36 カークと戦略
カークの突撃によりジャイアントタイガーは、カークを警戒し森林組からの注意がそれた。
そして、それから程なくして森林前組が現れた。
「トリス隊長!」
森林組の声は小さくても、喜びの感情は大きかった。
トリス隊長は、森林組を見回しながら言う。
「皆、大丈夫か?怪我しているならレヴィに回復してもらえ」
「はい、大丈夫です。隊長、助かりました!」
「まだ、その言葉は早い。カークが注意を逸らしているうに、森林組は負傷者の安否と回復、そして退避をするぞ」
「森林組、お前達は回復をしてもらった後に、そのままレヴィを連れて負傷者の所へ迎え。あとの事は、イヤリングで伝える」
「「はい」」
「森林前組、作戦を変える!お前達はカークの援護に迎え。隠れて行き、あのネコに奇襲をかけろ。カークには、作戦内容をイヤリングで伝えておく。カークの指示に従え」
「「はい」」
「よし、作戦開始」
「「おー!」」
森林前組は、ジャイアントタイガーに距離を取りながら回り込みように移動し始める。
トリス隊長は、ぶつぶつ話し始めた。恐らくカークさんに作戦を伝えているのだろう。
そしてレヴィは、森林組の近くに行く。
「まずは、ドマさんから回復しますね?」
「ああ、頼む」
僕は、ドマさんにヒールをかける。皆、疲労はあるものの大した傷は無く、他の3人も1回のヒールで回復した。
「それでは、負傷者の所へ案内して下さい」
「こっちだ。少し離れてるから、君を抱っこさせてもらうよ?」
「え?ヒヤッ!」
ドマさんは、まだ背の小さい僕の移動速度すら惜しいと思ったのか、お姫様抱っこしてきた。
「ちょっ、辞めて下さい!走れますから」
ドマさんは、僕を無視し走り出した。
この野郎。
◇
「ん?・・・、ククク。はい」
カークは、いきなり笑いながらジャイアントタイガーに話し始める。
「よう、クソネコ。今から八つ裂きにしてやるから覚悟しな!」
カークは、腰を落とし2本の剣をブラブラさせ、揺ら揺らと独特なステップを踏む。
『ガルルル』
一方、ジャイアントタイガーは右腹から出血し、痛みからか口から涎が大量に出ていた。
「いくぜ!」
先手を取ったのはカーク、常人離れしたスピードで正面から斬りに行く。
『ガゥ!?』
フェイントだろうと思っていたジャイアントタイガーは、不意を突かれつつも何とか避ける。
しかし、
「あまいんだよ!うらぁ」
ブシュ、ブシュ。
『グァウ』
避けた筈のジャイアントタイガーは、急に方向転換したカークに左右から斬り刻まれた。
「今だ!弓を放て」
カークは、弓を持った3人のうち1人に、弓を放つよう兵士に指示を出す。
「はい!」
《走れ、稲妻 ライジングアロー》
ブスッ!また右腹に、今度は矢が刺さる。
『グギャァ』
考えてもいなかった方向からの攻撃で、さらにジャイアントタイガーは苦悶の表情、叫び声があがった。
「2人も、矢を放て!」
「「はい」」
待機していた2人も、1人に倣いライジングアローを放ち、ジャイアントタイガーに矢を刺す。
『グ、グァァ』
「効いてるぞ!盾の2人、足を斬れ。そいつのスピードをカメ並にしてやれ」
「「はい!」」
ブシュ、ザシュ
『ギィヤァァ』
この連携には、流石のジャイアントタイガーも耐え切れなく、崩れ落ちる。
「よしっ、貰ったな」
《穿てよ、ツルギ 縮地突き》
カークは、勝利を確信し自分のスキルでトドメを刺しに行こうとした。
しかし、ジャイアントタイガーの特性は素早さだけではなかった。
ガブっ!
「ぐぁっ」
ジャイアントタイガーは瀕死のフリして、トドメを刺そうとしたカークの左肩に噛み付いた。
そう、ジャイアントタイガーは賢さもあるのだ。