《聖女パーティー》エルマ視点38:もうあんたがあたしのママでいいわよ……。
「……うん? ひいっ!? だ、誰ですかあなたは!? 何故私に抱擁を!? 私にその気はありませんよ!?」
「いや、俺にもないですよ!? 何言ってるんですか!?」
「……」
何やらわちゃわちゃしている様子の豚とイグザを、あたしは力ない眼差しで見据える。
そういえば、戻ってきてたんだっけか……。
それはお疲れさまだったわね……。
そしてあんたはいつの間に起きたのよ、豚……。
はあ……、と嘆息するあたしの脳裏には、未だに先ほどの光景が焼きつき続けていた。
てか、なんなのよ、あの女神……。
いきなり目の前に現れるわ、まばたき一つせずに怖い顔を近づけてくるわで、もう動きが完全におばけじゃない……。
でも正直すっごい怖かった……。
冗談抜きでおしっこを漏らしそうになったもの……。
そこは最後の意地でなんとか耐えたけれど、もし漏らしてたらと思うとぞっとするわ……。
まあ豚は変態だから喜ぶでしょうけどね……。
「……はあ」
それにしてもイグザたちはあんなのと戦ってるの……?
え、メンタル強すぎじゃない……?
どんだけ成長してんのよ、まったく……。
あたしなんか二度と会いたくないんですけど……。
でも〝背中を預ける〟って言っちゃった以上、またあの女神と会うのは確定済みだし……。
はあ……、と陰鬱な顔で何度目かも分からないため息を吐いていたあたしだったが、そこでふと先ほどからずっと側にいてくれたティルナに視線を送る。
「よしよし」
彼女は相変わらず母親のようにあたしの頭を優しく撫で続けてくれていた。
ぶっちゃけ心が折れそうだったのでありがたい限りである。
確かこういうのをなんて言うんだっけ?
年下の子に母性を感じる的なやつ。
バブみ……?
よく分かんないけど、あたしは今それを心から感じてるわ……。
もうあんたあたしのママになりなさいよって感じだし。
「……あんた、優しいわね」
だからあたしはそう素直な気持ちを伝える。
すると、ティルナは「もちろん」と頷いて言った。
「――だってわたしは皆のお姉さんだから」
「そうよね……。あんたは優しい皆のお姉さん……って、お姉さん!?」
がばっとあたしはティルナを二度見する。
そうだったわよ!?
この子、人魚のハーフだからあたしより年上なんじゃない!?
じゃあバブみじゃないでしょ!?
いや、でも外見は完全に年下だし、バブみなんじゃないの!?
てか、そもそも〝バブみ〟ってなんなのよ!?
冷静に考えてみたら普通に気持ち悪い類の単語じゃない!?
そしてそれをがっつり感じてるあたしもなんなの!?
もうやだぁ~!? とあたしは一人頭を抱えていたのだった。
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