《聖女パーティー》エルマ視点18:ちょ、どこへ行くのよ、豚!?
思い出したくもない悪夢の床ドン事件から一夜明け、あたしたちは朝一で村を出発し、順調に山越えをして夕刻には商業都市――アフラールへと到着していた。
さすがはあたしと言うべきか、豚に壁ドン諸々の記憶は残っておらず、食事の途中で寝落ちしたと思い込んでいるようだった。
まああたしの中では一生もののトラウマが残ったんだけどね!
もしあれで唇まで奪われていた暁には、もう豚をミンチにしたあとにあたしも爆散して死ぬ所存だったわよ!
まったく油断も隙もありゃしないわ!
「とりあえず宿をとりましょうか。日も暮れてきましたし、本格的な調査は明日からにしましょう」
ともあれ、あたしはいつも通りの聖女スマイルで豚にそう促す。
が。
「ぶ、ぶひ~……あ、暑い……」
「……」
いや、なんでもうへばってんのよ!?
あんた馬車に揺られてただけでしょうが!?
てか、あんた低レベルだけど《火耐性》あるでしょ!?
誰がわざわざマグリドで習得させてやったと思ってんのよ!?
ちょっとは気張りなさいよね!?
内心突っ込みの止まらないあたしだったが、それを顔に出すようでは聖女失格である。
ゆえにあたしはやはりお淑やかかつ女神のような面持ちで豚を気遣った。
「だ、大丈夫ですか? ポルコ。もう少ししたら気温も下がると聞きましたし、手を貸しますからとりあえず木陰に移動しましょう」
「も、申し訳ございません……」
――べちょっ。
「……」
あ、汗えええええええええええええええええええええっっ!?
◇
そんなこんなで翌朝。
あたしたちは風の女神が住まうとされている砂嵐地帯へと馬車を進ませていた。
というのも、気温が下がって復活したポルコが、汚名返上とばかりに情報収集に出かけてくれたおかげで、風の女神の所在と思しき場所を突き止めることが出来たのである。
何よ、やれば出来るじゃないとあたしもポルコの健闘を内心讃えていたのだが、
「ぶ、ぶひゅ~……」
「……はあ」
やっぱり日中はこのざまであった。
どうせこうなることは予想済みだったので、宿で待つよう告げてはみたものの、「いえ、聖女さまの御身に何かあっては申し開きが出来ません!」と無駄な男気を出してくれやがったのである。
いや、どう見てもあんたの方が蒸し焼きになる寸前じゃない……。
もーだから宿で待ってろって言ったのにー……。
そんなあたしの思いもむなしく、馬車は件の砂嵐地帯へと到着する。
人々の話だと、この中に風の女神がいるらしいが、ここに一度足を踏み入れた者は方向感覚を奪われ、二度と戻っては来られないのだとか。
恐らくはそういう類の結界なのだろう。
さて、どうしたものか……、とあたしが頭を悩ませていると、豚が汗まみれで隣に並んできた。
「は、はふぅ~……。こ、これが例の砂嵐ですか……?」
「え、ええ、そのようですが……大丈夫なのですか?」
「はっはっはっ、このくらいなんとも……あっ」
「えっ?」
その瞬間、豚が足を踏み外して砂の斜面を転がっていった。
「せ、聖女さまあああああああああああああああっ!?」
「ちょ、豚……じゃなかった!? ポルコおおおおおおおおおおおっ!?」
そうしてころころと転がり続けた豚は、そのまま砂嵐の中へと容赦なく突入していってしまった。
あーもう!?
こんなの追わないわけにはいかないじゃない!?
なのであたしも急いで豚のあとを追ったのだが、
「――むっ? 何故我が領域の抜け道を知っている? 貴様らはなんだ?」
「……へっ?」
いつの間にやらあたしたちの目の前に子連れの女性が立っていたのだった。
え、ここどこ……?
てか、子どもの数多っ!?
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