幕間エイトとお守り
エイトの幕間です。
今、俺は兵士の訓練場で先輩兵士と、模擬戦の訓練をしている。
「隙ありだ」
バキッ
「ぐあっ」
練習用の剣で、盛大に斬られ吹っ飛ばされた俺は、地面に落ちると痛みでもがいた。
「うぐっ、痛てぇ」
少し時間をもらい、何とか起き上がりはしたけど、痛くてすぐに練習を再開出来なさそうだ。
だが、あくまでそれは俺の思いで、先輩兵士が同じ事を思ってくれてはいない。
「おい、エイト。お前、先日カポの村に行ってから集中力が足りないぞ!」
「す、すいません」
「なら、もう1本だ」
「う、はい。お願いします」
そんな地獄のような訓練が1時間くらい経った頃、1人の少女レヴィが現れた。
「皆さんお疲れ様でした、治療しますので怪我した人並んでくださいね」
レヴィは、いつもの様に椅子を2つ設置し、その1つの椅子に座る。
見慣れた光景だ。
しかし、実は何年か前にレヴィは、この修行を終わる予定だった。
理由は、ヒールを無詠唱で唱えらるようになったからだ。
しかし、身長も含め愛らしいルックスや、兵士達の愚痴の聞き役が上手なレヴィは、今やこの訓練場の癒しとなっていた。
そのため、レヴィがいなくなるのは、兵士達の士気に関わるかもと、先輩兵士達がレヴィの師匠のリア様に頼み込んで続けてもらっている。
レヴィを見て、そんな事を考えていたら、先輩兵士からやられる事は1つ。
「隙あり」
バキッ
「がっ」
さっきと同じように、剣で斬られ吹っ飛ばされた。
今度は先輩の怒り付きで。
「ダメだダメだ。素振り500回とランニング10km追加だ。エイト、そのたるんだ根性叩き直してやる!」
「ええっ!・・・はい、分かりました」
◇
「レヴィ、治療頼む」
ようやく追加訓練を終えた俺は、レヴィの下へ来た。
「分かった。ヒール」
レヴィがそう唱えると、俺の体から傷や殴られた跡が綺麗に消えた。
「ふぅ、疲れた」
「ふふっ、だいぶ絞られた様だね。お疲れ様」
「そんなんでもねぇよ」
ちょっとぶっきらぼうに答え、視線を逸らす俺。
実は、以前の外湯でこいつの裸姿を見てから、こいつを見る度に思い出して悶々ってしてしまう。
「あ、そう言えば、今日はエイトに渡したい物があるんだ」
レヴィが、俺に、プレゼント?
「お、おう。なんだ?」
マジか、ちょっと、いやかなり嬉しいな。
顔には出さないけど。
「はい、怪我をしないお守り」
俺に、長方形で少し豪華に飾られている物を差し出してきた。
「怪我をしないお守り、ってなんだ?」
俺の質問に、レヴィは詐欺みたいな答えを言ってきた。
「怪我をしないお守りって名前の通り、持っている人を怪我から守ってくれるんだよ」
何だそれ、だったら戦場で怪我する人なんていないだろう。
「んな訳あるか、なら治癒師いらねぇじゃん」
「ごめん、大袈裟過ぎた。でも、あながち間違いでもないんだよ」
「どういう事だ?」
「例えば、僕が君の彼女だとするよ?」
「お、おう」
レヴィが、俺の彼女か。
良いなそれ。
「その僕から、怪我をしません様にって、お守りを貰ったらどうする?」
そんなの決まってる。
「怪我しない様に気をつける」
「でしょ?結果、そのお守りがある事で気を引き締めるから、守られてるんだよ」
「なるほど、そうか」
「まぁ、ダメな時はダメなんだけどね」
「じゃ、ダメじゃん!」
「でも、怪我をする回数が減らせるなら、それに越した事は無いからさ」
レヴィは、そう笑顔で言った。
「だからもらって欲しいな、なんて。ダメ?」
そんな、上目遣いで見てくんなよ。
貰うしかねぇじゃん。
「も、貰ってやるよ」
俺は、お守りなる物を貰うために、右手を差し出した。
「ありがと」
差し出した俺の手の平に、レヴィは両手で大事そうに乗せて来た。
しかも、
「心も怪我しませんように」
なんて付け足して言いやがる。
「あ、ああ。ありがとうな」
「ふふっ」
また、笑顔を向けやがって。
ダメだ、今度はこいつを考える度に、笑顔を思い出すようになっちまった。
そして、次の任務からおいそれと怪我できなくなったな。
頑張るか!
最近、投稿のペースが落ちていますが、頑張って書きます。
見てくれている方達、お許しくださいm(_ _)m