125 ドラゴンズアタック
――どばああああああああああああああああああああああああああああんっっ!!
ブレス同士の激突で大爆発が巻き起こる中、俺たちは稲妻を纏い、大空をジグザグに翔る。
「「――グランドエクレールバリスタッッ!!」」
そして超高速でアガルタの背後へと回り込んだ俺たちは、そのままやつの背に紫電の一撃を叩き込もうとしたのだが、
――びゅっ!
「「――っ!?」」
まるで背中に目でもあるのかと言わんばかりのタイミングで躱されてしまう。
しかも。
「グオアッ!」
躱すと同時にやつは身体を捻り、尾が強靱な鞭となって俺たちを襲った。
――ずがんっ!
「「ぐわあっ!?」」
瞬間的にランスでこれを受けるも、その威力は半端なく、俺たちは凄まじい速度で地面へと叩き落とされる。
「イグザ!」
「分かってる!」
どばんっ! と地面に激突する寸前で背の翼を全開にし、なんとか勢いを殺すことに成功した俺たちだったのだが、
「「――グガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」
――どごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおんっっ!!
「「――なっ!?」」
間髪を入れずにやつらがブレスを重ねてきて、これはさすがに避けきれないと防御姿勢をとる。
が。
「――グランドフルペンタゴン!」
――ずがああああああああああああああああああああああああああああんっっ!!
「「!」」
直前でシヴァさんの五重盾が俺たちを守り、螺旋を描いていた同時ブレスを完全に遮断する。
「グルゥ……ッ」
まさか防がれるとは思っていなかったのだろう。
アガルタは口惜しそうに喉を鳴らしていた。
「すみません、助かりました!」
「うむ、感謝する」
「別に構わないわ。それより気をつけなさい。どうやらアガルタは隷属させた者の視界を〝共有〟出来るみたいだから」
「視界を共有……。なるほど、そういうことか」
「ああ。どうりで我らの一撃が躱されたわけだ。別の場所から見ていたのなら当然だ」
しかも無防備を装って俺たちに攻撃を仕掛けさせたのだ。
黒人形化されている割には随分と頭が回るらしい。
だがそういうことならこちらにも考えがある。
「つまり分身しているのと同じってことだな?」
「ああ、平たく言えばそんなところだ。となれば、自ずと攻略法も見えてくる」
「あら、そうなの?」
驚いたような顔をするシヴァさんに、俺は大きく頷いて言った。
「ええ、もちろんです。敵が二体いるのなら――〝同時に倒せばいい〟だけのことですからね」
「うむ、そのとおりだ」
俺たちの攻略法に、シヴァさんは一瞬呆けたような顔をしたかと思うと、ふふっとおかしそうに笑って言ったのだった。
「ならせいぜい期待させてもらいましょうかしら。何せ、あなたの《スペリオルアームズ》は〝最強〟だって言うし。ねえ? アルカディア」
「当然だ。その些か見えすぎる眼でよく見ているがいい――我らが〝槍〟の真髄をな」
◇
「「グルルルル……ッ」」
再び空へと戻った俺たちを、当然のようにアガルタたちが挟み込み、ゆっくりとその周囲を回り始める。
一瞬でも隙を見せれば、やつらは容赦なく襲いかかってくることだろう。
それも同時にだ。
ならば俺たちの執る手段はこれしかあるまい。
「「――っ!?」」
すっと両手でランスを掲げた俺たちに、アガルタたちが目を丸くする。
一体何をする気なのか、訝しんでいるのだろう。
十分に困惑するといいさ。
どれだけ悩んだところで、答えなんか出やしないんだからな。
「ほら、どうした? 隙だらけだぞ? かかってこないのか?」
安い挑発だと自分でも思う。
だがやつらなら必ず乗ると俺は踏んでいた。
何故なら、
「「――グオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」」
――どごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおんっっ!!
やつらには俺たちが〝一人〟にしか見えていなかったからだ。
数で勝り、戦況でも勝る――ならばたとえ安い挑発だろうと力でねじ伏せればいい。
そうやつらは考えているはずだ。
でもな――。
がきんっ! とランスが二本に分離――いや、分裂する。
「「――ガッ!?」」
「悪いな! 俺たちは二人で一人なんだよ!」
「うむ! ゆえにその力も武具も全てが融合しているのだ!」
ならば聖槍をアマテラスオーブで双剣化させることなど朝飯前だ。
「「――グランドテンペストバリスタッッ!!」」
どばんっ! と遠心力を最大にして放たれたランスの投擲が、螺旋状に空を裂き、双方のブレスをものともせず一直線に飛んでいく。
そして。
――ずぐしゃっ!
「「グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!?」」
ほぼ同時にアガルタたちの身体へと、鮮血を撒き散らしながら食い込んだのだった。




