表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻想英雄の召喚士 ~努力が実を結んだ落ちこぼれは、非現実的すぎるゲームキャラたちを従えて最強の冒険者を目指す~  作者: タック@コミカライズ2本連載中
第三章 黒い幻想英雄

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/51

召喚士、崩壊に巻き込まれる

「……え?」


 巨大な怪物になったフッドマンごと、城はおろか風景の一部である山脈まで断ち切った〝ドラゴンキラー〟という究極スキル。

 ライトはそれに唖然としていた。


「好感度と竜特攻という相乗効果でチャンスはあるとは思っていたけど、さすがにここまでとは……。リューナ、もしかして本当に伝説の召喚王の――」


「むにゃむにゃ……おはようございます」


 真剣な表情で問い詰めるライトだったが、リューナは寝ぼけ眼を指で擦っていた。

 眼に浮かび出ていた女神イズマの紋章は消えている。


「おはよう……?」


「すみません、ちょっと前から寝ちゃっていたようです。さぁ、黒幕フッドマンはどこですか! この私――竜の勇者リューナが倒してご覧に入れましょう!」


「いや、もう倒しているし」


「えっ!? 私が寝てる間に手柄を横取りされましたか!? 一体誰が!?」


「リューナが倒した……って、覚えてないのか。いや、それよりも」


 直近の記憶を失っているリューナを放置して、やらなければいけないことを思い出した。


「本当にソフィが殺されてしまったのか確かめないと……。もしかしたら、まだ生きているかもしれない」


「プレイヤー……下手な希望を持つと辛いですよ。あの状況でフッドマンがウソを吐いて得をするようなことがないですし」


「ああ……」


 ライトも本当はわかっていた。

 それでも、どうしても心のどこかでソフィなら生きていると信じたいのだ。

 ドラゴンキラーで不思議な空間が破壊されたことによって、奥に続く道を見つけていた。

 ライトたちは覚悟を決めて進む。




 ***




「わたくしを助けに来てくれたのね! ライト!」


「ソフィ!? 無事だったのか!」


 王の間の奥にあった、王妃の部屋。

 そこにケガ一つ無いソフィが監禁されていた。

 ライトに抱きついてこようとしたが、リューナが間に入って止めた。


「プレイヤー、もしかしてこの方は偽物なのでは?」


「うーん……」


 ライトも、その可能性があると思ってしまった。

 ソフィはそれに対して、『もうっ!』と不機嫌になった。


「それなら、ライトの秘密を答えて証明致しましょう。ライトの好きなチェスのコマはポーン。努力によって強くなれるコマだからです。ライトが魔力切れを起こした回数は307373回。そんな努力家のライトでも、おねしょだけはなかなか直らなくて――」


「わーっ! もういい、わかった! ソフィだ! 本物だから!」


「はい、わかればよろしいのですよ。わたくしは、ライトのことは世界一詳しいのですからね!」


「あのなぁ……」


 ライトは色々と突っ込みたかったが、急に足元が揺れ出した。


「うおっ!? これは――」


「やべぇ、城が崩れ始めてるぜ!? どうすんだよライト!」


「落ち着けブルーノ。こんなときのために、リューナが丁度良い魔法を――」


 全員の期待を一身に集めるリューナだったが、本人は申し訳なさそうにしていた。


「えーっと……気が付いたら魔力がすっからかんでした」


「あー……ドラゴンキラーで……」


「しかも身体に反動が来ていて、ゆっくり歩くのが精一杯です。もし今、敵でも現れたら……」


 本来ならリューナの身体能力で誰かを抱えて走り、崩落する城の三階から飛び降りて脱出することも可能だろう。

 しかし、魔力がなければただの年頃の乙女と変わらない。

 ライトもブルーノもボロボロで疲れ果てていて、万策が尽きたかに思われた――そのとき。


「えっ!?」


 城のNPCたちが出現した。




 ***




 しばらくしたあと――ライトたちは、無事に街へと帰還していた。

 城が崩落してもうダメかと思ったのだが、城のNPCたちが脱出に協力してくれたのだ。

 好感度100は伊達ではなかった。

 城と共にNPCたちも消滅したが、最後まで笑顔で見送ってくれた彼らのことは忘れないだろう。


 それからイズマイール王に謁見をして、何でも褒美をもらえることになった。

 しかし、ライトが望んだのは――


「何もいりません。努力して強くなれる、今の自由な環境が望ましいからです」


 ということだった。

 王には(なか)ば呆れられてしまったが『また望みができれば申すがよい、いつでも歓迎する』と言われたので、かなりの信頼を勝ち取ったようだ。




 ――そして城から去って、新たな旅路へと向かおうとするライトの背中を、城の窓から眺めている真の黒幕がいた。


「努力とは、この世界の何よりもかけがえのないもの。努力するライトをわたくしは愛します。さて、次はどのような努力が必要な環境へ向かってもらおうかしら?」


 ソフィ・イズマ・イールは、心臓の位置に穴の空いた血だらけのドレスを捨てながら、どこまでも見通せる女神の眼で微笑んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍情報】
j0jdiq0hi0dkci8b0ekeecm4sga_101e_xc_1df_
『伝説の竜装騎士は田舎で普通に暮らしたい ~SSSランク依頼の下請け辞めます!~』カドカワBOOKS様書籍紹介ページ
エルムたちの海でのバカンスや、可愛いひなワイバーン、勇者の隠された過去など7万字くらい大幅加筆修正されています。
二巻、発売中です。
ガンガンONLINEで連載中のコミカライズは、単行本一巻が5月12日発売予定です。
よろしくお願いします。

【新作始めました!】
『猫かぶり魔王、聖女のフリをして世界を手中に収める ~いいえ、破滅フラグを回避しながらテイムでモフモフ王国を作りたいだけの転生ゲーマーです~』
聖女(魔王)に転生したゲーマーが、破滅フラグを回避するために仕方なく世界を手中に収めるという勘違い系物語です。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ