人々は何を感じてどう生きていくのか
朝起き、観葉植物に水を与え、そして「カイン」を確認して一日を始める。
875124 122
前に表示されている875124はこれまで獲得した総カイン数、
後ろに表示されている122は昨日獲得したカイン数を表している。
「カイン」とは人の行いを数値化したもので、わかりやすく言えば善い行いをした値、仏教用語でいう徳であり、キリスト教でいう信仰、希望、愛に例えられることが多い。
現在の世の中ではこのカインが人間を判断する基準であり、その多寡によって生活水準や学歴、恋愛さらには使用可能な施設なども決められており、昨日から122増加しただけでも世界中で新たに使用可能になった施設がおよそ2000件増加している。
それだけではなく122カインが増加することによって、現在通貨で表すと2円程度1日に使用できるようになり、875124カインではおよそ14000円分使用可能ということになる。
このシステムは文明が発達し、人間の行動や感情などのすべてが空間内に記録されていることが発見され、それを全て解析できることで生まれたシステムであり、より平等性を追求した結果であるは間違いないが、
それを決定づけたのは、死後の世界においてもこのカインは有効であり、カインが多いほど死後においてもより恵まれた環境での生活ができるという研究結果が発表されたからだ。
まだ、死後の世界が完全に解明されたわけではないが、カインが多い人間ほど死後の世界において観測されるエネルギーの総量が多く、また明るい光を放つということが知られている。
自分の行動が100%反映され、それが数値化される現在は非常に平等性が高く、犯罪なども皆無で平和な社会であると言われているが、反面、すべてを決定づける揺るがない単位であるカインの特性を揶揄し、以前の資本主義社会「格差社会」に対して、現在の社会は「階級社会」と言われている。