5情報収集
「こ、ここかな?」
午前中、修行を終えた僕は、午後休みをもらって手書きの地図を持ち、とあるバーの前にいた。
「うっ、今だにバーは怖いな」
小さい頃、バーで嫌な目にあってから、こういうお店に近くだけでも恐怖心を抱くようになっていた。
「でも、待ち合わせ場所がここなんだよね」
昔のトラウマが、どうしても体を思う様に動かしてくれない。
でも、こうしていては埒があかないし行こう。
「んー、行くぞ!」
意を決してカランカランと鈴の音な鳴るドアを開けバーに入る。
「いらっしゃい」
中に入ると、マスターと思わしき方がコップを拭きながら言い、中にいた数人の男女は、こちらをちらっと見てきた。
「ど、どうも」
こ、怖い。
無意識に左手で右腕の服をギュッと握り、マスターの前の席に座る。
「何飲むんだ?」
「あ、あの。こ、ここにミルクはありますか?」
僕の注文に、マスターはコップ拭きをやめ、僅かに顔を歪めながら僕を見た。
その顔を見ると、更に怖くなり体がガタガタ震え出す。
「ここは、酒場だ。ミルクなら他で飲みな」
マスター、その顔怖いからこっち見ないで。
「さ、酒場の裏にある、お、お店ですか?」
「ああ、そうだよ。分かったなら行け」
マスターが、顎で帰れと促す。
「は、はい」
その仕草を見た僕は、全力疾走でバーから出た。
「はぁ、はぁ、はぁ」
急いでバーから外に出た僕は、息を切らしながらしゃがみ込む。
「こ、怖かった。出来ればバーは、もう2度と入りたく無い。でも、これで会えるはず。頑張った僕」
ガクガク震える足を何とか動かして、バーの裏へと行く。
すると、そこに1人の男性がいた。
サノハだった。
「よう、久しぶりって、どうした。顔色が悪いぞ?汗もびっしょりじゃねーか」
こ、こいつ。
一体、誰のせいでこんなトラウマ抱えていると思ってるんだ。
そもそも、サノハに会うために、毎回このやり取りをしなきゃいけないとかお腹が痛くなってくるんですけど。
なんか、イライラしてきた。
「サノハ、僕ケーキが食べたい。勿論、サノハの奢りね」
「な、何でだよって、怖っ!顔がこえーよ。わ、分かった、分かったからその顔やめろ」
僕の顔に気圧されたサノハは、ここから近くにあるケーキ屋さんに行った。
◇
「あ、あのレヴィ。要件は何かな?」
「待って。今、甘いもの食べて色々回復してるから」
要件を聞こうとしたサノハを手で制し、僕はケーキをたくさん口へほうばる。
メンタルがやられ過ぎて、まだ話し合うのは無理。
それから少しして、落ち着いたので、食べるのを止め話しを切り出した。
「サノハってさ、どんな難しい情報も集められるの?」
「ん?ああ。全てとまではいかないが、大体なはな。それに、難易度が高いものは、それなりに時間が必要だし。何、そんなに難しい情報が欲しいのか?」
「うん。あのさ、呪いの魔法の解き方なんて分かる?」
「呪いの魔法?」
サノハの顔を見ながら、話しを続ける。
「大切な人が今、呪いで苦しい思いをしているんだけど、解き方が分からなくて困っているんだ。お城の人達も頑張って探してくれてはいるんだけど、ダメで・・・」
「そうか」
僕の話しを聞き返事をした後、サノハはコーヒーを飲み、少し考え答えた。
「結論から言うと、分かる」
「えっ!わ、分かるの?」
まさかの解答に、僕はイスをガタッとならし立ち上がる。
「おい、落ち着け。結論から言うのには理由があるんだ。分かったら、まずイスに座れ」
「あっ、うん。ごめん」
落ち着く様言われ、イスに座るが、分かると答えを聞いてしまった僕は、サノハを急かした。
「それで、それで?なんで結論から言ったの?」
「それは、レヴィに出来るかどうかだからだ」
勿体ぶるね!
何なのそれは?
「それは、呪いをかけた奴を殺せば解ける」
「・・・えっ?」




