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ザシュッ!
ボトッ……
おじいさんの顔を見て固ってしまった僕はそんな音で我に返った。右側がいきなり軽くなってバランスを崩し、尻餅をついてしまう。
熱く痛みを感じて右腕を見ると、何もなかった。血が吹き出している。さっきの音は……腕を斬られた音?後ろにいた金鎧の騎士を見ると血の付いた剣を構えてこちらに近づいてくる。
そしてその剣を左腕に向けて振り下ろした。
「ああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
右腕の時と違い、全てを認識してしまって切り落とされた左腕に激しい痛みを感じ、そして熱さを感じて、絶叫し床にのたうちまわった。
なんで?怖い、痛い、恐い、熱い、
いろいろな感情や感覚がゴチャ混ぜになって
何も考えられない。
痛みで叫び続ける僕を銀鎧騎士に押さえつけられ暫くすると、痛みが和らいできた。
両腕のあった所に違和感を覚え出す。何かムズムズするような……少し落ち着いて周りの様子がわかるようになるとおじいさんと目が合った。
おじいさんは目をこれでもかと見開き驚愕の表情をしている。その目線は僕の顔ではなく腕に注がれている。
腕が少しずつはえていた。
おじいさんは大きな声を出して指示を飛ばす。
そして金鎧騎士が僕の両腕を肩から斬り飛ばし、膝から下も一閃で斬り飛ばした。
先程よりもっと強い痛みで泣き叫ぶ僕を銀鎧騎士2人が押さえつけ、おじいさんがフード4人に叫ぶ。
4人はそれぞれ黒く細長い管が付いている器具を持ってきて両肩と両膝に装着した。
そしておじいさんが近づいてきて紫の宝石が付いた首輪を巻いた。
金鎧騎士に体を抱えられホールの真ん中に置いてある黒い石で出来た台座に降ろされ目隠しをされ体を固定された。
おじいさんと、おそらくフードの4人が会話では無く、歌を歌うように音を発している。
全く状況についていけない、僕は女神様によって違う世界に来て、不老不死になって幸せな新しい生活をおくるはずじゃなかったの?
新しい言葉を覚えて、前の世界にはなかった魔法を使って、いろんな場所に行って、美味しいものを食べて、恋もしたかったし、不老不死ならなんでも自由にそして幸せになれると思っていたのに。
頭で思考を続けていると、いつの間にか声が止んでいた。両肩と両膝の器具から血が取られているのがわかる。管が付いていたから何処かに運ばれるのだろう。
「誰かいないの?」
声が止んで全員が地上に戻った事も気づかない程、絶望し現実逃避するように考えに没頭していたのだ。
そして静かなホールの真ん中で意識は現実に戻された。
「誰か!!!助けて!!!これ外して!!首に何かつけられてから動けないの!!外して!誰か!誰かああああああああ!女神様!助けて!不老不死なんだよ!このまま?ずっとこのまま!?動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動けええええええ!ああああああああああああああああああ」