《聖女パーティー》エルマ視点49:もうちょっとまともに送り出させなさいよ!?
その少し前のこと。
あたしはミノタウロスの里へと旅立つらしい豚と、出発前最後の挨拶を交わしていた。
二人で旅をしていた時はとにかく早くクビにしたいと思っていたはずなのだが、いざこうして離れる時が来ると、正直少しだけ寂しい気持ちになる。
色々と腹の立つこともあったけれど、なんだかんだ言って豚との旅は退屈しなかったしね。
きっと豚も同じような気持ちでいるんじゃないかしら?
……でもしょうがないわよね。
あんたにはあんたの、あたしにはあたしの役割があるわけだし、お互いちょっと寂しいかもしれないけれど、各々の役割を全力で全うしていきましょう。
と、そんなことを思っていたあたしだったのだが、
「いやぁ、寂しくなりますなぁ!」
――そわそわそわそわ。
「……」
いや、いやいやいやいや……。
え、ちょっと待って。
完全にあたしとの思い出がおっぱいに上書きされてるんだけど、一人しんみりともの寂しさを覚えていたあたし馬鹿みたいじゃない?
なんかすんごい腹立ってきたんだけど。
「そ、そうね、寂しくなるわね……」
だがあたしは努めて冷静に微笑みを浮かべる。
ここであたしが感情任せに声を荒らげてしまったら、あたしだけちょっと寂しがっていたことが豚に露呈してしまうからだ。
そうなってしまったら調子のいい豚のこと――きっと自分に惚れていると勘違いするに決まっている。
だからあたしは様々な思いをぐっと堪えてそう言ったのだが、
「ええ、本当に寂しくなります。オフィールさまやマグメルさまをはじめ、テラさまにシヌスさま、シヴァさまにアルカディアさま、イグニフェルさま、トゥルボーさま、フィーニスさまにフルガさま、ザナさま、ティルナさま、そして何より聖女さまにはとてもお世話になりぶっふう!?」
やっぱり我慢出来ませんでした。
近くにあった枕を渾身の力で投擲した後、あたしは豚に声を荒らげたのだった。
「どさくさに紛れて乳のデカさ順に並べてんじゃないわよ、この豚!? しばかれたいわけ!?」
「も、もうしばかれてます……げふっ」
おかげでびくんびくんとすでに行く前から瀕死状態の豚なのであった。
まったく失礼しちゃうわ!
◇
ともあれ、豚はまあいいとしてだ。
問題はこっちである。
「嫌じゃ~!? わし、このお胸から離れとうない~!?」
そう、ティルナの胸元で泣き喚いているナザリィである。
豚とともに巨乳の園送りになった彼女だったが、やはり直前になって駄々をこね始めたのだ。
が、まあ彼女の気持ちも分からなくはない。
たとえるなら竜の軍勢にトカゲが単身で突っ込むようなものである。
恐怖しかないだろう。
だが里の復興に彼女の力は必要不可欠。
というより、豚の暴走を止められるのは幼馴染である彼女しかいない。
ゆえにあたしは「大丈夫よ」と微笑んで言ったのだった。
「あんたにはあたしたちがついてるわ。不安な時はあたしたちのことを思い出しなさいな」
「お、おお、さすがはインフィニットゼロ……。我らの希望よ……」
「いや、誰が〝無乳〟よ!? あんたもしばかれたいの!?」
というか、〝無〟じゃないわよ!?
〝微〟くらいはあるわよ!?
そして自分で言ってて悲しくなってきたからさっさと行きなさいよもう!?
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