽しか見つけてないしな。他のアングリーチキンを見つけながら、30分間だけ考えよう。しかし、30分経ったら殺るからな?」
「は、はい。ありがとうございます」
何とか、アングリーチキンの命を延ばす事はできた。
あとは、殺されない様に案を考えなきゃ。
「おい、レヴィ」
「うん?」
ナルが、ニヤニヤしながら話しかけてきた。
「ギルドでは、あたしに脳筋って言ったよな?確かあたしは脳筋だよ。さっさと終わらすには殺す以外考えつかないからね。でもレヴィには、殺さずに卵の収穫が出来るんでしょ?なら、自分は頭が回る事を証明してよ」
「ッ!・・・いいよ。やってやろうじゃない」
その挑発受けてやる。
「よしっ、話しは纏まったな。考えながら、アングリーチキンを探すよ!」
「「おー!」」
皆、声は小さいが腕を上に挙げた。