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129 作戦会議


 ともあれ、なんとかエルマを落ち着かせた俺たちは、アガルタに関しての報告などをしようとしていたのだが、



 ――ぼよよんっ。



「なあ、それすっごい気になるんだけど……」



「うるさいわね。ほっといて」



 不自然に巨乳化しているエルマの姿に、若干困惑していた。


 なんでもトゥルボーさまから授かった風の防御壁らしいのだが、何故このタイミングで発動させる必要があったのだろうか。


 いや、まあ先ほどの騒動が胸の話題に起因している以上、エルマなりの抗議活動なのかもしれないが……。


 てか、それ以前にどういう防御壁なの、それ……。


 幼い頃からエルマの胸事情を知っている俺からすると、もの凄い違和感なんだけど……。


 ぷいっとそっぽを向いているエルマに小さく嘆息しつつ、俺は気を取り直して言う。



「とにかくこれで残りは〝斧〟の聖者――ボレイオスただ一人になったわけだけど、やつの移動速度を考えると、フェニックスフォームに皆を乗せて行っても十分に間に合うと思う。そうですよね? シヴァさん」



「ええ、大丈夫だと思うわ。そもそもミノタウロスの里はとある孤島の地下深くにあるし、彼の遊泳速度も大したレベルじゃないしね。まああれを〝泳いでいる〟と言うのはどうかと思うけど」



「そんなに凄い泳ぎ方なの?」



 何やら興味がありそうなティルナ(お腹ぷにぷに中)に、シヴァさんは「そうね。確かに凄いわ」と肩を竦めて言った。



「だって〝海底を走っている〟んだもの。それも陸上とほぼ同じくらいのスピードでね」



「!」



 うん、そりゃ確かにすげえわ。


 でもたぶんそれ、〝泳ぎ〟じゃないと思うなぁ……。


 俺が内心そんなことを考えていると、ザナが「なるほど」と頷いて言った。



「つまり場合によっては水中戦も可能ということかしら? それならこちらが大分有利になると思うのだけれど」



「そうね。状況次第ではそれもありだと思うわ。わざわざ相手と同じ土俵で戦う必要はないしね」



「ふむ。ならばティルナの《スペリオルアームズ》で水中戦を仕掛け、やつを行動不能にした後、オフィールが聖具で神器を浄化する――これが現状もっとも安全かつ有効な手段だと思うのだがどうだろうか?」



 アルカの提案に、女子たちが次々に妥当だと頷く。


 最中、この作戦に異議を唱える者たちがいた。



「ちょ、ちょっと待ちやがれ!? それじゃあたしの出番がねえじゃねえか!?」



「そ、そうです!? 水中の移動でしたら私も出来ますし、ここはさらに安全策ということで、私の《スペリオルアームズ》で遠距離攻撃をするのがベストかと!?」



 そう、オフィールとマグメルである。


 今までは時間の都合上、最低限の人数で攻略に当たっていたからな。


 その制限がなくなったとなれば、より安全性の高い作戦に切り替えるのも致し方ないとは思うのだが……。



「でもマグメルの移動術はそこまで速いわけじゃないし、牛さんが陸上と同じ速度で走っているのなら、大規模な遠距離攻撃は避けられる可能性がある。その際の視認性も決していいとは言えない。というわけで、やっぱりわたしが妥当」



「うぐっ……」



 えっへん、とその小振りなお胸を張るティルナに、マグメルがぐぬぬと唇を噛み締める。


 だが一番納得がいってなかったのは、同じ《冥斧》のレアスキル持ちにもかかわらず、話題にすら上がっていなかったオフィールだった。



「お、おい、じゃああたしはどうなんだよ!?」



「オフィールはそもそも水中で戦う意味がない。あなたの力は陸上でこそ最大限に発揮されるから。攻撃力も一番高いし」



「お、おう。まあな」



 へへっとオフィールが嬉しそうに鼻を掻く。



「いや、まんざらでもない顔してるけど、普通に作戦からは外されてるからね? あんた」



「んなっ!?」



 エルマの突っ込みに、オフィールはびくりとショックを受けていたのであった。



      ◇



 その頃。


 フルガに続いてテラまでをも取り込んだフィーニスは、彼女たちの力で一層鋭くなった感覚を研ぎ澄まし、世界中の気配を探っていた。


 捜すのはもちろん〝剣〟と〝盾〟の聖者たちだ。


〝盾〟はまだしも、何故〝剣〟の聖者まで気配が消えたのかは分からないが、まあそれはいい。


 彼の代わりとなる者……いや、〝者たち〟はすでに見つけているのだから。


 と。



「あら……? あらあら……?」



 その時、フィーニスはふと違和感を覚える。


 微弱だが、北の町にある気配が一つ増えている気がしたのだ。



「うふふ、やっぱりそこにいたのね……」



 そう嬉しそうに笑い、フィーニスはずずずと足元の黒いもやにその身体を沈めていったのだった。


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