39ありがとな
バシッ。
「何やってるんだレヴィ!指示があるまでは待機。これは絶対な筈だぞ!」
「すいません」
ジャイアントタイガーを倒した後、カークは走ってレヴィの下へいき平手打ちをした。
「何で、指示が無いのに動いたんだ?場合によっては全滅のリスクだってあるんだ、バカな言い訳をしたら今度は殴るからな」
「お、おい、そこまでは。レヴィは、お前を」
助けようとしたんだぞ。とドマが言いかけた時、トリス隊長に手で制された。
「気持ちは分かるが、必要な事だ」
「しかし、・・・、はい」
ドマは仕方なく引き下がる。
「カ、カークさんが、噛まれて死んじゃうんじゃ無いかと思って、飛び出してしまいました」
レヴィは、左頬を抑えつつ涙目で言った。
「その行動1つで、お前死んでたかもだぞ?いや、トリス隊長がいなかったら死んでた」
「そ、それでもカークさんが死んじゃうのは嫌だったんです」
ここまで、ずっとそばにいてくれて優しくしてくれていた人が、いきなり居なくなると思うと、恐怖とよく分からない焦燥感になる。
なら、それなら僕が犠牲になった方が良い様な気がした。
「命令違反は、重犯だ。さっきも言った様に全滅のリスクが上がる。絶対してはいけない行為だ」
しかし、そこでカークはレヴィを抱きしめた。
「でも、ありがとうな」
「はい、でもすみませんでした」
レヴィも耐え切れなくなり、カークの胸で静かに泣いた。
◇
「隊長、そろそろ起こしません?」
カークは、背中で寝ているレヴィを見ながらトリス隊長に聞く。
「ダメだ。城まで必ず連れて行け」
あの後、レヴィがカークを回復させてから森林を出た所で少し休憩をとった。
すると、レヴィはそのまま眠ってしまったのだ。
初めは、起こそうとしたが全然起きなく、仕方ないので、すっかりプチ保護者になっているカークが、おんぶして帰ることになった。
「はぁ」
カークも、俺もそれなりに疲れてるんだけどな、などぶつぶつ言っていたが、誰も気にしない。
「お、城が見えてきたぞ?この任務が終わればレヴィとも合わないかも知れん。寂しいか?カーク」
ドマがからかい半分でカークに聞いてきた。
城には何万人と兵士がいる。
勿論それは、遠方に勤務している兵士も含めてだ。
今はまだ、治癒師は数少ないので合うかもしれないが、数が少ない分争奪戦になると予想される。
もしかしたら、上の判断では治癒師の同行は、やはり無しとなる可能性もある。
「別に何とも思ってないです」
そう言いながら、おんぶしている手を少しだけ大事そうに力を入れ抱えた。
次で、1章として区切りがつきそうです。