24取り引きかけ引き
シーサイド、名前の通り海に面した町で、港があり魚介類が豊富に取れる。
貿易も盛んで、最近はハルさんが買ってくれたアロマキャンドルが人気らしい。
確かに、色々売っているし楽しそうではある。
しかし、だからといって王子とは行く気にはならない。
「何で私が、王子とシーサイドに行くんですか?」
また食事会で、何か話題にあがったの?
「4日後、シーサイドで貴族達の晩餐会があるんだ。俺は出ない予定だったんだが、その晩餐会にラウンが出るらしく、お前も出ろよって話しになったんだよ。だから出る事にしたんだ」
んー、話し聞いても僕が参加する理由無くない?
「王子、私が参加する理由が分かりません」
「は?何言ってんだお前」
王子、その馬鹿じゃないの?みたいな顔止めて。
地味にムカつくから。
「だって、私は庶民です。王族でもなければ貴族でもありません。なので、その晩餐会には出る必要はないかと思います」
「馬鹿だなお前、だってお前は俺の専属の治癒師だろう」
僕を指差しながら王子は言った。
「えっ、あの話し本当だったんですか?」
前に、食事会で言っていた事でしょう?
「当たり前だろう。そして専属の治癒師は、主人に何かあった時のために近場で仕えるんだ。そんな事もしらんのか?」
そもそも、専属の治癒師になった覚えも無いから知らなかった以前の話しだし。
僕は、隣で聞いていたハルさんに助けを求めた。
「ハルさん、僕専属の治癒師なんて聞いてないけど」
王子となんて行きたくないよ。
そんな僕の願いが届いたのか、ハルさんは助け舟を出してくれた。
「専属の治癒師には、主人が誰だか分かる様にバッチを貰うはずですが、頂いてませんよ?」
すると、尋ねられた王子は変な顔をし始める。
「そ、それはまだ申請が受理されていないからだ」
その言葉を聞いたハルさんは、少し笑いながら言った。
「何にしろ、受理されていなければ、行く必要はありませんね。」
王子怯む、バーカざまぁみろ。
「うぐぐ、しかしだな、こっちにも色々事情があるんだ」
そっちの事情なんて知らないし。
「わ、分かったレヴィ。なら、取引しないか?」
少し攻め方を変えてきた。
でも、その取り引き意味ないよ。
「取引ですか?今、現在僕が応じる様な取引材料何て無いですよ?」
欲しいもの無いし。
しかし、王子は不敵な笑みを見せ話し始めた。
「少し前にな、シーサイドで新たな店がオープンしたんだよ」
「はあ、そうですか」
「スイスウィートの2号店だ」
「えっ!本当ですか?」
知らなかった!
「ああ、しかも今ならオープン記念で、2号店の限定ケーキを頼むとお好きなケーキをもう1個プレゼントなんだそうだ」
「おお〜!」
スイスウィートさん、太っ腹ですね!
「しかし、スイスウィートは人気店だ。行列に並んでいるお陰で、自分の番が来てもお目当てのケーキは無いに等しい」
「そ、そうだよね。人気店だもんね・・・」
「だが、俺なら何とかできる」
「本当!?でも、不正はいけませんよ。不正、ダメ、絶対」
「ああ?俺が不正なんかするかよ。これを見ろ」
王子はそう言いながら、1枚の紙を見せてきた。
「それは?」
「これか?これはスイスウィートの優先チケットだよ。これがあれば、どんなに行列長かがろうが、優先で入れる」
「お、おおー!」
素晴らしいアイテムだ!
「さぁて、レヴィ。取引だ、どうする?」
ニヤニヤしながら王子は聞いてくる。
「くっ」
行きたい、シーサイドのスイスウィートの限定ケーキとおまけケーキ食べたい。
でも、この王子と一緒に行きたくない。
理由は、絶対つまらないからだ。
だって、自慢話ししかしないし、そもそもオラオラ系は苦手だ。
「さぁさぁ、早く決めろ!時間は無いぞ?」
僕は頭の中で葛藤する。
しかし、そこで救世主が現れる。
「私も、ご一緒しても宜しいですか?勿論、私はケーキいりませんし、晩餐会でも邪魔はしません」
「えっ?いや、それは」
「もし、許可を頂けないのであれば、レヴィ様を行かせません」
「はっ?決定権はレヴィにあるんだから、お前は関係ないだろう」
すると、ハルさんから衝撃的な言葉を発せられる。
「レヴィ様のお師匠リア様から、レヴィ様の最終決定権は貴方にあげるわ、と言われていますので。私が許可を出さなければ、レヴィ様は出掛けられません」
え、そうなの?
初めて聞いた、新事実だよ!
さすがの王子もビックリしたみたいだ。
「さあ、どうしますか?」