19村に到着したけれど
あれから、エイトがいつの間にか予約していた馬車にのり、僕たちは今カポの村に向かっている。
ああ、カッポカッポと馬が歩く音が耳に心地良い。
「アデラから近いって、言っていたから歩きかと思った
僕は、馬車から見える景色を堪能しながら言う。
「さすがに近いとは言っても、歩きだと日帰りは無理だ」
まぁ、確かにね。
「今日もハルさんいないのか?」
「うん、ちょっと町に頼んだものを取りに行くらしくて」
「そ、そうか。2人だけって初めてだな、何か緊張するな」
え、何で?
別に何とも思わないけど。
だって相手はエイトだよ?緊張なんて無い無い。
「それより、そろそろ聞かせてよ。何でカポの村に行くの?」
「だから、着いてからのお楽しみだって」
「むぅ、いつ教えても一緒じゃん」
「違うんだなー、とだけ言っておこう」
何、そのドヤ顔。
ちょっとムカつく。
◇
馬車に揺られて約2時間、カポの村に着いた。
カポの村、編み物と織物を中心としている村で、この村の絨毯や飾り布なんかはとても人気があると、エイトが馬車の中で言っていた。
「カポの村に着いたぜ、降りるぞ」
「うん」
うう、始めは良かったけど、馬車は長時間乗ってるとお尻が痛くなってくるな。
僕はお尻を摩りながら馬車から降りる。
「ここが、カポの村か。何だろう、何か臭い匂いがする」
スンスン、やっぱり臭い。
でも、どこかで嗅いだ匂いなんだよね。
どこだっけ?
「おいこら、臭いとか失礼だから、絶対村の人には言うなよ」
「あ、ごめん。気をつける」
確かに失礼だよね、反省。
「ほら、行くぞ」
「うん」
カポの村に入って少しすると、道を歩っている人達が、エイトに気づき始めた。
小さな村だからか、それともエイトが人気者だからか人だかりが簡単にできた。
そして、集まってきた中、1人のおじさんがエイトに話しかけてくる。
「おお、エイト様。またお入りに来たんですか?」
「ああ、今日は連れが入りに来たんだよ。ほら、レヴィ挨拶だ」
エイトは、村人にそう言いながら僕に自己紹介を促して来る。
別に構わないんだけど、何かエイト僕の保護者みたいに言うね。
「初めまして、私はレヴィと言います。治癒師をしています。よろしくお願いします」
無難な自己紹介話したつもりだが、おじさんは体をワナワナと震わせ、すごく狼狽え始めた。
え、何かこの自己紹介ダメだった?
「ち、治癒師、あなたが。あ、あの。いきなりで悪いんですが、お願いがあるんです!お金・・・は支払える分くらいしか払えませんが。でも、お願いします、診て欲しい奴がいるんです!」
おじさんが、僕の肩を掴み必死にお願いし始めた。
「え、は、え?あの、分かりました。診ますから止めてください。ああ、肩を揺すらないで、ガクガクして首が痛くなる」
ちょっ、止めて!
さっきから、首がヘッドバンキングしてるから痛い。
「ほ、本当か!良かった」
ようやく、肩を揺するのを止めてくれたおじさんが、涙を流し始めた。
「その方は、どちらにいらっしゃいますか?」
僕は、痛い首を押さえてヒールをかけながら、おじさんに聞くも、その光景を見た人達は、
「おおー!まさかの無詠唱か。素晴らしい」
と、驚いていた。
それを見ていたエイトは後ろ頭を掻きながら言った。
「何か変な展開になってきたな」