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馬車から降りた所は、最初に居た教会より小さい教会だった。中に入ると赤い長椅子が等間隔で並んでいて、 奥には僕をこの世界に送ってくれた女神様そっくりな像が微笑んでいた。
僕達が入って来たことに気づいたのか金鎧を着た騎士が立ち上がって礼をした。銀鎧の2人は緊張したように礼をとっていた。素人目にもわかるぐらい腕の筋肉が太いからきっと2人の上司なのだろう。
おじいさんは女神像の裏に行き何かを呟いたと思ったら、地面に振動が伝わってきた。金鎧騎士に手招きされ僕もそちらに行くと、地面の一部がスライドして階段が現れていた。
隠し階段を目を輝かせながら見ていたら、おじいさんがまた何かを呟く、すると手から光の球体が浮かび上がった。
「魔法」
この世界に来てから魔法らしい魔法を初めてみて、テンションは最高潮に達していた。
階段を降りていくようで、まず灯りを手に浮かせているおじいさん、その後ろにフードで顔を隠した4人組、銀鎧騎士の2人と降りて行った。
それから金鎧騎士に背中を押され、僕はワクワクしながら階段を降りて行きその後ろに金鎧騎士が付いてきた。
「魔法使いたいなぁ」
女神様から魔法が使えるとは言われていたが使い方がわからない。おじいさんに教えて貰うにも言葉がわからない。
「まずは言葉を覚えないとな」
これからの事を考えながら階段をゆっくりと降り続ける。聞こえる音は9人の足音と鎧の擦れる音、そして僕の小さな独り言だけだった。
どれくらい降り続けたのかわからないが下の方に小さく光が見えてきた。階段を降り終わるとそこには転送されて最初に見た部屋の2倍の広さはある円形のホールだった。
光の球体が壁に等間隔で並んでいる。
ゾロゾロと中に入って行き、おじいさんが振り返る。その顔を見た時、僕は金縛りにあったかのように動けなくなった。
おじいさんの表情は微笑んではいるけれど、目が全く笑っていなかったのだ。