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90 魔物の女王


〝戦争編〟という言葉に俺たちが揃って固唾を呑み込む中、フルガさまは祭壇で胡座を掻いたまま語り始める。



「人と亜人、そして魔物を生み出した創世の女神たちだったが、やはり問題になったのは魔物による他種族への攻撃だ。そりゃ魔物を全部ぶっ殺せばいいだけの話なんだが、やつらはフィー二スのガキどもな上、周囲の〝汚れ〟を取り込む役割も担ってたからな。ことはそう単純なものじゃなかった」



「ふむ。そういえばイグザがテラさまを浄化した際、〝汚れ〟の泥から魔物が生まれる光景を目にしたのだが、もしかしてフィー二スさまは〝汚れ〟から新たな生命を生み出そうとしたのか?」



 アルカの問いに、フルガさまは大きく頷く。



「ああ、そうだ。〝汚れ〟に関しては女神の間でも問題になっててな。なんとかこれの広がりを抑え込み、かつ浄化して生命のサイクルに組み込めないかと考えられていた。そこでフィー二スが〝汚れ〟から魔物を創ったってわけだ」



「でも〝汚れ〟は生きとし生けるものの生み出す負のエネルギーだったはず。そんなものを使って大丈夫だったの?」



 ティルナの疑問は至極真っ当なものだった。


 そんなものを材料にしたのであれば、フィー二スさまのお力以前の問題に思えるのだが。



「まあそりゃ大丈夫なはずないわな。おかげで魔物は凶暴極まりなくなった。負のエネルギーの塊なんだから当たり前だ。そうして〝汚れ〟を取り込みまくって成長した、獰猛で手のつけられないやつらがわんさか溢れちまったってわけだ」



「皮肉な話ね。元々は善意で生み出された者たちだったのに」



「まあ仕方ねえだろ。ってなるとあれか? 魔物の討伐が過激化して、ぶち切れた女神さまが敵に回った的な感じか?」



「ああ、大体そんなところだ。だがその前に女神たちはなんとかこれを静めるべく、人と亜人のために浄化のための武具を創った。それがお前たちが〝聖神器〟と呼ぶ神器元来の姿だ」



「神器元来の姿……」



 反芻するように呟く俺に、フルガさまは「そうだ」と頷いて続ける。



「魔物に効力を浸透させやすくするためにフィー二スの力を根幹とし、そこにオルゴーの浄化能力を組み合わせた――文字通り〝神の祭器〟だ」



「ちょ、ちょっと待ってください。私の聖神杖は聖杖が神器に取り込まれることで生まれました。ですが今のお話だと、ヒヒイロカネは必要なかったように思えるのですが……」



「はは、いいことに気づくじゃねえか」



 そう不敵な笑みを浮かべた後、フルガさまは言う。



「そりゃ〝聖具〟ってのはフィー二スと袂を分かったあとに創られたものだからな。ヒヒイロカネは単にオルゴーの力に順応し、それを増幅出来る唯一の金属ってだけのことだ。しかも元々はフィー二スの創った魔物なんだから、そりゃ一つにもなるだろうさ」



「なるほど。袂を分かったことで神器もまた分離してしまったというわけか」



 ふむ……、とアルカが神妙な顔をしていると、フルガさまはそこにいたったまでの経緯を説明してくれる。



「最初は神器で魔物たちを静めながら共生してたんだ。お前らのような聖女とか聖者が神の遣いとしてな。だが人口が増え、貧富にも差が現れ始めやがると、一部の人間どもが魔物の素材で金儲けをするようになり始めた。とある聖者と共謀してな」



「そうして秩序の崩壊が始まったのね?」



「ああ、そうだ。当然、そんなことばかりやってりゃいつかは天罰が下る。調子に乗って強力な魔物の巣へと赴いた聖者たちは、隙を突かれて全滅――そいつが守っていた管轄が魔物によって滅ぼされる惨劇が起きた」



「「「「「「……」」」」」」



 自業自得と言ってしまえばそれまでなんだろうけど……。



「そうなると事情の知らねえやつらは当然ぶち切れるだろ? だから共生なんて無理だったんだ、自分たちもそうならないよう魔物に抗う力を身につけないとってな」



「で、でもそれは……」と俺。



「ああ、人間どもが欲に目が眩んだだけのことで、魔物どもには一切非がねえ。けれど一度火の点いた民衆は止められず、残った神器使い六人のうち三人が人々と歩む道を選んだ。そして女神に対して信仰心の強かった亜人たちは、神の怒りに触れることを恐れ、それぞれが人間たちと距離を置くようになった」



「そしてフィー二スさまとの争いが始まった……」



 結論を持っていたマグメルに、フルガさまも悲痛そうに頷く。



「ああ……。当然、フィー二スは怒り狂った。何故自分の子どもたちを殺そうとするのか、そうならないよう神器を授けたのに、何故それを己が欲望のために使ったのかと」



「まあ当然の怒りでしょうね。オルゴーはどうしたの?」



「もちろんフィー二スを宥めようとしたさ。でもあいつは話を聞かなかった。当然だろ? その頃にはもうフィー二ス自体が魔物の女王みたいな扱いにされてたんだからな」



「ひどい……。フィー二スさまはただ子どもたちを守ろうとしただけなのに……」



「そうだな……。そうして凄惨な争いが始まった。早々に神器を失ったこともあって、人類側にも多大な犠牲が出たが、人間たちだってオルゴーにとっては我が子みたいなもんだ。彼女の頼みで一人のドワーフが〝剣〟の聖者とともに聖具を生み出した」



 ちなみにな、とフルガさまは不敵に俺を見やって言ったのだった。



「その〝剣〟の聖者が後に身につけていたのが――お前の着ている〝フェニックスローブ〟なんだぜ?」


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