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113 ダークハイエルフ


「くっ、これはさすがにキツいわね……っ」



 苦しそうなのは防御壁を張っていたシヴァさんも同じで、必死に余裕の笑みを浮かべようとしていた。



「これは……皆の生命力を吸い取っているのか?」



「みたいね。私たちは辛うじて耐えられているみたいだけれど、それでも力を吸われていることに変わりはないわ」



 確かに先ほどまでの力強さを感じなくなっている気がする。


 このまま吸われ続ければ、いずれ俺たちも動けなくなってしまうことだろう。


 その前に早く《スペリオルアームズ》を発動させなければ。


 俺がそう焦燥を覚えていると、負傷したエルフたちのもとにいた件の女性が、信じられないといった表情で口を開いた。



「まさか忌み子であるカナンがハイエルフにしか許されない〝マナアブソーブ〟を使用するとは……。創世の女神たちよ、一体これはなんの悪夢なのですか……」



「絶望しているところに悪いのだけれど、出来ればダーリンたちにその〝マナアブソーブ〟だかについて説明してもらえないかしら……っ? これ以上は私も保たないし……っ」



 ばきんっ! と盾術を綻ばせながら言うシヴァさんに、女性もはっと正気を取り戻したようで、「も、申し訳ありません……」と説明してくれる。



「我々エルフには異端種であるダークエルフのほかに、〝女神の寵愛を受けし者〟と呼ばれる最高位のエルフ――〝ハイエルフ〟が存在します。これはダークエルフのような生まれつきのものではなく、長き修練を積んだ末に到達する境地のようなもので、我らエルフの歴史の中でも、始祖エフェルミルさまただお一人しか確認されておりません」



「なるほど。その尊敬する始祖さましか使うことが出来なかったはずの術を、異端種であるダークエルフが使った。そりゃ気が気でないわよね」



 ザナの言葉に、女性は力なく頷く。



「はい、仰るとおりです……。我々も伝え聞いただけなので実際に目にしたわけではないのですが、元来は周囲の生きとし生けるものたちから少しずつ力を借りる術であり、このように無作為に命を搾取するものではないはずなのです……」



 なるほど。


 そのタガを神器が外し、皆から必要以上のエネルギーを吸収しているというわけか。



「ないとは聞いていたけれど、恐らくはこれが彼の〝幻想形態〟でしょうね。まあ確かに神器で黒人形にされた以上、〝女神の寵愛を受けし者〟というのはあながち間違いではないのだけれど」



「そうだな。言ってみれば、ハイダークエルフ……いや、状況的には〝ダークハイエルフ〟とでも呼んだ方が的確か。どちらにせよ、厄介な相手であることに変わりはないな」



「そうね。だからこそ私たちも力を一つに合わせましょう」



 頷き、ザナが手のひらを見せるように左手を差し出してくる。



「ああ。一緒に行こう、ザナ」



 なので俺も彼女と手を合わせるように右手を差し出し、そして互いに指を折り曲げて繋ぎ合う。


 その瞬間、俺たちを包む輝きが一層の強さを増し、ザナの下腹部に刻まれたフェニックスシールから出でた炎が彼女を包み込む。



 ――ごごうっ!



 それはやがて繋いでいた手から俺へと伝わり、強靱な一張の弓となってスザクフォームの新たなる可能性を開いた。



「「聖女武装――スザクフォームスペリオルアームズ!!」」



 どぱんっ! とマナアブソーブの呪縛を弾き飛ばしながら変身した俺たちに、カナンもまた雄叫びを上げる。



「ウグオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」



 すると、力を取り込んだことで肥大化しつつあったやつの身体に変化が訪れる。


 ぎゅるり、と再び身体が縮んでいき、カナン本来の肉体が露出したのだ。



「グルゥ……ッ」



 だがやはり意識は彼のものではなく、どうやら外に溢れていた力を内側に凝縮したらしい。


 その証拠に、カナンの背には何か翼のような金属塊らしきものが備わっており、服装も上半身は裸だが、節々に装甲のようなものが纏われていた。


 恐らくはスザクフォームと同じ戦闘フォームの一種だろう。


 エルフの始祖――エフェルミルさまがこれを使ったかどうかは分からないが、ダークエルフよりもさらに上の段階へと昇華したのは確かだった。


 が、そんなものに敗れるような俺たちではない。



「行くぞ、ザナ! 俺たちの力を見せてやろうぜ!」



「ええ、了解よ!」



 ばちばちっ! と峻烈の輝きを放つ光の矢を構え、俺たちはカナンとの最終決戦へと臨んだのだった。


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