17練習期間
更衣室で着替え稽古場に戻って来た僕は、早速師匠から色々教えてもらう事になった。
「稽古を始める前に、まずはこの道場の事を簡単にだが教えようかの」
「はい」
是非それは知りたい。
偶然知り合ったおじいさんが、まさかの道場の師範だなんてびっくりだもん。
「ここはロッドだけではなく、槍を教えている道場である。流派は護真流と言い、攻撃を避けたり防いだりしながら相手のミスや隙を見つけ、攻撃を加え倒す。という防御が主体の流派だ」
「へー、ロッドだけではなく槍も教えているんですね。それに防御主体ですか。僕にピッタリです」
「ほぅ、それなら誘って良かった。ロッドも槍も似たような所が数多くあるからな」
周りを見てみると、確かに槍に見立てた練習用の武器を振り回している人もいる。
「こんな所か。何か質問はあるかな?」
「あの、いきなりだし、全くの素人のくせにこんなこと聞くのおこがましいんですけど・・・」
「何かな?」
「普通に戦える位までには、平均どのくらいの練習が必要でしょうか?」
本来なら一人前になるためには、何年も練習しなくてはならない事くらいは想像付く。
でも、僕はあと約半年でこの国を出なくてはならない。
それまでには、ある程度ロッドの扱いが形になっていたい。
「・・・何か訳ありかな?」
「はい、詳しくは言えませんが。すいません」
もし、僕の今の状況を話し、その説明の中に機密情報があったりして、それを危険な人が聞いていたりしたらダイゾウ師匠に迷惑がかかってしまう可能性がある。
その事は、城のリア師匠からも注意されているし。
「よいよい。そうさな、お前さんの才能にもよるが、大体8ヶ月くらい続ければ、素人相手になら負けなくなるだろう」
「それでは・・・、困ります」
8ヶ月じゃ時間がかかり過ぎるし、モンスターと素人とでは強さの比較が出来ない。
「ふむ。・・・ではどのくらいで強くなりたいのだ?」
ダイゾウ師匠が顎を手でさすりながら聞いてきた。
それに僕は下を向き答える、
「・・・6ヶ月です」
自分でも馬鹿な事を言っているのは分かる。
だって、普通に考えても道場で2ヶ月という月の間、練習をしている人としていない人では量も質も全然違うのは分かる。
それを、全くの素人がやりたいというのだ。
下を向いているからどんな顔をしているか分からないけど、きっとダイゾウ師匠も僕の発言に苛立った顔をしていると思う。
しかし、そんな僕の考えを他所にダイゾウ師匠は軽い口調で言った。
「なんだ、それくらいなら大丈夫じゃ」
「ですよね。って、は?」
出来ないと思っていたらのまさかの発言に驚き、僕は拍子抜けした声を出してしまった。
「え、出来るんですか?」
本当に?
「ああ、出来るとも」
「そ、そうですか。良かった」
「ただし、そのためには弱音を吐かず恥も捨てなくてはならないがな」
「はい、頑張ります!」
この時に気付くべきだった。
上手い話には必ず何かがあると言う事に。




