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悪人転生して善を積む  作者: カメカメ
2章冒険
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37試食

おじさんと取引が成立し、新作ご飯を作る為のお米をたくさん頂いた後、僕達はそのまま港で買い物をした。


そして、その帰り道ハルさんが話しかけてきた。


「レヴィ様」


「ん、何?」


「さっきは、あの男との取り引きに了承しましたが、新作のアテはあるんですか?」


「アテと言うより、頭の中に新作が浮かんでいるんだ」


まぁ、新作とかいってるけど前世で食べたお米料理のレパートリーがあるだけなんだけどね。


「だからハルさんには、試食をしてもらいたいんだけど頼めるかな?」


「はい。むしろ、レヴィ様の美味しい料理を食べられるなんて、とても嬉しいです」


まだ作ってすらいないのに、美味しい料理とかハードル上げないで欲しい。


でも、なんか嬉しいから良いか。



「ただ今帰りましたー」


「遅いぞ!」


「へ?」


何の気なしに、宿屋に着いたからただいまなんて言っただけなのに、何故か1階に王子がいて怒られた。


「王子?どうしたんですか?」


何かあったの?


「どうしたも、こうしたも無い。帰りが遅いから待っていたんだ!」


「心配して下さったんですか?それはありがたいですけど、ハルさんもいるので大丈夫ですよ」


というより、心配だったならあの指輪で連絡してくれればよかったのに。


「うるさい!・・・それで、何してきたんだ?」


自由時間だったのに、何をしてきたか言わなきゃダメなの?


まぁ、隠す程の事では無いから別に構わないけど。


「えっと、港に行って珍しい食材とかないかなと見て来ました」


「ほぅ。で、あったのか?」


「はい、お米という食材なんですけど、それで作った混ぜご飯がとても美味しかったんです」


僕は貰ってたお米を王子に見せた。


「美味しかったのか?」


「はい、とても美味しかったです」


思い出しただけで、この世界にお米があったという事実と、食べた時の懐かしさや美味しさで顔がニヤけてしまう。


「そのバカ面を見る分に、随分と美味しかったみたいだな。俺が職務を全うしていたのに、お前は随分と楽しんだんだな」


何?理不尽じゃない?

さっきも思ったけど、王子が自由時間って言ったんだよ?

でも、そんな事言えないから謝るけどさ。



「すいません配慮不足でした。しかし、お米の購入ルート先は教えて貰う予定なので、まだ作る事が出来ません。なので、港にあるので食べてはいかがでしょうか?」


「予定?何でその場で教えて貰えなかったんだ」


「実はですね、その方が新作ご飯を作るのに悩んでいまして・・・」


僕は、あの時のおじさんとのやり取りを王子に説明した。


「そんな話しがあったのか。しかし、それは興味あるな。おいレヴィ、俺も食べるから今から作れ」


「えっ?いや、試作品を王子に食べさせる訳にはいきませんよ」


ハルさんだけで良いよ。


「いいから作れ、早く。俺ばかりそのお米とやらを食べられないなんて釈然としないからな」


だから、今から港に行って食べてくればいいじゃん。

開いてるか分からないけど。

そう思いながら、横にいるハルさんを見たら目を細めて王子を見ていた。


ヤバい、僕はこの目を知っている。

これは怒る前の目だ!


「わ、分かりました!今から作りますね。ハ、ハルさんも試食して貰っても良いかな?」


頼む、これで機嫌直ってくれないかな。

そうじゃないと、多分王子は寝ている間になんかやられる。

明日の晩餐会とか言っていられなくなる。


「ど、どうかな?」


「ハイ!喜んで」


ニコッとした表情で僕を見ていた。


セ、セーフ。


「じゃあ、今から宿屋の女将さんに厨房をお借りして作りますね」


「ああ」


「ハイ」


僕は、急いで宿屋の女将さんから厨房を使う許可を取り、料理を始めた。



「お待たせしました。試作なので、味付けや盛り付けの意見があれば教えて下さい」


作った料理を、席に座っている王子とハルさん目の前に出す。


「こ、これはイカ、ですか?」


「そうだよ」


ハルさんは、出されたご飯にびっくりしていた。

出された料理は、姿がそのままのイカで、その周りに煮込んだトマトのスープがかけられていた。


「おいおい、俺は米を食いたいんだよ。イカなんて今はいらねーぞ」


「王子、そのイカ実は切ってあります。スプーンを使って中をよく見て下さい」


僕に言われ、王子とハルさんはスプーンで切られているイカに触る。


すると、イカは崩れその中にはお米が入っていた。


「おお、何だこれ!イカの中に米が入っている。しかも、香ばしい香りがする」


「さすがレヴィ様です。これは見ただけで、絶対に美味しいと思える料理です。この料理何という料理なんですか?」


2人に褒められてむず痒くなるな。


「ありがとう、料理名はイカ飯と言います。食べて感想を聞かせて下さい」


僕がそう言うと、ますば王子がスプーンでイカ飯をすくい口に入れた。


「美味い!」


「はい、美味しいです。味付けのベースはバターですか?味がマイルドでしつこくなく、周りにあるトマトの酸味も効いて、更に食が進みます」


王子が感想にならない賛辞を述べる一方で、ハルさんが使われている調味料や食材を言い当てながら感想を述べてくれた。


「何か意見とかある?」


「このままでも美味しいのですが、あえて言うならお店が港にあるので、私なら港で働いている人をメインに考えます」


ふむふむ。


「なので、もう少し味を濃いめにしても良いのかなと思いました」


なるほど。

港で働く人は、どうしても力仕事が多いから、当然汗をかく量が多い。


だから、味は濃い方が良いかもしれないという事か。


「ありがとう。王子は何かあります?」


それまでガツガツ食べていた王子は、食べるのを止め言った。


「ああ、この料理を明日の晩餐会に出すぞ。明日、昼のうちにその店から了承を得ておけ」


「えっ?」


「はっ?」


僕とハルさんはそれぞれ疑問の言葉を口にし、固まった。

いや、感想を聞きたかったんだけど。

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