11もう帰りたい
「私は、皆様が見えない所で待機しています。何かされた時は叫んで下さい。すぐ駆けつけます」
「ありがとう」
昼食会には、僕しか参加してはいけないと(王子に)言われているため、ハルさんには何かあった時の保険として、見えない所での待機をしてもらう事になった。
「じゃあ、行ってきます」
「行ってらっしゃいませ」
少し歩いた所で、昨日から言おう言おうとしていた事を、振り返ってハルさんに言った。
「ハルさん」
「はい、何でしょう」
な、何か照れ臭いな。
「いつもありがとう」
何故、感謝の言葉を言ったかというと、実は理由がある。
ハルさんの目の事を、本人に聞いたのだ。
師匠が言っていた事は本当で、
(いや、嘘とは思ってはいないけど)
ハルさんはとある任務中、目に呪いをかけられたそうだ。
その呪いは進行していっているらしく、少しずつ見えにくくなっているらしい。
ちなみに今は、1メートル先くらいからはボヤけて見えないと言っていた。
師匠も頑張ってるが、今の所、解呪出来ずにいる。
それでも、いつも自分より僕のために頑張ってくれているハルさんに、お礼が言いたかったのだ。
言えてよかった。
そして、誰も治せなかったら、いつか僕が治してあげたいな。
「・・・レヴィ様、時間ですよ。早く行かないと、王子がうるさいかと」
「いけね、じゃあ今度こそ行ってきます」
よしっ、言いたい事言えたから頑張って来ますか!
◇
「遅いぞっ!待ちくたびれた」
王子の話しを了承した時に、教えられた寝室に来た途端言われた。
「す、すいませんねぇ〜。こっちも暇じゃないんで」
相変わらずムカつくな。
「ちっ、まぁ良い。俺は寛大だからな、ありがたく思えよ?」
誰が思うか!
「ちなみに、あのメイドはいないな?」
いるけど、
「いませんよ、どうしてですか?」
「目が怖いんだよ、こいつと喋る時はとくに」
「え、何て?」
ぶつぶつ言われても聞こえない。
「い、いいから。おら、行くぞ!ついて来い」
「はいはい、畏まりました」
結局、何でハルさんダメなんだよ。
◇
数分歩いた所に、もの凄く開けた庭があった。
「うわ〜、王子。凄く綺麗で清々しい庭ですね」
「ふん、どこにでもある庭だろ。いちいち、喜ぶな」
コイツ殴りたい、こんな良い庭が何処にでもあってたまるか!
「おっ、いたいた!おーい」
王子が笑顔で手を振った先には、いかにもボンボンといった感じの子供が3人いた。
ボンボン3人の後ろには、治癒師だと思われる女性が3人いる。
「なっ、あの話しは本当だったのか!」
金髪のボンボン1人が驚きの表情で言った。
「ハハハ、だから言っただろ?めっちゃ若くて才能溢れてる治癒師が、俺の専属治癒師だって」
あああん?そんな訳ないだろう!今日限定だから。
「しかも、俺の事大好きでやんの。全く参るよ」
いつそんな事言ったんだよ!僕自身、初耳だわ。
「なっ?」
何、そのハイって言えみたいな顔、言いたくないんだけど。
「なっ!」
王子がさらに圧をかけた聞き返しをしてきた。
「はい」
今、こいつの顔に泥を塗ったら、今日僕が出席した意味が無くなる!
ここは、耐えて我慢だ。
「たくっ、参っちまうよ!まぁ、話しは飯食いながらしようぜ」
「そうだな」
「だな」
茶髪の1人は相槌を入れ、もう1人の赤髪はうんうんと頷いていた。
僕はというと、
「もう、帰りたい」




