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悪人転生して善を積む  作者: カメカメ
2章冒険
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38晩餐会の中で

僕は今、昨日約束したおじさんの下へ来ている。


「新作出来ました。試食してみて下さい」


おじさんに切り分けてあるイカ飯を差し出す。


「もう出来たのかい?すごいね君」


ニコニコしながら、おじさんは僕の持ってきたお皿を見ると、ニコニコの顔が驚愕の顔になった。


「ええっ!イカの中にご飯入れたの?」


「はい。せっかくの港だし、力仕事で汗をかく人達が多い事も考慮した結果、海鮮でしょっぱい物を考えたらコレになりました」


イカの中にご飯を入れてある事に、おじさんは少し引いていた。


「な、なんか食べるの怖いな」


「大丈夫です。お腹壊したりしないので、ねっ?」


僕は、ハルさんにも話しを振る。


「はい、美味しかったです」


「と言う事で、どうぞ。ささ、食べて食べて」


早く食べて欲しくておじさんを急かす。


「わ、分かったから。あんまり急かさないでくれ」


少しの間おじさんは躊躇っていたが、やがて意を決してイカ飯を食べた。


感想はどうかな?


「うっ、うめぇー!何だこれ、うめぇーんだけど」


始めはおっかなびっくりで食べたイカ飯だが、美味しいと分かると、今度はスプーンが止まらなくなりガツガツ食べ始めるおじさん。


「本当ですか?ありがとうございます」


良かった。


「で、この商品でお米の買えるルートを教えてもらえます?」


尋ねると、イカ飯を食べ終え水を飲んでいたおじさんは、手をグーにして親指を上に立てた。


OKと言うことかな?


「ありがとうございます。あ、あと1つお願いがありまして、実はこの料理を晩餐会で使用したいと王子から依頼がありまして。使用しても良いでしょうか?」


「ほ、本当かい?ああ、良いよ」


「ありがとうございます。もちろん見返りとして、提供はここのお店にしますから、晩餐会後もしかしたらお客は増えるかもしれませんよ」


「それは更に嬉しいね!よしっ、早速米の購入先を教えてやるよ」


こうして、ようやく僕は念願のお米を購入出来るようになった。


あとは、これをどうにかして毎日食べられるようにするかだ。



夜、晩餐会が開かれた。


例のイカ飯は、美味しいのはもちろん、珍しさもあって凄く人気になっていて、イカ飯を作っているおじさんは大変そうだった。


そんな中、僕はというと会場の隅で、ラウン様と一緒に色々テーブルを周っている王子を見守っていた。


「はぁ〜、何で僕がこんな所で王子を見守らなきゃいけないんだ」


僕は、この髪の色と瞳の色のお陰で皆からチラチラ見られて居心地が悪くなっていた。


「中々、こんな外見の人がいないのは分かるけどさ」


良い思いはしないのには変わりない。


と言うか、僕実はここにいる意味無くない?

王子は、毒を盛られた時のために必要だとは言われたけど、貴族達の晩餐会ってそんな事あるの?


「はぁ〜、帰りたい」


そんな思いが口にまで出ながら暇を持て余していたら、貴族の娘達の話し声が聞こえてきた。


「ねぇねぇ、聞いた?」


「何々、なんの話し?」


話しかけた娘はキョロキョロと見回し、誰も聞いてきないかを確認すると、普通の声よりは若干小さいかなくらいの音量で話し始めた。


いや、その音量だと普通に聞こえるんですけど、確認した意味0じゃない?


「ここだけの話しなんだけど、数年前からアデラと取引拒否し始めた国があるじゃない?」


「ああ、イリギアでしたっけ?どうしましたの?」


「そう、そのイリギアの王様が実は呪われていたみたいで、今昏睡状態にあるらしいわ」


「ええっ!でも、そんな話し公にならないなんておかしくない?」


「私も始めはそう思ってたんだけど、なんか息子の王子がとある魔術師の助言で隠蔽しているみたいなんだって。ちなみに、その時からアデラとも手を切ったみたい」


「本当⁉︎で、その魔術師は一体何者なの?」


「そこまでは分からないわ。ミハエルもここから先は知らないって言ってた」


「ああ、そうか。あなた、今イイリギアから来たミヤルタ様とお付き合いしてるんですものね」


「いやん、ただの遊びよ。私はもっと上の男を捕まえるんですもの!」


「ハハハ、あなたは酷い人ね」


「ウフフ、貴族の女たる者当然よ」


いくら世間話しでも、誰が聞いているか分からないのにこういう会場でそんな音量で話すのはどうかと思うよ?


「はぁ〜」


その2人の会話を聞くのを飽きた僕は、また溜息を漏らした。


その時、


「あの、どなたか様のお連れですか?」


声をかけられ、振り向くと凄いイケメンがいた。


「あ、え、あの」


えっ、何でだろう?

なんか、凄くドキドキするぞ?


「良かったら、僕の話し相手になってもらえませんか?」


ニコッと笑い、手を差し出してきたイケメン。


「はっ、はい。私でよければ」


王子もラウン様と一緒に遊んでるんだから良いよね?


「良いわけないだろ」


「はわっ!」


びっくりした!

いきなり、王子が僕の後ろから現れるなんて。

あれ、というかさっきまでラウン様と一緒にいましたよね?


一体いつの間に来たの?


「おい、ジェイス。うちの専属治癒師を誑かさないでくれ」


王子の顔を見て、ジェイスさんは少し驚いたような顔をしたが、すぐ笑顔に戻す。


「なんと、王子のお付きでしたか。しかも治癒師とは。いやいや、これは失礼。ではまた今度、貴女がお暇な時にお相手して下さい」


ジェイスは手を何度か振り、人混み中に消えて行った。


「おい、あいつと何を話していた?今度、どこかにいく約束したのか?」


「いえ、あの人とは挨拶くらいしかしてませんよ」


お話しする前に王子が来たからね。


「ならよい、あの男には近くなよ。いいな?」


「何でです?」


「い・い・な!」


「は、はい」


なんで?

普通に良い人に見えたけどな。


「よし、じゃあ一緒になにか食べにこう」


王子が僕の腕を掴むと、引っ張りながらあの人だかりの中へ連れて行く。


「分かりましたから、痛いので腕を引っ張らないでください」


晩餐会つまらなかったけど、食事はとても美味しかった。

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