《聖女パーティー》エルマ視点5:いや、なんで使命感を出しちゃったのよ……。
あたしは人知れず頭を抱えていた。
まさかこんなことになろうとは予想だにしていなかったからだ。
話は少々前へと遡る。
火山島マグリド以降の消息を掴めなくなったドラゴンスレイヤーの代わりに、あたしはヒノカミさまの御使いなる人物を捜すため、船でラスコラルタ大陸へと渡ろうとしていた。
ただマグリドから直接航路が繋がっていなかったため、あたしたちは一度港町ハーゲイへと戻り、そこからラスコラルタ大陸を目指すことにしたのだが、ここで一つ大きな問題があった。
――そう、あの豚男こと荷物持ちの処遇をどうするかである。
雇った当初はイグザがいなくなった直後のことだったので、そっちの方にばかり意識が向き、豚男のことなどまったく気にも留めていなかった。
が、時間が経てば経つほどに、あの男の暑苦しくて無神経な部分が目につくようになってきたのである。
聖女のあたしを差し置いて一人だけ水分補給するわ、聖女が足を使って聞き込みをしてるのに宿でへばってるわ、とにかく尋常じゃない汗を掻くわ、イビキはうるさいわ、足は臭いわ、鼻毛は出てるわでもう限界である。
幸い、ヒノカミさまの御使いとやらは遠くの大陸へと行ってしまったので、あたしはそれを理由に彼を解任しようと考えていた。
というわけで、ハーゲイに戻ったあたしはその旨を彼に伝えた。
これから先の旅路はいつ故郷に帰してあげられるかも分からないので、現地の荷物持ちを雇うことにしようと思う、と。
するとどうだ。
こともあろうに、あの豚男はこう答えやがったではないか。
「いえ、私は聖女さまの気高き理想とその慈しみの心に深く感銘を受けました。ゆえにこのポルコ、世界の果てまでお供させていただきます!」
……はっ?
いやいやいやいや!?
なんでそこで変な使命感を出しちゃってんのよ!?
あたしはあんたをクビにしたくて堪らないって言ってんの!?
ちょっとは空気読みなさいよね!?
てか、あんた〝ポルコ〟って名前だったわけ!?
ぶっちゃけ今知ったんですけど!?
当然、あたしは彼の言う慈しみの心を全開にした感じの体で言った。
「いえ、ですがあなたにはお帰りを待つご家族がいらっしゃったはず。きっと今もその身を案じていることでしょう」
だから今すぐ荷物をまとめてさっさと帰りなさいよね! と。
――そして現在。
「いやぁ、やっぱり船旅はいいですなぁ」
「そ、そうですね」
はい、帰りませんでした。
普通にあたしの隣で船旅を満喫してます。
もうあれだわ。
ちょっとマジで不慮の事故的なのを考えようかしら……。
はあ……。
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