13ゴブリン
いよいよ、奴が現れます。
「あと、どれくらいで着くんだ?」
王子がちょっと不機嫌になりながら赤髪に聞く。
「ここら辺だと思うんだが」
赤髪は、地図を広げ指をさし方向を確認しながら鉱山を探す。
「あ〜、疲れた。おいレヴィ、水」
「どうぞ」
王子は、僕が差し出した水袋を受け取ると、乱暴に蓋を開け水を飲み始めた。
おい王子、ありがとうはどうした?
「俺も喉が乾いたな、水くれ」
茶髪も、僕達に習って後ろにいた治癒師さんに水を要求する。
「すいませんが、ありません」
治癒師さんは申し訳なさそうに頭を下げた。
当たり前だ。
僕達は治癒師、メイドさんじゃないから、いちいち人に気を回しながら動ける訳がない。
メイドさんって、実は凄いんだからね。
ちなみに、僕がなぜ水袋を持って来てるかと言うと、僕は施設長との将来を考え、ハルさんの手解きを少し受けているので、やれている。
出来る嫁プライスレス!
だが、そんな治癒師さんに茶髪は苛立ち始める。
「おい!何で持って来てないんだ?普通、お付きなら持って来るもんだろう!」
いや、お付きじゃなくて治癒師だから。
茶髪が揉めていると、近くからも声が聞こえて来た。
「あー、もう!」
「す、すいません!」
「水飲みたいんだよ!分かる?み・ず」
金髪の方も同じ事で揉めていた。
それを見た王子は、気分が良くなったのか、揉めている2人に言う。
「ハッハッハ、君達教育がなってないよ?俺んとこはほら、俺の事大好きだからな。おい、レヴィ皆に水を分けてやれ」
おい、だから誰が大好きだなんて言ったんだよ!教育もされた覚えもないわ。
しかし、返ってきた返事は、
「え、人の口つけたものはダメだってママが・・・」
「お、俺もだ。下手したら死ぬ可能性があるからって」
2人は、親にそう躾けられているためか、水を飲むのを断った。
「に、人数分の水なんて無いかな?」
茶髪は、ダメ元で王子に聞いてくる。
「な、何?水を人数分なんて」
チラッ、
こっち見るな。
水を皆の分何て・・・、あるんですよね、これが!
ハルさんが、王子の周りは類友だから何かを用意するなら、人数分用意した方が良いと言っていたんだよね。
「人数分の水袋を持ってますので、1人1袋どうぞ」
「マ、マジか。人数分用意するなんて気が効き過ぎじゃないか?」
「王子、一体どんな教育してんだ?」
2人は、水を諦めていたみたいだったみたいだが、僕が人数分の水袋を差し出すと、喜んでいた。
当然、王子は
「ハーハッハッハ、君達の付き人とは訳が違うんだよ!」
両手を広げ空を見ながら叫ぶ王子、僕はそんな王子を見て笑顔になり思った。
お前何もしてないだろバーカ。と
「あった!あそこだ、皆見ろ!」
僕達が、そんなやり取りをしていたのを他所に、赤髪は一生懸命に探していたらしく、鉱山を見つけてはしゃいでいた。
◇
ここが鉱山か、なんか。
「怖いですね」
僕は、思った事を声に出してしまった。
「ハハハ、お前は何の訓練も受けてないからな、中からモンスターが現れたらいちころだろう。後ろから俺の服を掴みながらついて来な」
王子カッコイイ!
なんて思うかバーカ!
そもそも行かなきゃ良い話なんだから、お分かりですか?
しかし、僕は大人。
「王子、ありがとうございます」
現実で、そんな事言ったら後々大変なのでニコニコしながら王子に従った。
あー、王子といると心が荒んでいく!
「おい、置いていくぞ?」
「今行く、さぁレヴィ!」
「・・・」
何、自分に酔ってるんだか。
僕達は、鉱山の中に恐る恐る歩いて行く。
廃坑と言っても、前世の記憶が確かなら管理人さんみたいな人がいるはず。
しかし、明かりも所々しか付いていなく、僕達が簡単に中に入れた時点で管理がずさんだ。
そして、さっきから何だろう。
この全身のムズムズ感は、他の治癒師さん達もソワソワしているから同じ感じなのかも。
馬鹿達は、何も感じないのか「かっけー」とか、すげー」とか中身のうっすーい感想を言っていた。
その時、
『ギャギャギャ!』
なんか出た!
人なのかな?いや、多分モンスターだよね。
「お、王子、この方は知り合いですか?」
王子に一応確認してみた。
「お、王子?」
王子の顔を見るために上をみたら、王子は顔を青くし固まっていた。
「ゴ、ゴ、ゴブリンだー!逃げろー」
王子は、ゴブリンからダッシュで逃げた!
「王子ー、待ってくれ!」
「退却、退却ー」
「何でモンスター何かいるんだ、逃げろ」
3馬鹿トリオも、僕達治癒師を置いて逃げた。
「ええー、さっきのカッコイイ言葉はなんだったんですかー!」