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幻想英雄の召喚士 ~努力が実を結んだ落ちこぼれは、非現実的すぎるゲームキャラたちを従えて最強の冒険者を目指す~  作者: タック@コミカライズ2本連載中
第三章 黒い幻想英雄

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召喚士、王命を受ける

 コロシアムのことは箝口令(かんこうれい)が敷かれた。

 そのため、ライトも重要人物として宿に軟禁されることになった。

 兵士たちを【絶対防御魔法:テツメタフ】で助けたこともあり、王室御用達の良い部屋を用意されているので居心地は悪くない。


「最高司祭様が俺を貶めた黒幕で、圧倒的な力を持つ黒い幻想英雄が出現して、ソフィが攫われて……これは何がどうなっているんだ……」


 様々なことが起きて混乱気味のライトに対して、一緒に軟禁されているリューナが声をかけてくる。


「プレイヤー、落ち着いてください。こんなときは焦ってもどうにもなりません」


「たしかに……そうだな……」


 ライトは大きなベッドに倒れ込んで、天井を見上げた。

 深呼吸して心を落ち着かせる。

 と、そのとき――


「それじゃあ、落ち着いたのならオレ様から重要な話がある!」


 ライトの顔面にクマのぬいぐるみ――レオーが乗ってきていた。

 普段ならはたき落としたいところだが、言葉の内容が気になってしまう。


「……レオー、重要な話って?」


「オレ様は、あの黒い幻想英雄を知っている」


「なんだって!?」


 ライトがガバッと起き上がることによって、結局レオーはポテッと落ちた。

 それでも気にせず話を続けてくる。


「オレ様が最初に言っていただろう? 目的をな」


「ああ、たしか――」


 ライトは、蠱毒の森でレオーと初めて会ったときのことを思いだしていた。

 そのときに『オレ様はある男を捜している!』と聞いた気がする。


「それが、あの黒い幻想英雄だったということか」


「そういうことだ。さぁ、大逆転のために赴くぞ! ライト姫!」


「ど、どこに?」


「まずは――この国の王のところだ」


 すべてオレ様に任せておけ、とでも言わんばかりのレオーであった。




 ***




 王室御用達の大きな宿の一室。

 ここは王侯貴族がリールの街に滞在するときに使用される場所である。

 豪勢な飾りや赤絨毯が敷かれ、まるで城にある王の間のようになっていた。

 そこにいるのはイズマイール王国の王や、それを補佐する大臣や宰相などの臣下たちだ。


「くっ、なんたる失態! 国の最高司祭が怪しげな召喚をして、第三王女ソフィ様を連れ去るとは……!」


「箝口令を敷いているが、人の口には戸を立てられぬモノ……すぐにでも広まって民の不安を煽ってしまうだろう……」


「それならすぐにでも騎士団などに招集を掛けて――」


「ならぬ! 最高司祭と国が争うことがあっては、さらに民の不安を煽ってしまうぞ! こうなれば、この街に滞在している冒険者――それも英雄の領域にいるランクの者に――」


「はっ、それくらい確認したわ! ギルド長からは『心当たりは二人だけいるが、今は連絡が付かない』と言われた!」


「じゃあ、どうすればいいのだ!? ソフィ様を見捨てるか!? それとも強引にでも――」


「……静かにしろ」


 臣下たちの騒々しさにうんざりしたような王が、一言そう告げた。


「し、失礼致しました……一番お辛いのは陛下だというのに……」


「どうにかして愛しい我が子を……ソフィを穏便に助ける手段はないのか……」


 王は椅子に深く座りながら、頭を抱えていた。

 顔は絶望が影を落としている。

 そのとき――部屋の扉が開かれた。


「失礼します」


「そ、そなたは!? 宮廷召喚士団長の息子――ライト!」


「はい、お久しぶりです」


 二人はすでに面識があったため、ライトは王に近付いて跪いた。

 王は複雑な表情をしてから、ライトにおもてを上げるように言った。


「ブルーノから事情は聞いておる。最高司祭の甘言にハマり、そなたを城から追放してしまった件は王として……いや、ソフィの親としても謝罪しよう。本当にすまなかった」


「お、王よ!?」


 王らしからぬ態度で深々と頭を下げたのを見て、臣下たちは慌てふためいた。

 しかし、これが人としてのけじめである。

 それを感じ取ったライトは、今までに見せたことのないような大人の表情で対応した。


「いえ、こちらも城の外で様々なことを見聞することができました。まだまだ未熟というのを思い知らされる日々です」


「そうか。そのことについては、また後日話したい。だがしかし、今は別件で手が離せず――」


「冒険者を探しているんですよね?」


「知っていたのか。ああ、それも普通の冒険者ではない。英雄の領域と言われる高ランクの――」


「王よ、このライト・ゲイルにお任せください」


「……もしや」


 全員の注目がライトに集まった。

 このタイミングで任せろと言うことは――


「冒険者ランク6の召喚士として、聖女姫殿下――いえ、大切な幼なじみであるソフィを救い出してご覧に入れましょう」


「なに!? ランク6だと!?」


「し、信じられるか!!」


 臣下たちは騒ぐが、ライトが冒険者許可証を見せると静まりかえった。

 その中で王だけは、最初からわかっていたかのように威厳を保ち続けていた。


「ふっ、ソフィと一緒によちよち歩きしていたそなたが……頼もしく成長してくれたな。……良かろう、ソフィ救出を命じる。これは王命とわきまえよ」


「はっ! ……それと頼みがあります」


「何なりと申せ」


「ブルーノを追放してください」


 その意外すぎる答えに、王ですらポカンとしてしまうのであった。

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【書籍情報】
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『伝説の竜装騎士は田舎で普通に暮らしたい ~SSSランク依頼の下請け辞めます!~』カドカワBOOKS様書籍紹介ページ
エルムたちの海でのバカンスや、可愛いひなワイバーン、勇者の隠された過去など7万字くらい大幅加筆修正されています。
二巻、発売中です。
ガンガンONLINEで連載中のコミカライズは、単行本一巻が5月12日発売予定です。
よろしくお願いします。

【新作始めました!】
『猫かぶり魔王、聖女のフリをして世界を手中に収める ~いいえ、破滅フラグを回避しながらテイムでモフモフ王国を作りたいだけの転生ゲーマーです~』
聖女(魔王)に転生したゲーマーが、破滅フラグを回避するために仕方なく世界を手中に収めるという勘違い系物語です。
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