22リフレッシュした1日
「ほんっとごめん!わざとじゃ無いんだよ」
エイトは僕に会うなり、開口一番に言ってきた。
「もう良いから。その話題はしないで」
言われると、思い出して恥ずかしいし。
こっちとしては、なるべく忘れたい。
「だ、だが」
「しつこいよ!」
あまり、しつこいと怒るよ!
「じゃ、じゃあ最後に。これ、お詫びと言っては何だけど貰ってくれ」
エイトは、ポケットに入れていたブレスレットを取り出し、僕に渡してきた。
「だからもう良いって、って何これ凄く可愛い!」
怒りの抗議しようとしたが、エイトが差し出してきたブレスレットが可愛く、つい受け取ってしまった。
「わぁ、凄く綺麗で可愛い!」
そのブレスレットはキラキラ輝いているグリーンの色彩で、周りに亀の形に加工された石が付いている。
「そのブレスレットは、村おこしの為の試作品で、外湯に浸かっていた石を、輪っか状に編んだ布の中に、はめ込んだ物だ」
「へー、このキラキラ輝いてるの布なの?凄いね」
でも、温泉に浸かっていた石なの?
スンスンと匂いを嗅いでみた。
しかし、温泉のお湯に浸かっていた割には匂いもない、むしろ少し甘い匂いがする。
「石に、リラックス効果のある匂いもついているらしい。他にも効能もあって、肩こりや疲労を解消してくれるんだと」
何、その今の僕にジャストフィットした商品!
「ちなみにそのブレスレット、試作段階終了したばかりで、まだ売られてないからレヴィが第1号だぞ」
「えっ、どうやって手に入れたの?」
「内緒だ。そして、そのブレスレットまだ仕掛けがあるんだ。手首の周りを1周する様に回して、上から見てみな」
エイトの言われた通りに回してみる。
「わぁ、亀が歩いてる!可愛い」
1つ1つの亀の形が違うので、亀が僕の手首の上でテクテク歩いてる様に見える。
「お〜、何か癒される!ずっと回していられるかも」
そんなしゃいでいるを僕を見て、エイトが安堵していたのを僕は知らない。
◇
「今日は、ありがとうございましたナダンさん。外湯、凄く良かったです。また、近い内必ず来ます」
「いえいえ、むしろこちらこそ無料で村の住人の怪我を治して頂き、ありがとうございます。レヴィ様ならいつでも大歓迎です」
僕とおじさんことナダンさん(ついさっきエイトから名前聞いた)は、お互いペコペコお辞儀をしながらしながら会話していたが、そんな光景に痺れを切らしたエイトが催促してくる。
「おい、レヴィ。そろそろ帰るぞ、馬車に乗れ」
さっさと馬車に乗る様、手で促す。
「うん」
僕は馬車に乗り、最後にまたおじさんに挨拶をする。
「では、また来ます」
「はい、いつでもお待ちしております」
挨拶をし終えると馬車が動き出し、僕達は村を後にした。
馬車に揺られていた時、僕はふとした事を思い出す。
「ねぇ、エイト」
僕は、馬車の窓から景色を見ていたエイトに話しかけた。
「何だ?」
「そう言えばエイトのトラウマって何だったの?」
「ん?ああそれか」
エイトは、僕の質問に答えるために景色を見るのをやめ、こちらを向く。
「ハーピーって知ってるか?」
「ハーピーって、あの空飛ぶモンスター?」
「そうだ」
ハーピーとは、鳥と女の人が合体したようなモンスター。
性格は獰猛で獲物を見つけると、執拗に空から攻撃を仕掛けて息の根を止めてから食べる。
「初任務が、カポの村に住み着いたハーピー数体の討伐だったんだ」
「そうだったんだ、それで討伐した事がトラウマに?」
確かに、見ようによっては女性みたいに見えるからね。
「ああ、やっぱりモンスターとはいえ、手と足以外は普通の人に見えちゃってな。トドメを刺すとき躊躇ったよ」
だよね、人に見えるとそうなるよね。
「でも、あっちは俺達を殺す気で来てるからな。仕方ないと割り切ったよ」
そういう風に、割り切れる所が凄い。
「だから、レヴィがゴブリンを殺した事でトラウマになるのも分かるよ」
そう言われると、少し心が軽くなった。
皆がみんな誰しも強くは無い、だから人によってはそんな事?と思う様な事でも悩んだりする。
もしエイトがいなかったら、僕はまだ悩みを抱えたままいるかもしれない。
そう考えると、今日は本当に良いリフレッシュになった。
「エイト、改めて今日はありがとね。あるかどうか分からないけど、もしエイトにも悩みとか相談が出てきたら頼ってね」
「あ、ああ、そん時はよろしくな」
「何照れてるの?顔赤いよ」
「う、うるせぇ」
エイトが困ったら、今度は僕が助けてあげたい。
そんな事を思いながら、僕は城へ帰った。