32クワイ村へ
クワイ村とは、ダズリ村から迫害を受け半ば追い出される形で村を出た人間と獣人の夫婦が、暮らし始めた事が始まりだとされている。
その後、同じ様な境遇の人達が集まり村となったそうだ。
そのため、人種に偏見を持たない。
「なので、あの村では人間や獣人、関係なく暮らしています」
「そうなんだ。村となった経緯は最悪だけど、結果誰にでも優しい村が出来たんだね。そういえば、見た事ないんだけど、見た目ってどんな感じなの?ネコさんが2足歩行してる感じなの?」
「いえ、外見は私達とあまり変わりません。ネコの獣人だと、ネコの耳と尻尾が付いています」
ええっ!ネコ耳あるの?
前世で詐欺に使えるかもと思い、そういうカフェに行った事あるけど、中々に萌えた。
それが今、現実にある。
最高です!
僕は、クワイ村の情報をハルさんから聞きながら、馬車で移動している。
「しかし、そもそも何で人間と獣人て戦争したんだろうね?」
「理由は、書かれていませんが、文献では獣人が人間の住む町を襲ったそうです」
獣人が仕掛けたんだ。
なら、仕方ない部分もあるのかな。
そんな話しをしていたら、今まで外を見ていた王子が口を挟んでくる。
「おい昔話しはもう良いから。ほら、クワイ村に着いたぞ」
王子がそう言い、少ししてから馬車が止まると兵士さんが扉を開けてくれた。
「お疲れ様でした。クワイ村に着きましたので、気をつけてお降り下さい」
「ありがとうございます」
僕達は、兵士さんに促され馬車を降りた。
◇
「ようこそおいで下さいました。私は、村長のゼクムと申します。大変、申し上げにくいのですが、何も用意などはしておりませんで、お許し下さい」
村長さん(人間)のゼクムさんが、僕達の前まで来るといきなり頭を下げて謝罪してくる。
いや、僕が悪いんだ。
逆に申し訳ない。
そう思い、僕は前に出て頭を下げ謝罪した。
「すいません、私がどうしてもダズリ村に行きたくなかったもので、我儘言ったんです」
僕の謝罪を、ゼクムさんはニコニコしながら受け入れてくれる。
「それはそれは、こちらを選んでくれて嬉しい限りです。謝る事はございません、何も無いところですがごゆっくりしていって下さい」
「ありがとうございます」
村長さん、良い人で良かった。
「そろそろ村へお入り下さい。宿も手配は済みましたのでいつでも泊まれます」
「うむ、感謝する」
王子がそう言い村へと足を運ぶと、僕達も一緒に村へと入った。
◇
「うわぁ、本物の獣人だ!あ、イヌ耳だ。可愛いな」
今、僕達は宿屋へと向かい歩いている。
そして、その道中すれ違う獣人を僕は見ていた。
「レヴィ様、あまりじろじろ見ると失礼ですよ」
そんな物珍しげに見る僕を、ハルさんが嗜める。
「あ、そうだった。ごめんなさい」
耳や尻尾に惹かれて見ちゃうけど、この国では侮蔑の対象なんだから、じろじろ見たらダメだよね。
悪い事しちゃったな。
「レヴィ様は、獣人を見るのは初めてですか?」
僕の近くにいたゼクムさんが聞いてくる。
「はい、見た事がありません。じろじろ見てしまい、すいませんでした」
なんなら、他の種族すら見た事ないんだけどね。
「大丈夫ですよ。それよりそうですか。なら、私の孫なんですが、年齢がレヴィ様より下の女の子がいます。後で、遊んでもらっても良いですか?」
「えっ、良いんですか?やったー!」
会ったらお願いして、耳と尻尾を触らせてもらおうかな。
そんな事に思いを馳せながら、宿屋へ着き中へ入った。
「ここが、今日泊まる宿です。ご用がありましたら、カウンターに必ず誰かいますので、そこでお願いします。何か質問はございますか?」
ゼクムさんが、僕達を見回すも誰も反応は無かった。
「では、私はこれで失礼します。レヴィ様は、私と一緒にお願いします」
「はい!」
いよいよ、可愛い獣人さんを愛でられる。
そう思った時、思いもよらない人が話しかけてきた。
「おいレヴィ」
王子?
何ですか、僕は今から忙しいのに。
「はい、何でしょう?」
「俺との約束はどうした!」
約束?
「あー、2人で村を周る話しですか?え、ダズリ村じゃないから無効じゃないんですか?」
えー、今日は勘弁してよ。
「そんな訳ないだろう。だから俺も一緒に行く」
「えっ?」
なんで?
本当は、ここから暗い話しに持っていこうと思ったのですが、自分には書けそうもないので、通常運転に切り替えました。
でも、いつかは少しだけどシリアスな展開も入れたいな。




