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120 イケメン汗っかきおデブ


「ふふ、どうやら皆さん驚きのあまり声も出ないようですな。そうでしょうとも。自分で言うのもなんですが、なかなかにいい男ですからな」



 ふっとポルコさんが自信に満ちた顔で笑みを浮かべる。


 が、もちろん皆が言葉を失っているのはそんな理由からではない。



「いや、いい男うんぬん以前になんも変わってないじゃない!?」



「えっ!?」



 そう、思わず猫被りを忘れているエルマの突っ込み通り、変身解除前との変化がまったく分からなかったからだ。



「な、何を仰っているのですか!? 全然違うでしょう!?」



 しかしポルコさんの中ではきちんと変わっているようで、彼は必死にその違いを説明してくる。



「まずは耳がちょっと尖りました! ほら!」



 ずいっと耳元を見せつけてくるポルコさんの耳は、確かに少しだけ形が鋭角になっていた。



「そして手足が少し短くなり、お腹も立派になりました!」



 ――ぽんっ。



 ポルコさんがどやぁと言わんばかりの表情で相変わらずぷよぷよのお腹を叩く。


 まあ確かに言われてみれば、先ほどよりもさらにずんぐりむっくりしたような気がするのだが……。



「いや、だからなんだって言うのよ!? 単に太っただけじゃない!? 何をどや顔でイケメン面してんのよ、あんた!?」



「い、イケメンじゃないですか!? 私たちドワーフの間では、より体格のよい者がいい男の条件なんですから!?」



「ドワーフ基準なんて知らないわよ!? 言っておくけど、あたしたちから見たらあんたはただの汗っかきおデブでしかないんだからね!?」



「ええっ!?」



 びくり、とすこぶるショックを受けている様子のポルコさんだったが、彼にもイケメンの意地があったようで、だばだばとマグメルに詰め寄って言った。



「そ、そんなことありませんよね、女神さま!? 私、結構いい男ですよね!?」



「え、えっと……」



 むふぅー、と鼻息荒く問い質すポルコさんの顔には、エルマの言うように大量の汗が浮かんでおり、どう見ても汗っかきおデブであった。



「やめなさい、暑苦しい!」



 ――ぐいっ。



「ふぎゅうっ!? あ、あの、なんか先ほどから私の知ってる聖女さまと違うのですが!?」



「うるさいわね! あたしは最初っからこんな感じよ!」



「ひいっ!?」



 ずるずるとエルマに引きずられていったポルコさんは、彼女の変貌ぶりと人間基準ではイケメンじゃなかったことに、それはもう大層ショックを受けていたのであった。



      ◇



 その後、消沈してしまったポルコさんのフォローをマグメルたちに任せ、俺はアルカとシヴァさんを連れ、三度黒人形化された聖者のあとを追っていた。


 本当はエルマを守るに至った経緯などを詳しく聞きたかったのだが、今は亜人が滅ぼされるかもしれない危機の真っ只中である。


 ゆえに残りの話に関しては、とりあえず〝槍〟の聖者――アガルタの浄化後ということになったのだ。



「しかしイケメンにも色々と種類があるんだな……。まあ種族が違えば、そりゃイケメンの基準も違ってくるんだろうけど……」



「そうだな。自然界でも角などが立派なやつがモテたりするのだ。ならば腹の立派なやつがモテてもおかしくはないだろうさ」



「そ、そうなんだろうか……」



 そう言われると、なんかおかしく思えてくるから不思議である。



「でもドワーフの亜人ってことは、ナザリィさんの知り合いだったりするのかな?」



「その可能性はあるだろうな。だが〝盾〟というのは、ほかのレアスキル持ちとは少々違うのだろう?」



 アルカの問いに、シヴァさんは「そうね」と頷いて言った。



「前にも言ったと思うけれど、〝盾〟はほかのレアスキル持ちよりも強い使命感と力を与えられて生まれてくるわ。ゆえにその存在を大っぴらに知られるわけにはいかない。だからもしかしたらだけれど、そのナザリィさんとやらは彼が〝盾〟であることを知らないのかもしれないわね」



「なるほど」



 確かにナザリィさんなら普通に伝えてきそうだしな。


 たぶん族長さんなどの一部の人しか知らないのだろう。



「しかしあれがドワーフのモテる男ということは、ナザリィもああいうタイプが好みなのかもしれんな。まあその真逆と言ってもいいヘスペリオスに魅了されていたわけだが」



「まああの魅了は一種の催眠みたいなものだからね……。ただ一つ疑問なのは、里を見た感じだと、恐らくナザリィさんみたいな小柄で痩せ型の女性がドワーフの美人だと思うんだけど、それに近いのはティルナだと思うんだよ。なのにマグメルに猛アタックしてるのは一体なんでなんだろうな?」



 俺がそう小首を傾げていると、アルカが「ふむ……」と思案した後、真顔でこう言った。



「恐らくあの男はブサイクな女が好きなのだろう。いわゆる〝B専〟というやつだ」



「えぇ……」



 当然、俺は一人なんなのそれと顔を引き攣らせていたのだった。


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