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30 斧の聖女は皆のお母さん?


 翌朝。


 俺たちは昨日アルカの言っていたことを頭に入れつつ、町で盗賊団についての聞き込みを行っていた。


 もちろん襲われた商人たちからは罵詈雑言の嵐であったが、意外にも住民たちからの評価は悪くはなかった。


 というのも、彼女らは強奪した食べものやらなんやらを、別の住民たちにばらまいているというのだ。


 元々貧富の差が激しい町ゆえ、その恩恵で生き延びられている者たちも多いらしい。


 しかしだからといって人のものを盗んでいることに変わりはない。


 まあ恐らくはそうせざるを得ないような理由があるんだろうけど、そこは直接本人に事情を聞きに行くしかあるまい。


 たぶん悪い人じゃないと思うし。


 てか、一応聖女だし。


 ……。


 いや、ごめん。


 いい悪いに聖女は関係なかったわ。


 うちの幼馴染なんか聖女だけど暴君だったし。



「奴隷市場……?」



 ともあれ、聞き込みの中、俺たちはこの町で秘密裏に開催されているという〝奴隷市場〟についての話を耳にしていた。


 奴隷とは、文字通り人権の一切を剥奪された人間のことである。



「ああ、そうさ。どこからか攫ってくるのか、それとも食い扶持に困ったやつらが身内を売るのかは分からねえ。だがここでは日常的に人の売買が行われていてな、それ目当てにやってくるやつらも多いのよ。なんならあんたらにも紹介してやろうか? まあ手間賃はいただくけどな」



「いや、それは遠慮しておくよ」



「そうかい。まあ気が変わったらいつでも言いな」



 軽快に手を振りながら去っていく男の背に、マグメルが杖で殴りかかろうとしていたのはさておき。


 恐らくはこれこそがオフィールの言う〝目に見えない問題〟であろう。


 何故ならその奴隷市場が行われる日には、必ずオフィールたちが会場を襲うらしいからだ。


 盗賊団員に子どもの姿が多かったのも、もしかしたら元々奴隷だった子たちなのかもしれない。



「まったく、なんなんですかあの男は!?」



「まああれはただの仲介屋だからな。それ以降のことに関してはノータッチなのだろうよ」



「にしても酷すぎます! 私、思わず張り倒しそうになってしまいましたもの!」



 うん、知ってる。


 それを羽交い締めにして止めたのは俺だし。



「ふむ、一見すると賑わいのある商業都市のようだが、その実裏では人身売買が盛んに行われている、か。確かに目に見えるものだけが全てではなかったな。もしかすると、昨日の商人たちの話に出てきた〝商売〟とやらも、それを指していたのかもしれんしな」



「……そうだな」



 どうやらこの町の問題は思った以上に根が深そうだ。



「とにかくもう一度オフィールに会いに行ってみよう。話はそれからだ」



「ああ、分かった」「ええ、分かりましたわ」



 揃って頷いてくれた二人を連れ、俺はオフィールの根城があるという砂漠地帯の遺跡を探すことにしたのだった。



      ◇



「……てめえら、何しに来やがった?」



 言葉に殺気を孕ませながら、オフィールが聖斧を向けてくる。


 彼女の後ろにはまだ10にも満たない子どもたちの姿もあり、皆一様に怯えているようだった。


 通常であれば、彼女らの根城を見つけるのにはかなりの時間を有することだろう。



 ――だが俺は飛べるからな。



 なのでとにかく遺跡らしき建造物を見つけては探索を繰り返したのである。


 ともあれ、こう殺気立たれていては話し合いもクソもない。


 ゆえに、あらかじめ決めていたとおり、アルカが食料を掲げて言った。



「まあそう警戒するな、斧の聖女。同じ聖女のよしみとして差し入れを持ってきてやっただけだ。別に毒など入っていないから安心しろ。ついでに言えば尾行もない。ここに来るまでに散々砂漠中を飛んだからな」



「……ふん、まあいいさ。もしそれが嘘だったら全員まとめてぶっ殺すだけの話だからな。――ついてこい。あたしたちの家に案内してやる」



 とりあえず第一接触は成功したらしい。


 交渉をアルカに任せたのは大正解だったようだ。



「それにしても随分と子どもたちから懐かれているようですね」



 ぞろぞろと子どもたちを連れて歩くオフィールの姿に、マグメルが意外だと言わんばかりの表情で言う。


 だが確かに彼女の言うとおり、オフィールは子どもたちからかなり好かれているようだった。


 何せ、遺跡内の子どもたちがオフィールの姿を発見するなり、皆瞳を輝かせて彼女のもとへと向かうのである。


 相当信頼を得ているのだろう。


 その姿はまるで、そう――。



「――なんかお母さんみたいだな」



「――ばっ!? だ、誰がこいつらの母親だ!?」



 その瞬間、オフィールが真っ赤な顔で振り返る。


 意外にも地獄耳だったらしい。


 だが子どもたちには好評だったようで、



「わーい、おかーさーん!」



「オフィールはわたしたちのお母さーん!」



「わーい! わーい!」



「う、うるせえ!? てめえらも調子に乗ってんじゃねえぞ!?」



 大お母さんコールがオフィールを包むのであった。


 ……あれ?


 なんかちょっと可愛く思えてきたぞ……?


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― 新着の感想 ―
[気になる点] まず、奴隷がこの世界で違法か? そういう説明がないと、 読み手によって前提条件が違ってくる。 人さらいは当然、違法だろうけど、 奴隷市場が合法なら、市場を隠れてやる意味がないし。 違法…
[一言] さて、こっからどうするかねえ……
[良い点] 聖女(おかあさん) うん間違ってないなw これがオカンだとちょっと違うw [一言] このあとなんやかんやあって本物のお母さんに「する」んですねw
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