2呪い
大変、大変お待たせ致しました。
トントントン。
師匠に呼ばれていた僕は、部屋の前に着くとノックをする。
「師匠、レヴィ来ました」
「どうぞ」
「はい、失礼します」
部屋の中にいる師匠から返事を貰うと、僕はノブを回し中に入る。
「そこのソファにかけて」
「はい」
僕は師匠に言われた通りに師匠の席の前にあるソファに座ると、それを確認した師匠はいつもとは違う重い声色で話し始めた。
「レヴィ、来ていきなりで悪いけど、ハルの呪いので話しがあるわ」
ハルさんの呪いの話し?
「まさか、治せる見通しが立ったとか?」
僕の問いに師匠は首を振り、次に発した言葉は信じられないものだった。
「ハルにかけられた呪いは、目を侵蝕したあと、次は身体中に広がり始めているの。でも、今のところ治す術は無く、このままでは死に至らしめるわ」
「えっ?」
呪いが体に広がり死ぬ?
目だけじゃないの?
「ハルさんが、死ぬ?」
「ええ。今のままでいけば、多分あと数年後には死亡する」
数年後、ハルさんが死ぬ。
う、嘘だ。
「ハルさんが死ぬ?ハハッ、そんな訳ないじゃん。師匠ったら。だって、さっきも会って来たけど全然元気だったよ?」
「当たり前でしょう。呪いは、これから体に回るんだもの。今のままでの治療をしても、呪いの進行を遅らせる事しか出来ないから、いずれ体は動かなくなり、話しも出来なくなる」
師匠も、話し終える頃には顔を下に向きながら話していた。
「そ、そんな訳」
いきなり突き付けられた現実に、絶望と喪失感から体に力が入らなくなって、ソファから少しずり落ちる。
「ハルをお姉さんみたいに慕っていたあなたには、辛い話しだろうけど、いつかは来る事だから早めに話したの。勿論、これからも手を尽くすつもりだけど、今のままだと望みは薄いわ」
師匠は、席を立ち僕の下に来るとそっと抱きしめた。
「だから、まだ生きている数年の間に気持ちの整理だけは付けておきなさい」
師匠達でもどうしようもなかった術を、僕個人はどうしようもない。
僕は、少しの時間師匠の胸の中で泣いた。
◇
ハルさんが死ぬ。
このワードが頭から離れず、自室のベッドでグスグス泣いていた。
「ぐすっ、ハルさん」
今まで色んな人を治療し救って来たけど、今1番救いたい人を救えずにいる。
僕はなんて無力なんだろう。
以前、女神様が救うのは簡単じゃないというニュアンスを出していた事を思い出す。
今なら身に染みてわかる。
「全然救えない。僕はこの世界でもダメな人間なんだ」
口にした途端、さらに目から涙が出て止まらなくなってまた嗚咽を吐き泣いた。
そんな事を繰り返していたら、泣くのも体力がいるみたいで、しばらく泣いた後ウトウトし始め目を瞑った。
◇
「チッ、あの男を騙せなかった」
とある世界で、1人の男が舌打ちをし街を歩いていた。
「でも、あいつ金たくさん持ってるんだよな。絶対に騙して金ふんだくってやる」
あれ、この風景って日本?
そして、この人は?
もしかして、これは夢?
ハルさんの事で、凄く気分が落ちていたからこんな夢見てるのかな。
そんな事を考えながらも、僕の夢はその男を映画のワンシーンみたいに、真正面から追い掛ける。
「仕方ない、アプローチを違う方面から変えて再度突入だ。フフッ、絶対に金をふんだんに貰い、最後にあの情けない面を見てやるんだ」
その男は、ブツブツとそんなこと言いながら、雑居ビルに入って行った。
あ、このビル見覚えあるぞ?
思い出した。
僕が働いていた(詐欺)ビルだ!
そして、あまりにも遠い記憶だったから中々思い出せなかったけど、この人は前世の僕だ。
しかし、今思うと前世の僕はつまらない人生を送ってるな。
だって、人の落ち込んだ顔を見るために、失敗してもアプローチ変えて人を騙そうとしてるんだも・・・アプローチを変えて?
そうだ、アプローチを変えるんだ!
「はっ、あ、夢から覚めたのか。いや、今はそれどころじゃ無いぞ」
バッ!
ダッ!
夢から覚めた僕は、ハルさんを助けるために、思いついた方法を提案しに師匠の部屋へと走って向かった。
最近、自分の書いている内容の辻褄が合っているような合ってないような感じがする。
(ちゃんと構成は踏んでいるつもりだけど、文章の書き方が下手くそすぎて)
もう少しせたら、自分の小説を客観的に読み直さないとな。
(出来るかどうかは分からないけど)




