第1話 ある日の夜です! (1)
第1話 ある日の夜です! (1)
「……兄ちゃんまだいたのか? 夜遅くまで大変じゃの?」
「えっ? あああ、所長さん、お疲れさまです。……また、お願いします。」
「あああ、兄ちゃんも気をつけて、かえれよの」
「はっ、はい、ありがとうございます」
まあ、こんな感じのごく普通の会話を僕は農協の所長さんとしているよ。
実はねもう辺りは真っ暗な訳なんだ!
だからねこの農協の所長さんは帰り道を気をつけるようにと、労いの言葉を掛けてくれたのだよ。
だってね辺りは真っ暗闇で──唯一の光といえば。購買部の店舗の外にある、数台の自動販売機の光のみなだで。そんな暗闇の中で、僕は自分の出した店の片づけをしている。特に今はまだ、一月の末の季節で、とても寒いし、手が悴中での片づけの作業なのだ。
まあ、取り敢えずは僕自身も指先が冷たくなるから、軍手の方はしているんだけれど。それでもね指の先は、やはりジンジンとするんだよ。
だから早く車に荷物を詰め込んで、エンジンを掛けて──車のヒーターで僕は体を暖めて温もりたいのだ。
だってさ、この農協の購買部は広島県でも県北にあたる、山に囲まれた、春や秋には田園風景のとても綺麗でのどか町だけど。今のこの時期はとても寒いの……。
今日はねたまたま、運がよく雪こそ降っていないけれど。降れば直ぐに辺り一面が白い銀世界になる場所なのだが。
先程も僕が述べたけれど。今日はねたまたま、雪が降らないから購買部の店舗にお電話を入れて販売の仕事をさせて貰っていた。
でも、お昼はわりと温かった──やはり、段々と日が落ちてくると、急に冷えてきだしたよ。
だから僕の身体はブルブルなんだよね。
「珍味屋さん、お疲れ~♪」
「おにいちゃん、お疲れさま~」
「気をつけてかえりんさいよぉ~ 事故せんように」
「じゃ、お先に──藤原さん、また電話を頂戴……」
「はっ、はい。ありがとうございます──皆さんも気おつけてくださいね。また日程が決まればお電話します! 店長さん! 本当にありがとうございました!」
と、元気良く述べた!
でもね、いよいよ……購買部の店長さんや、鮮魚部のお兄さん──それにパートのおばちゃん達も帰ったね。
もうこうなると、この静かな山の中の街にある農協の購買部だと。本当にシーンと静り返ってしまう……
でも、まあ、夏ではないから。静まり返って、ゴソゴソと──風が木や草を揺らす音を聞いても。不思議と夏のように背筋が凍り付くような事はないかな?
あれって何故だろうね?
先程も少しばかり述べたけれど。これが夏だと何故かしら?
ちょっとした音でもビクビクとしてしまう。
でも今の時期冬だと怖いと思う事が余りないから不思議に思うよ。
やはり物の怪が出現するのは夏?
と、いうイメージがあるよね!?
僕自身はそんな風に思うのだけれども!?
皆さんもそんな事はないですか?
と、又独り言を述べてしまった……皆さんごめんなさい……
と、まあ、取り敢えずは独り言をブツブツと述べるのはそろそろ辞めて……慌てて片づけよう。
外は寒くて冷たいから……
でもまあ、あれだよ。慌てて片付けてもアパートに帰れば冷たいのだろうね?
だってさ、僕は親元離れて、一人でのアパート暮らしなのだ。特に僕自身の場合はつい最近彼女とも別れたばかりだから。部屋に帰っても誰も僕を温めてくれないの。
でもまあ……こんな真っ暗闇の購買部の前の駐車場よりも。アパートに帰る方がいいから、慌てて片づける事にするよ。
◇◇◇◇◇