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《閑話》聖者サイド5:誤算

ここまで読んでくださって本当にありがとうございます!

今年最後の更新となりますので、皆さまどうぞよいお年をお迎えくださいませm(_ _)m


 その少し前のこと。



「これが大陸最大の都――ラストールか。存外早く落ちたな」



 燃え盛るラストールの城下町を遙か上空から見下ろしながら、エリュシオンはつまらなそうにそう独りごちる。


 結局自分が手を下すまでもなくラストールは火の海となった。


〝大国〟と呼ばれるラストールですらこの有り様なのだ。


 ならば世界中の国々が灰燼に帰すのも時間の問題だろう。


 もっとも、とエリュシオンはここから北方にある一つの国を見やって言う。



「ベルクアの方は今も戦線を維持し続けているようだが。確か〝模造品〟が六体ほどいるんだったな。さすがに聖女を模しただけのことはあるということか」



 ベースとなったのが〝弓〟の聖女だったというのも幸いしているのだろう。


 前線を突破する確率が最も高い飛竜種を遠距離から安全に撃ち落とすことが出来るのだ。


 それも多少劣るとはいえ、聖女クラスの一撃を放てる者が六人である。


 元々軍事都市であった守りの堅さに加え、聖女六人分の戦力となれば、ベルクアが今も持ちこたえられ続けているのも頷ける。



「だが裏を返せばその六人……いや、六体こそが守りの要ということだ。あの人形どもさえ排除すればベルクアを落とすのは容易い」



 見た感じ、ラストールの生き残りも皆ベルクアを目指しているようだ。


 ここでやつらを殺すのは簡単だが、それではあまりにも芸がなさ過ぎる。


 ではどうするか。



「ふむ、人形どもを一体ずつ殺していくか」



 そうして徐々に前線を後退させられ、やつらの顔色が希望から絶望へと移り変わっていく様を眺めるのも一興だろう。



「よし、決めた。まずはそうだな、〝アイリス〟と呼ばれていた人形から殺そう。あれが司令塔のようなものだからな」



 そう淡々と告げ、エリュシオンは背に生えていた八枚の黒い翼を翻らせようとする。


 が。



 ――キュイン!



「――っ!?」



 その瞬間、エリュシオンの身体に二度と感じるはずのなかった気配が届き、愕然とそちらを見やる。


 まさかそんなはずはない。


 やつは《絶界》の最奥――《断絶界》へと落としたはずだ。


 あれはたとえ創世の神であろうとも絶対に抜け出せない無限の牢獄。


 その力を一つにまとめ上げたエリュシオンでさえ、あそこから抜け出すことは不可能なのだ。


 そんな奈落の底へと叩き落としてやったはずなのに、何故やつの気配がする。


 いや、やつだけではない。


 やつの気配に隠れるように、六柱の女神どもと七人の聖女どもの気配まで感じる。


 つまり全員が《断絶界》から抜け出してきたのだ。



「そんな馬鹿な!?」



 あり得ないと声を荒らげ、エリュシオンは気配のする方へと全速力で飛ぶ。


 何故戻ってこられた!?


 そうならないよう鳳凰紋章を持つやつの女どもを全員《絶界》内へと引きずり込んでやったというのに!?


 まさか魔族どもが手引きを……っ!?


 いや、そんなことで抜け出せるような場所ならば最初から罠になど選んではいない!


 ならば何かの間違いか?


 ――いいや、違う!


 この次第に強くなっていく気配を間違うはずなどない!


 忌々しいこの気配を!


 幾度となく我が前に立ちはだかってきたこの気配を――間違うはずなどあるものかッ!



「――救世主ううううううううううううううううううううううううううううううッッ!!」



『!』



 どぱああああああああああああああああああああああああああああんっっ!! と互いの剣同士がぶつかり合い、衝撃波がマグリドの大地を大きく揺らす。


 当然、エリュシオンの目の前でにっと笑みを浮かべていたのは、神々しい輝きの装束に身を包んだ一人の青年だった。



「よう、しばらく見ないうちに随分と余裕がなくなったな、エリュシオン」



「貴様……っ」



 そう、二度とまみえるはずのなかった忌むべき救世主――イグザである。


ここまで読んでくださってありがとうございます!

モチベが上がりますので、もし少しでも「面白いかも~」とか「続きが読みたいな~」と思ってくださったのなら、是非広告下の☆☆☆☆☆評価で応援してもらえたら嬉しいですm(_ _)m

よろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[一言] エリュシオン!! 好き勝手やるのもそこまでだァッ!!
[一言] ねぇ?エリュシオン 自信ある策みたいだったけどたった一人の聖女でもないただの少女に全部台無しにされた気分はどう?っと煽りたくなるわな散々振り回されたからなおさら。
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