36衝撃な出会い
あれから僕達は町の宿屋へ行き、2階にある僕とハルさんの部屋に荷物を置いてから、1階のロビーへ集まった。
「俺は少し前から滞在しているお父様の所へ、挨拶しに行ってくる。お前はゆっくりして良いぞ」
自由時間って事?
やったー!
「ありがとうございます。早速、行きたい所があったので行って来ます」
「あっ、ちょっと待て」
ルンルン気分で宿を出て行こうとした僕を王子は止めた。
「はい、何でしょう?」
止まって振り向いた僕に近づき、指輪を渡してくる。
「こいつをやる。指にはめておけ」
「指輪?」
「俺と会話ができる指輪だ。用事があったら、指輪に魔力を流してみろ、俺につがる様になっている」
王子は、キラキラした指輪を僕に渡す。
「ほぅ〜、綺麗ですね。頂いても良いんですか?」
「ああ、やるよ。お前は何かとトラブルに巻き込まれるからな。普段はイヤリングだが、俺が特注で指輪の形にしたんだぜ」
へー、王子僕を心配してくれているんだな。
我が儘なだけに意外だ。
「心配して下さるんですね、ありがとうございます。王子優しいんですね。そういう所、素晴らしいと思います」
この世界に来てから、色々な人が僕を心配してくれる。
それは凄く嬉しいし、ちょっとくさいけど心が暖かくなる。
自然に笑顔になってしまう。
「あ、ああ。お前は俺の専属治癒師だからな。な、なんなら本物のダイヤの指輪やってもいいぞ?くすりゆ」
「さあ、レヴィ様その指輪を中指にはめて行きましょう」
急に王子の会話をハルさんが遮った。
「おいメイド、俺の話しを遮るな!」
「王子が変なこと言うからですよ。レヴィ様、変態王子に襲われる前に行きましょう」
「えっ?あ、うん。行って来ます王子」
「おい!」
ハルさんに半ば強制的に背中を押されて、僕は宿屋を後にした。
◇
「レヴィ様、行きたい所とはどこですか?」
シーサイドの賑やかな町を、歩きながらハルさんが聞いてくる。
「食材を売っているお店があれば見たいなと思って」
「食材ですか?」
「そう。この間ハルさん、僕の作ったパスタ美味しいって言ってくれたじゃない?」
「はい、とても美味しかったです。あれ程、美味しかった食べ物は初めてでした。あれ以降、いつもの食事は下の下くらいしか味を感じません」
めっちゃ誉めますね!
逆に嬉しいより、恥ずかしい。
「また、作って食べてもらいたいなと思ってさ。それに、もしかしたら珍しい食材もあるかなって」
「レヴィ様の手料理をまた頂いける。それは素晴らしいですね!確か、新鮮な食材を売っている所が港にあると聞きました。さぁ、行きましょう!」
僕の手を掴み、ハイテンションで何故かファイティングポーズを取り出すハルさん。
「う、うん。行こう」
時たま、あなたのテンションに着いていけないと思う今日この頃です。
◇
宿屋から、まあまあ歩いた所に港があった。
「ここが、港」
僕は、港に来てすぐそんな言葉を口にした。
凄く賑やかな港で、やはりロサンゼルスにあるファーマーズマーケットにとても似ている。
「レヴィ様、凄い人混みなので手を離さないでくださいね?」
「うん」
ハルさんと手を繋ぎ、僕はマーケットの中を歩き始めた。
「何やら見た事のない食材がたくさんありますね」
「本当だね。あれは、モンスターの肉?需要あるの?」
マーケットの中は、たくさん他国の名産と思われる食材がたくさん売っていて、中にはモンスターの肉も扱われている。
「食べる所もたくさんあるね。今が夕方じゃなかったら食べたかったね」
「そうですね。食べ物すら珍しい物があります」
作っている工程や、匂い、看板の絵からしか察する事が出来ないが、前世でしか嗅げなかった匂いもする。
「あれはラーメンかな、あそこはポトフ、あっちは山菜の混ぜご飯だ」
いやー、たくさん食べ物がある。
って、いや。
「ん?混ぜご飯?えっ、嘘そんな出会いある?」
僕はまさか思ったが、混ぜご飯を作っていると思われるお店に足を運び、店員さに話しかけた。
「これ何ですか?」
「これかい?これは、俺の故郷にある伝統的な食べ物で、畑や山で採れた食材を米に混ぜた、混ぜご飯だよ」
やっぱりお米だ!
「うわー凄い!どこから見てもお米だ」
「レヴィ様、お米とは何でしょう?」
ハルさんは、僕の後ろから覗き込む様に見ながら聞いてきた。
「お米とはね稲という作物から採れる食べ物で、育て方は暖かくなる少し前に、田植えといって・・・」
お米の存在が嬉しくなった僕は、ハルさんに自分が知っているお米の知識を話した。
「なるほど、大体分かりました。聞いていたら、少し食べたくなってきました」
お米の育て方、お米に含まれている栄養などを、ハルさんに教え終わると、興味を幾分か持ってくれたみたいだ。
「でしょう?食べてみようよ」
早速、僕は2つ混ぜご飯を頼み食べる。
「お、美味しいですね」
「うん、美味しいね」
一口食べて、美味しさからビックリするハルさんを横目に僕も食べた。
うん、美味しくて食が進む。
「あの、このお米ってどこで購入出来るんですか?」
ご飯を食べ終えた後、おじさんに聞いてみる。
「この米かい?んー、教えてやっても良いけど1つ条件がある」
「条件?」
「ああ。最近じゃこの食べ物も、外から来た人しか食べなくなってきてんだよ。だから、新しいメニューを考えてんだが中々、な」
おじさんが腕を組みながら困った様な顔で話す。
「混ぜご飯以外のご飯メニューはないんですか?」
「ない。むしろ、他に何があるか知りたいくらいだ。だから、お嬢ちゃんに新メニューを考えて欲しいんだ」
話しは分かった。
けど、
「何で私にその話しを振ったんですか?」
僕以外にも、故郷の友人に聞けば良い事だ。
それを、わざわざ僕に聞くなんて意味が分からない。
「それはな、理由は知らないが俺のいた故郷が、シーサイドを嫌がり始めて鎖国中なんだ。だから行っても、船から降りることが出来ないのさ」
「そうなんですね。すいません嫌なこと聞いて」
「いや構わない、気にするな。それに、そんな時に妙に米に詳しいお嬢ちゃんが来たから、頼んでみようかなと思ったんだ」
なるほどね。
「で、どうすんだ?この話し受けるか受けないか」
「その話しを、お受けします。よろしくお願いします」
「おう!美味しいの頼んだぜ」
美味しいお米を手に入れるために頑張るぞ!
書いていた途中に、文章が全て消えるという現象にあい、今やっと投稿出来た。