3異世界で治癒師になる
「治癒師になって善を積む旅に出て頂きます」
秤が訳の分からない事を言ってきた。
「いや、僕は無機物になるんだろう?」
「あなたは確かに多くの悪を積みました。しかし、それもあなたの環境がそういう風にさせてしまったのもあります。そういう方への、救済の意味も込めてこういう形の転生もあります」
勿論、断れば無機物ですけどね。と秤は付け加えてきた。
「私達は、基本的に転生までしかお手伝いは出来ません。あとは、あなたの魂は、全てあなた自身で造って頂くしかありません」
今世の僕の魂は最悪だった。確かに人生楽しかったが、満たされてはいなかったと思う。
人生を人でもう1回やり直せるチャンスがあるならやり直したい。
「分かった、治癒師になりたい。今までをやり直すチャンスをくれ」
次は、本当の幸せになれるように願って。
「分かりました。では、秤の前にある箱の中に入ってください」
箱の中身を開けて見ると、中は真っ暗だった。
僕は、躊躇いながらも言われるがままに箱の中に入った。
箱の中は、やはり辺りが暗く何も見えない。しかもすごい深いのか、どんどん下に行く。ような気がする。
暫くそのままにしていると、次は目の前がどんどん明るくなっていき光に包まれ、開けた場所に出た。
開けた場所の先には綺麗な女性が立っていた。
「ようこそ。救済の間へ」
女性が話しかけてきたが、悪人は女性に見惚れボーッと立ち尽くしてしまった。
「女神様?」
思わずそんな事を呟いてしまった。
「フフッ、人は私をそう呼んでいますね。早速ですが、あなたの転生先はエストイアという場所です」
「エストイア?」
「はい。この世界には、いろいろな紋章というものを持った人達がいます。その紋章が現れると、魔法やスキルが使えるようになり、その世界で治癒師になって善を積んでもらいます」
「治癒師って事は、キズを治せって事ですか?」
「はい。しかし、それは1つの選択肢です。とにかく何でも良いので、良い行いをして下さい」
何でも良いから、良い行いをする?なんだそんな事か。僕は、簡単なお仕事だと思った。
「簡単。そう思っていますね?」
「はい」
「転生してみれば分かりますよ。今の貴方の考えがどれだけ軽い考えかが」
◇
「では、転生させますね」
女神様が聞いてくる。
「はい。よろしくお願いします」
「10歳くらいになったら、左胸に紋章が出現します。これで、治癒師としての才能は開花します。あなたはいつでも良いので、好きな時に善を積んで下さい。あなたのこれからに、良い未来がある事を願います」
視界がぐにゃりと曲がり、僕は意識が朦朧としていく。
「頑張って」
最後に女神様からそんな言葉が聞こえた。