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本気か?

 




 市場でリフレッシュした次の日。

 俺は朝一からダンジョンに訪れていた。

 意外だったのは、西園寺が出待ちしていなかったことか。てっきり今日も勝手に付いてくると思っていたのだが、その気配はない。


『寂しいのか?』

「んな訳ねぇだろ」


 茶化してくるベルゼブブを気にせず、新階層を目指してダンジョンを進んでいく。15回階層辺りから一人で闘うのが辛くなってくるが、様々な攻撃方法を駆使して着々とモンスターを屠っていった。


 ――20階層に到達し、少し休憩を挟んでからさぁ新階層に行くぞと意気込んでいる、その時だった。


「――ッ!?」


 背筋に悪寒が走った俺は、後ろを振り返らず左横に飛び込む。

 刹那、特大の火球が過ぎ去ってゆく。

 地面を横転する俺は、すぐに立ち上がって背後を確認した。


「……遠藤」

「よく避けれたな、背中に目でも付いてんのか?」


 そこに、遠藤と運動部の姿があった。

 こいつ等もしかして、ここで俺を待っていたのか?


「今の行為はどういった意味だ」

「ここまでやって分からねぇか?テメェをぶっ殺す為に攻撃したんだよ」


 開き直ったように口を開く遠藤。

 薄々感じてはいたが、やはりそうだったか。

 だが解せない。何で遠藤達は俺を殺そうとしているんだ。

 俺はどうしても理解出来なくて、遠藤に真剣な声音で問いかける。


「なぁ遠藤、確かにお前は俺の事が嫌いなんだと思っている。でもな、“殺したいほど”俺のことが嫌いなのか?そこまで憎いのか?」

「ああ」

「……」


 即答だった。

 間髪入れず、俺を殺したいと、遠藤はそう言った。奴は忌々しそうな奴を見る顔つきで、強く語りかけてくる。


「俺はお前の正義面が、見てて吐き気がするんだよ」


「秋津の件も、佐倉の件も、ほっときゃいいのに一々口出ししやがって」


「しかも相手はカースト上位の九頭原と黒沢だ。クラスの誰も手出しが出来ない、助けたら今度は自分が標的にされるからな。黙って空気を読んでるしかなかった」


「なのにお前は、何ともないような平気面であいつ等に食って掛かった。それも理由が『見てて気分が悪くなる』だと?」


「格好つけの偽善者野郎が。自分に酔ってんじゃねーよ気持ち悪ぃ」


「そんなお前だけ、この世界で一人だけ屑スキルで周りからゴミ扱いされてるのを見てやっと気分が晴れたぜ。ザマァってな」


「だけど……ゴミの筈のお前が、佐倉や委員長、黒沢達までにチヤホヤされてるのを見てよ、心底ムカついたぜ」


「何でテメェがってな。ゴミはゴミらしく、一人でゴブリン共と遊んでろよ。それに今度は、俺達にまでお節介をしやがって。余計なお世話だ、しゃしゃり出てくんじゃねーよッ!!」


 止まることなく遠藤の口から吐き出される負の感情が、やっと終えた。

 だが彼の言葉を耳にしても、俺の心には全くと言っていいほど響かない。

 何故なら、俺は何一つ悪い事をしていないからだ。自分が信じた行動を取ったからだ。勝手に、遠藤が俺を嫌っているだけでしかない。


「考え直せ遠藤。ここで俺達が争っても、何の意味もないぞ」

「意味なんてねぇよ。俺が気に食わねぇからテメェをぶっ殺すんだからな」

「本気か?」

「マジだ。逃げられると思うなよ。後、西園寺は来ねーから助けなら期待しない方がいいぜ」

「お前、西園寺に何かしたのかッ」

「邪魔だったからな。お前を一人にする為に、『神崎が話しがあるって』と適当に嘘言って呼び出したんだ」

「お前……そこまで本気で俺を……」


 どんだけ気合い入ってんだこの野郎。

 遠藤はクククッと面白そうに笑うと、


「じっくりイタぶって、無様な姿を晒した後に殺してやる」



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