24嬉しいかと聞かれても
少ししてから、ハルさんは姿を現した。
「エイト様とのアポを取りました。レヴィ様の都合の良い時間に談話室でお会いできます。何時にいたしますか?」
良かった、アポを取りに行ってくれてたんだ。
「ありがとうございます。じゃあ30分後でお願いします」
「かしこまりました」
◇
20分後、僕は談話室の扉を開けた。すると、もう既にエイトがいた。
「え、もう来てたの?ごめん、お待たせ、待った?」
「いや、今さっき来たばかりだ。お前も、まだ10分前だぞ?早いな」
ソファに座っていたエイトが、首を振りながら答えてくれる。
レヴィは、エイトの対面にソファに座った。
「私は常に、10分前行動を心掛けているからね」
心に余裕を持たせないと、その後に支障がきたすかもしれないからね。眠い時は勘弁だけど。
「その割には、リア様の修行に遅刻しますけどね」
レヴィの後ろに待機していたハルが、素知らぬ態度で話しに入ってきた。
「いや、あれはまだ上手く服が着れないからで」
「なら、素直に私に任せて頂ければ良いのですよ?私は苦ではありません」
ちょっとムスッとしたように話すハルさん。
「ま、まぁ、それは例外で、基本10分前行動してます。所で、なんか話しあったんじゃないの?」
僕は無理矢理話しを逸らした。
すると、エイトは顔を下に下げ、躊躇った後話し始めた。
「レヴィ、お前は紋章をどう思っている?」
「紋章?色々な魔法やスキルを得られる証みたいなものかな」
「違う、そういう意味じゃない。紋章持ってて、辛くないかと聞いたんだ。お前は、紋章持てて嬉しいか?」
ああ、何となく分かった。きっと紋章を持った事による周りの期待や妬みに耐えられないのか。
「さあね。紋章持ちの気持ちは、これから追々分かっていくんじゃないの?嬉しいかどうかも、今は分からないよ」
まだ、なんの活動もしてないのに嬉しいかと聞かれても困る。
そういうのはベテランになった時に聞いてほしい。
「はぁ、お前は良いよな。もう、ヒール使えるしな。羨ましいよ」
・・・今なんと?僕が何の苦労もせずにヒール覚えられたとでも?ンな訳無いだろう!
「今の言葉は聞き捨てなら無いね。僕だって、苦労に苦労を重ねてヒールを覚えたんだ!しかも、未だに無詠唱ではヒール使えないから、未だ苦労してんの!分かる?大変なんだよ」
「え、僕?あ、ああ、悪かったよ。謝るよ」
僕の怒りの弁明に、エイトはタジタジになりながら謝ってきた。
同い年だからか、僕と言ってしまった。まぁ、良いか。
「そうだよ。治癒師って座学だけじゃなく、体力が必要だからって走らされるしね」
「ヘェ、どのくらい?」
「大体5Kmかな。でも、僕は色々あって遅刻しちゃうから、プラス3〜5Kmくらい追加されるから約7〜10Kmくらいだよ」
「マ、マジかよ!治癒師なのに走り過ぎじゃね?」
「でしょ?それなのに僕の師匠は体力は大切だとか行って走らせてくるんだよ。あの人、実は魔王の紋章持ってるんじゃないかと思ってるよ」
それからは、僕らの大変自慢が始まった。
僕達は同い年と言うこともあり、遠慮なく話しをし、気付けば1時間経っていた。
「ちなみに、エイトの紋章って何?」
「あれ?言ってなかったっけ?勇者だよ」
「えっ‼︎」
エイトが、何の紋章持ちかやっと書けました。
 




