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210 独りぼっちの神さま


 がきんっ! とエリュシオンを弾き飛ばした後、俺は再びやつとぶつかり合いを繰り返しながら声を張り上げる。



「あんたにはいくらでも勝てるチャンスがあった! 聖者たちにしろ魔族たちにしろ、あんたのために命をなげうってくれそうなやつらがたくさんいたんだからな!」



「だからやつらに縋れと? 俺よりもあきらかに力の劣る弱者どもに」



「ああ、そうだ! 確かにあんたは誰よりも強かったんだろうよ! けどな、シャンガルラは死んでもなお〝絶対に負けない〟っていう意地が残っていたし、ボレイオスもその強靱な精神力でフィーニスさまの力を抑え込んでいた! 直接戦った俺たちからすれば、ほかのやつらだって決して〝弱者〟なんかじゃなかった!」



「だが結局誰も俺にはついてこられなかった。それはやつらが〝弱かった〟からだ」



 違うッ! と俺は力強く否定して続ける。



「あいつらがあんたについてこられなかったんじゃない! あんたがあいつらを〝ついてこさせなかった〟んだ! 勝手に使い捨てておいて被害者面してんじゃねえよ、この傲慢野郎! ――ティルナ!」



「うん!」



 ――ごごうっ!



 大きく振りかぶったティルナの右拳に、究極にまで凝縮させた浄化の炎が集う。


 そして。



「――グランドプロメテウスフルバーストッッ!!」



 どごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!! と幻想形態のシャンガルラを浄化した極大の一撃が放たれる。


 が。



「調子に乗るなッ!」



 ――ずばあああああああああああああああああああああああああああああんっ!!



 エリュシオンはそれを闘気の斬撃で押し返していく。



「どうした、救世主! 貴様の言う〝絆〟の力とはこんなものか!」



「そう見えてるんならてめえの目は節穴だ、エリュシオン!」



 ――ごうっ!



「ぬっ!?」



 俺の左拳に纏われた〝拳〟の聖神器に、先ほどと同じ閃光が集束する。



「まさか貴様……っ!?」



 そう、〝拳〟の聖神器は左右で一対。


 つまり――。



「二撃揃って全力の――グランドプロメテウスフルバーストだああああああああああああああああああああッッ!!」



 どごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!! と二撃目の《グランドプロメテウスフルバースト》が一撃目と重なり、超極大の一撃となってエリュシオンの斬撃を呑み込む。



「ぐおあああああああああああああああああああああっっ!?」



 そのままやつ自身をも呑み込み、その存在を無に帰したかのように見えたのだが、



 ――どばんっ!



 やつは途中で《グランドプロメテウスフルバースト》の奔流から飛び出し、一直線に雲の上へと翔上がろうとする。


 だが。



「――逃がすわけねえだろッ!」



「――っ!?」



 そこにはすでに進化した〝斧〟の聖神器を握ったオフィールが待ち構えており、何重にも捻りを加え、上から振り下ろすようにトゥルボーさま仕込みの最強武技を叩き込む。



「――グランドテンペストブレイクッッ!!」



 ――ずがあああああああああああああああああああああああああああああんっ!!



「ぐう……っ!? 小娘風情が……ぐおっ!?」



 いくらエリュシオンと言えど、この短期間にこれだけの攻撃を受ければさすがに堪えたらしい。


 オフィールの一撃を避ける余力がなかったのか、なんとか太刀で直撃は防いだものの、やつは黒い羽を撒き散らしながら猛スピードで落ちてくる。



「エルマ!」



「ええ、分かってるわ!」



 そこに追撃をかけるのはエルマだ。


 今さらだが、彼女の得意技は刺突系の武技。


 ゆえにばちばちっと紫電を纏い、エルマが吼える。



「――グランドエクレールバリスタッッ!!」



 ずばんっ! と空にジグザグの軌跡を描きながら、エルマがエリュシオンのもとへと突っ込んでいく。



「――っ!?」



 反射的に太刀で受けようとするエリュシオンだったが、



 ――ばきんっ!



「がはっ!?」



 俺たちの攻撃を幾度も受けたことでついに刀身が耐えきれなくなったらしい。


 エルマの一撃がエリュシオンの太刀を粉々に砕く。


 浄化の炎が効かなかった以上、あの太刀は〝汚れ〟由来の代物ではないはずだ。


 であれば早々の再生は出来ないはず。


 つまり今のやつは――丸腰。



「マグメル!」



「お任せを! ――女神さま方!」



「はい!」「ああ!」「ええ!」「うむ!」「おう!」「ええ……!」



 揃って頷いた六柱全員の力を束ね、五大属性に〝光〟と〝闇〟の二属性を加え、最強の〝無〟属性へと昇華させる。


 そしてマグメルは進化した〝杖〟の聖神器を両手で振りかぶり、集束した全ての力を解き放った。



「――流転する無圏の環! フィニスオルグオリジニアッッ!!」



 ――どばあああああああああああああああああああああああああああああああああんっっ!!



「……う、ぐおあああああああああああああああああああああああああああああああっっ!?」



 当然、疲弊した今のエリュシオンにこの一撃を避けることなど出来るはずもなく、やつの姿は目映い光の中へと消えていったのだった。



      ◇



「……がはっ!? 馬鹿な……っ!? この俺が……っ!?」



 どちゃり、と血の塊を吐きながら、満身創痍のエリュシオンが悔しげに上体を起こそうとする。


 マグメルの一撃によって海を裂き、どこかの大陸まで吹き飛ばされたのだ。



「おのれ……っ」



「……」



 そんなエリュシオンの前へと降り立った俺は、静かにやつを見下ろして言う。



「もうやめておけ、エリュシオン。仲間を全部切り捨てた今のあんたじゃ俺たちには敵わない。よく分かっただろ?」



「ふざけるな……ッ! 俺はまだ負けてなどいない……ッ!」



 ぎりっと血走った眼で殺意を向けてくるエリュシオンに、俺は小さく嘆息して言った。



「そうだな。もしあんたがあいつらと信頼関係を結んで、きちんとその力を信じていれば、もしかしたらカヤさんのことだって見抜けたかもしれない。そうなったら這い蹲っていたのは俺の方だっただろうよ」



 でも現実は違う、と俺は首を横に振って続ける。



「這い蹲っているのはあんたの方だ。負けたんだよ、あんたは」



「黙れッ!」



 どばんっ! とエリュシオンが光弾を放ってくるが、俺はそれを難なく剣で弾き飛ばす。



 ――どごおおおおおおおんっ!



 後ろの方で爆発音が響く中、エリュシオンがぼたぼたと血を滴らせながら立ち上がって言う。



「まだだ……ッ。まだ俺の戦いは終わってなどいない……ッ」



 そして掲げた右手の上に黒色のエネルギーを集束させるが、俺は再びかぶりを振って言った。



「無駄だ。その程度の攻撃じゃ俺たちを倒すことは出来ない。あんただって分かっているはずだ」



「……そうだな。確かにこの程度の一撃では貴様らを殺すことは出来ないだろう……」



 だが! とエリュシオンはそれを背後に向けて全力で投げつけた。



『――なっ!?』



 その遙か先にあったのは――〝町〟だ。



「貴様らは殺せずともあの町の人間どもを皆殺しにすることは出来るッ!」



「ちっ、このクソ野郎がッ!」



 当然、俺たちがそれを止めるべく大地を蹴る中、やつは高笑いを響かせながらこう告げてきたのだった。



「それが貴様らの弱点だッ! せいぜい守るべき人間どもに足を引っ張られているがいいッ!」


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