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11 槍の聖女


 以前、聞いたことがある。


 この世界には通常のスキルよりも強力で、特別な力を持ったレアスキルが存在すると。


 すなわち《剣聖(けんせい)》《神槍(しんそう)》《天弓(てんきゅう)》《冥斧(めいふ)》《無杖(むじょう)》《皇拳(おうけん)》《宝盾(ほうじゅん)》の七スキルだ。


 これらを持つ者は、女神さまによって選ばれたバランサーとも言われており、守り手としての運命を担う立場にあるのだとか。


 もちろん俺の幼馴染――聖女エルマもその一人である。


 彼女は《剣聖》のスキルを持ち、古の賢者によって鍛えられた〝聖剣〟の使い手だ。


 当然、賢者の武具は同じく七つ存在し、対応するスキルを持つ者のみがこれらを扱えるようになっているという。


 男がそれを手にすれば〝聖者〟と、女がそれを手にすれば〝聖女〟と呼ばれ、人々は彼らを希望の象徴として讃える。


 だから同じ時代に〝聖〟の名を冠する者同士が存在したとしても、なんらおかしくはないのだが、それはつまりそれだけ強大な魔の力が世に蔓延っているということでもあるのだ。


 そんな聖女の一人にがっつり絶縁状を叩きつけたのが俺なわけだが、まさかこんなところで別の聖女に出会うことになろうとは……。


 もしかして俺って〝聖女〟という存在に縁があるんじゃなかろうか……。



「す、凄かったですね……」



 ともあれ、呆然と目をぱちくりさせるフィオちゃんの言うとおり、確かに凄まじい試合だった。


 武神祭ゆえ、自慢の聖槍は使っていないはずなのだが、それでも件の聖女――アルカディアの力は圧倒的だった。


 相手の男性も決して弱かったわけではない。


 彼の使っていたモーニングスターも、この日のために用意された至高の一品だったはずだ。


 なのにアルカディアは、それを真正面から打ち砕いた。


 刺突の一撃で男性を壁際まで吹き飛ばしたのである。


 モーニングスターは言わずもがな、よほど刺突の威力が凄まじかったのか、男性の身につけていた鎧も粉々に砕かれていた。


 さすがは《神槍》のスキルを持つ聖女。


 圧倒的な力の持ち主である。



「……」



 試合を終え、アルカディアが悠然と踵を返し始める。


 相変わらず氷のような雰囲気を持つ女性だ。


 たぶん年齢は俺と同じくらいだろう。



「!」



 その時、一瞬だけ彼女がこちらを見た気がして、俺も少々身構える。


 もしかして意識されているのだろうか。


 出来れば聖女とはあまり関わり合いを持ちたくないのだが、たぶんこのままだと決勝でぶつかりそうなんだよね……。


 だって次準決勝だし……。



      ◇



 俺の予想通り、アルカディアは圧倒的な力で決勝に勝ち残った。


 当然、俺も今し方準決勝の相手を斬り伏せ、残すところは明日の決勝だけである。


 やっぱりというか、大方の予想はしていたのだが、アルカディアの使っている武器を作ったのは、先日レイアさんのお店に現れた柄の悪い男たちのいるガンフリート商会だった。


 色々と黒い噂のある商会だとレイアさんからは聞いたのだが、何故聖女であるアルカディアがそんな場所の代表になったのだろうか。


 その理由はまったく以て分からないのだが、相手は目的のためなら手段を選ばないようなやつらである。


 決勝まで残った俺たちを、このまま見過ごすはずはないだろう。


 だって。



 ――ぷすっ。



「……」



 ――ぷすっ。



「……」



 ――ぷすっ。



 さっきからなんかぷすぷす首元に飛んできてるしね……。


 これ絶対毒針かなんかだと思うんだけど、俺不死身だから効かないっていう……。


 いや、正確には若干効いてるんだけど、すぐさま回復するから基本的には意味がないというかなんというか……。


 せめて夕食後の団らんくらい静かにして欲しいものである。



「えへへ、明日の決勝頑張ってくださいねっ」



「うん、ありがとう。フィオちゃんたちのために絶対優勝してくるから応援よろしくね」



「はい、もちろんです!」



 にんまり笑うフィオちゃんの頭を撫でつつ、俺は通りに面した建物群の暗がりをちらりと見やる。


 それにしてもいっぱいいるなぁ……。


 そんなに俺たちの存在が邪魔なのだろうか。


 だがさすがにこれだけうようよしていれば、レイアさんも気づいたらしい。


 フィオちゃんを自分の方に寄せ、小声で言った。



「どうするんだい? あいつら、完全にあたしたちをやるつもりだよ」



「というより、俺を、でしょうね。あの人たちの目的は、あくまで武神祭の場で俺……いや、レイアさんの武器を倒すことですからね。たぶん殺しはしないと思います」



 毒はばんばんぶち込んできてるけど。



「そうはいうけどさ……」



「ええ、人質にされる可能性はかなり高いです。なので、ちょっと分からせてこようと思います」



「……大丈夫なのかい?」



「イグザさん……」



 心配そうな顔をする二人に、俺はにこりと微笑みながら頷いた。



「大丈夫。すぐに戻ってきますから、お二人はここで待っていてください。近いところにいるやつらから片っ端に片づけていくんで!」



 そう告げ、俺は地を蹴って近くの陰に隠れていた男に肉薄する。



「――がっ!?」



 と同時に壁を蹴り、別の場所にいた男たちをも一撃で昏倒させていく。


 そうしてフィオちゃんたちを中心に、何人も意識を奪っていった俺だったが、途中でふと違和感を覚え、足を止める。


 というのも、俺が倒した覚えのない者たちまで、いつの間にやら地に伏していたからだ。


 まさかと思い、俺はまだ気配のする方へと急いで駆ける。



「――ぐげっ!?」



 するとある建物の屋上で、今まさに男が倒されている最中だった。



「君は……」



 そしてそこにいたのは、流れるような銀の髪を風に揺らす一人の女性だった。



「――思ったよりも早かったな」



 そう、槍の聖女――アルカディアである。



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