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悪人転生して善を積む  作者: カメカメ
2章冒険
88/125

39ケーキ屋事件

憂鬱な晩餐会の翌日、朝早くから僕はハルさんと一緒に町に来ていた。


お目当ては、晩餐会に出席する代わりに貰ったスイスウィート2号店への優先券を使って、ケーキを食べるためだ。


「レヴィ様、王子から頂いた地図によりますと、そこの道を右に曲がればケーキ屋さんがあるそうです」


「ほいほい」


ハルさんに教えられた道を曲がると、何とそこにはスイスウィート2号店に並んでいると思われる行列があった。


「うわーっ、まだ開店5分前なのに凄い行列だ」


「本当、凄いですね。これじゃあ、確かに王子から優先券が無かったら限定ケーキを頼める可能性は低いですね」


並ぶ列を見て、少しげんなりしながらハルさんは言った。


「まぁ、それだけ人気店だって事だね。それより、もう間も無く開店だよ。ハルさんも食べて良いって王子が言っていたから、たくさん食べようね!」


「はい。では、少しだけ頂きます」


「もう、ハルさんは遠慮さんなんだから」


実は昨日の晩餐会が終わった後、王子の驕りで僕だけじゃなく、ハルさんもケーキを食べて来いと言っていた。


王子も優しい所ある。

そんな事を思いながら開店を待つ。


しかし、それから5分、10分と待てど店が開く様子がなく、待っているお客さん達もどよめきが始めていた。


「あれ、お店開かないね?もしかして今日は、定休日とかじゃないよね?」


「違うと思います。もしそれなら、こんなに長い行列が出来ることも無いと思います」


「だよね。なら、何かトラブルでもあったのかな?」


そこから、更に待つ事5分、お店から店員さんが出てきた。


「すいません、急遽ケーキを作る事が出来なくなったため、今日はお休みします。今日、来て下さいました皆様には、クッキーを無料で配布致します。誠にすいませんでした。」


並んでいたお客さん達からは、ぶつぶつと文句を言う人もでたが、大ごとにはならずに、お詫びの言葉とクッキーを貰い帰って行く。


僕もその中の1人だ。


「あ〜あ、がっかりだな。でもケーキが作れないなら仕方ないか」


「そうですね。レヴィ様のクッキー貰って来まか?」


「要らない」


僕が食べたいのは、ケーキであってクッキーでは無いからね。


「左様ですか、なら帰りますか?」


「そうだね」


がっかりしながら、宿屋へ戻ろうと回れ右をした時。


「あれ、貴女は昨日、晩餐会にいた王子のお付きの治癒師様ですか?」


「えっ?」


この声はまさか。

声をかけられた方へ振り向くと、昨日見たイケメンがいた。


「ジェイス様?奇遇ですね。と言うより、その格好は?」


何というか、ジェイスはお菓子を作るパティシエさんの様な格好をしていた。


「私は、スイスウィート2号店のパティシエでして。もしかして、私のお店に来て頂いたんですか?それは誠にすいませんでした」


「ええっー!ジェイス様ってパティシエさんだったんですか⁉︎」


「はい!」


イケメンな顔でにこやかに笑うその様子は、凄く絵になっていた。


昨日の感じだと、ジェイスさんは王子と面識はあったと思う。


だから、王子はスイスウィートの優先券もってたんだな。

納得。



僕は今、スイスウィート2号店の中にいる。

あれから、立ち話しも何だとなりお店の中に案内して貰った。


「ん〜、クリームの良い香りがします」


匂いだけでも幸せ。


「すいません、お店を開けなくて」


「い、いえ。でも、何があったんですか?」


腰を折り、申し訳なく謝ってきたジェイス様が気の毒に思い、話題を変えるため開店できなかった理由を聞く。


「実は・・・」


昨日、晩餐会に行く前に明日の仕込みを終わらし、しっかり戸締まりをした。

しかし、今日来て見たら店内は微妙に荒らされていたらしい。


何か盗まれたものはないかと思い、辺りを確認した所、なんとスイスウィート特製生クリームと、その材料に使われている卵が無くなっていた。


「店内の荒らされ具合的に、店を開けても問題無いかなとは思ったが、流石に卵がないとお店以前にケーキが作れないので無理だ」


結局、ギリギリまで粘ったが卵がなくお店をお休みした。


「卵なら、その辺に売ってますよね。今ならお店開いてますよ?」


何なら、僕がここに来る前から売っているお店が何軒かあったし。


「いや、スイスウィート店の卵は普通の卵じゃないんだよ。内緒なんだが、実はアングリーチキンという鳥の卵なんだ」


「アングリーチキン?」


どんな鳥なんだろう?


「ハルさん、知ってる?」


「はい。鶏の仲間に分類されていますが、気性が凄く荒く、年寄りや子供では卵の収穫は務まらないため、卵の収穫は成人男性2人がかりで行うとのことです」


「うわー、怖そうな鶏だね」


僕じゃ、とてもじゃないけど取ってきてあげる事は出来ないかな。


「しかし、アングリーチキンの卵にはとてもたくさんの栄養が含まれているため、庶民でさえ高くても買う人がいるそうです」


そうか、そのアングリーチキンという鶏の卵を使っているから、スイスウィートのケーキって他のケーキ屋さんより少しお高めだったのか。


「兵士さんは動いてくれているんですか?」


でも話しは聞いてたけど、僕に言ったところでしてあげられる事ない。


なら、兵士さん達に頼った方が良いと思う。


「ああ、駐屯所とギルドにはさっき行ってきたんだ」


「ギルド?」


何でギルド?

ギルドでは、犯人探しまでやってくれるの?


「犯人見つかっても、卵は返ってこないだろうから、ギルドに依頼して卵を取って来てもらおうかなと思って」


確かに。

卵を泥棒したんなら、卵はもう使われているか食べられているよね。


「ちなみに報酬は何にしたんです?」


依頼は受ける事はないけど、報酬ってなんとな〜く気になるよね。


「金貨2枚と、スイスウィート1年間食べ放題の券だ」


「えっ、あのスイスウィートのケーキ1年間食べ放題なんですか!」


僕が聞くと、ジェイス様は頷いた。


「まぁ、早く卵が欲しいからね。背に腹はかえられない」


「そっ、そうですよね。背に腹はかえられませんよね。あ〜、私用事を思い出しました。では、ジェイス様私はこれで失礼しますね」


1年間ケーキ食べ放題、しかもスイスウィートの。

早くギルドに行かなきゃ。


僕が、何としてもその依頼をクリアして報酬を頂く!

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