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53 謎の占い師は口元が妙に色っぽい


 そうして件の港町――〝イトル〟へと到着した俺たちは、早々に宿を手配した後、遅めの昼食を摂る。


 さすがは港町とでも言うべきだろうか。


 丸々と太った新鮮な海鮮料理の数々を堪能することが出来、それはもう大満足のお食事タイムであった。


 思わずオフィールが「やべ、あたしここに住みてえかも……」と素で漏らしたほどだ。


 きっと水の女神さまが近くにいるので、ほかの港町よりも魚たちが生命力に満ち溢れているのだろう。


 ただ最近は近くの海に魔物がよく出没するらしく、漁獲量の方が減少傾向にあるらしい。


 ギルドにも討伐クエストが張り出されているそうなのだが、いかんせん相手が海の中なので、なかなか仕留めることが出来ないのだとか。


 なのでもしあとで時間があったら、クエスト掲示板を覗いてみようと思う。



「さてと」



 ともあれ、上機嫌で昼食を済ませた俺たちは、さっそく手分けして情報収集をすることにした。


 そういえば久しぶりの一人行動だなと思いつつ、俺は道行く人々に人魚の伝説について尋ねてみる。


 だがこれといった収獲はとくになく、よくて昔人魚と恋に落ちた男性がいた的な話くらいしか聞くことは出来なかった。


 もちろんその男性が生きていれば話は別だったのだが、人魚の寿命は人よりも遙かに長いらしく、男性も亡くなっているだろうとのことだった。


 何せ、そのお話をしてくれたのもかなりのおばあちゃんだったからな。


 彼女が若い頃に聞いた話だというから、やはり望み薄だろう。



「うーん、どうしようかなぁ……」



 というわけで、俺は一度宿に戻り、皆と合流しようかどうかを迷っていた。


 そろそろ空も茜色に染まってきたし、もしかしたら誰かが有益な情報を得ているかもしれなかったからだ。


 が。



「――何かお困りごとかしら?」



「えっ?」



 ふいに路地裏の方から声をかけられ、俺はそちらへと視線を向ける。


 そこにいたのは、目元を黒い布で覆い、全身も黒ずくめの若い女性だった。



 ――占い師さんだ。



 どうやらこの狭い路地裏で商売をしているらしい。


 目元が覆われているせいか、口元になんとも言えない色香を感じるが……まあそれは置いておこう。


 なんとなく彼女のことが気になった俺は、誘われるように路地裏へと入っていった。


 スキルの中には〝千里眼〟に近いものもあると聞いたことがあったからな。


 ダメもとで話を聞いてみるのもいいかと思ったのである。



「あー、人魚を捜してるんですけど、何か知ってたりしませんか?」



「人魚……。それは随分と珍しいものを捜しているのね」



「ええ、まあ。ちょっと事情がありまして」



「そう。じゃあちょっと占ってみましょうか」



「あ、お願いします」



 俺が頼むと、女性は目の前にあった水晶玉に両手をかざす。


 すると、水晶玉が淡く輝き始めた。


 何か魔力にでも反応する道具なのだろうか。



「なるほど。あなたは随分モテるようね。多くの女性に囲まれている姿が見えるわ」



「え、いや、あの……」



 あながち間違っちゃいないんだけど、それは人魚に関係あることなのだろうか……。


 そう黄昏れたような表情をしていた俺だったのだが、



「――不死の鳥を囲うのは七人の聖なる乙女」



「――っ!?」



 ふいに女性がそんなことを口にし、俺はぎょっと目を見開く。


 今、なんと言った……?


 不死の鳥と、七人の聖なる乙女……?


 それって俺と聖女たちのことじゃないのか!?


 眉をハの字にしたまま固まる俺に、女性は続ける。



「そのうちの一人がどうやら人魚と関係あるみたいね。ただし一筋縄ではいかないと出ているわ。そしてあなたはもう彼女がどこにいるかを知っている――それが占いの結果よ」



「い、いや、ちょっと待ってください!? 俺はその人がどこにいるかなんて知りませんし、そもそもどうして俺たちのことを知ってるんですか!? もしかして何か千里眼的なスキルを持ってるとか!?」



 捲し立てるように問う俺に、女性はふふっと蠱惑的に笑って言った。



「それは企業秘密よ。でも一つだけあなたに助言をしてあげる。――私の占いを必ず胸の片隅に留めておきなさい。あなたはいずれ七人の乙女たちとともに何か大きな運命に抗うことになるわ。その際に必要なのは七人の乙女の力。いいかしら? 必ず七人揃えるの。分かった?」



「わ、分かりました。言われたとおり胸に留めておきます」



「ふふ、いい子ね。ほら、あなたのお仲間が迎えに来たわよ?」



「えっ?」



 女性の視線を追うように後ろを振り返るも、そこに俺の見知った女子たちの姿はなかった。



「え、あの、誰もいませんけど……って、あれ!?」



 しかも視線を前に戻すと、件の女性の姿すらそこにはなかった。



「え、あれ!? お、お姉さんはいずこに!?」



 きょろきょろと慌てて周囲を見やるも、やはり女性の姿は見当たらず、俺は愕然とする。


 が。



「――お、ここにいたのか。捜したぞ」



「……アルカ?」



 女性の言ったとおり、俺の仲間の一人――アルカがその姿を現したではないか。


 ということは、先ほどまでの話は全部現実……!?



「――っ!?」



 と、そこで俺は気づく。


 彼女は七人の聖なる乙女――つまりは〝聖女〟が俺を囲っていると言った。



 ――そう、〝七人〟である。



 つまり……。


 え、エルマが入ってるじゃねえかあああああああああああああああああああっっ!?


 当然、内心大絶叫の俺なのであった。


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― 新着の感想 ―
[一言] よいではないか
[一言] 今いる聖女の中ではなく、7人の聖女のうちの1人が人魚と関係がある・・・イグザはもうどこに人魚がいるのかを知っている なるほど、つまり人魚は聖女でうら(ry
[良い点] うん途中で気付いた7人目w [一言] 居ればいいなら拘束して猿轡咥えさせようw つかこの占い師も聖女だろw
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