25馬車の中はつらいよ
あの王子襲撃の次の日。
雲1つない快晴、暖かい陽気、清々しい空気の中、大地にカッポカッポと心地よいリズムを刻みながら進む馬車。
そんな中、僕は馬車で気まずい空気に浸っています。
理由は、王子とハルさん2人の会話がないため、僕が気を遣って2人に話題を振るという状態だからだ。
まあ、話題を振ったとしても苦し紛れの話題だから、すぐ会話が途切れるんだけどね。
でも、頑張れレヴィ。
お前なら出来る。
「・・・あの、所でシーサイドまでどのくらいかかるの?かな、なんて」
僕は、隣に座っているハルさんに聞いた。
「シーサイドは、アデラからだと2日くらいかかります。王子、今日はどこに泊まるのですか?」
ハルさんの質問に王子も答えた。
「さっき聞いたんだが、ここから3時間くらい進んだ所に村があるそうだ。そこに泊まる予定だ。村の名前までは知らん」
「そうですか、ありがとうございます」
「ああ」
「・・・」
「・・・」
気まずいよ〜、皆こんな時どうしてるの?
仕方ない、窓から景色を見てやり過ごそう。
僕は早速体を避けに向かせ、窓から外を見た。
うん、やっぱりこの世界の景色は綺麗だ。
特に空が綺麗、透き通っている!
そう思いながら、窓から景色を見始めて数十分くらい経った頃、王子が話しかけてきた。
「おい、レヴィ」
「はい、何でしょう?」
何だろう?
「お前、なんていう歌を口ずさんでいるんだ」
「あっ、すいません。止めます」
マズい、景色に夢中で無意識に口ずさんでいた。
「いや、大丈夫だ。むしろ、もう少し大きめに歌ってくれ」
「いや、それは恥ずかしいので出来ません」
歌が上手いわけではないから無理。
「レヴィ様、私からもお願いします。聴いていて、とても心地よくなりました」
ええー、ハルさんまで!
ハルさんに頼まれたら、断れないよな。
「わ、分かりましたけど、笑わないでくださいよ?」
「ああ」
「はい」
◇
「す、すみません。さすがに歌い疲れたので、休んで良いですか?」
あの後、僕は6回も同じ歌を歌わされた。
それこそ、始めは気恥ずかしかったが、何回か歌っているうちに恥ずかしさが消えた。
そして、さすがに6回も歌うと、喉が少し痛くなってくるし疲れてくる。
「ああ、悪かった。つい良い曲だから、何回も聴いてしまった」
珍しく王子が謝罪してきた。
「いえ、喜んでくれたのなら幸いです」
「レヴィ様、是非私の膝でお休みください」
ハルさんも、膝をポンポンしながら促してくる。
「えっ、いや」
「是非!」
「あ、はい、すみません。よろしくお願いします」
圧に負けた僕は、ハルさんの膝で休んだ。
ああ、ハルさんの膝気持ち良い!
何か良い匂いするし。
はぁ〜あ、眠くなってきたな。
「お眠りになっても大丈夫ですよ?」
「でも、王子の前で寝たら不敬罪に当たらない?」
まだ、善をそんなに積めてないので、死にたくないです。
「構わん、寝ろ」
なんと王子、直々に許可をくれた。
「ありがとうございます。それでは、お言葉に甘えて。お休みなさい」
その後、すぐに僕は眠りに着いた。




