遠い記憶の中で04
『被告人、神名タケミカヅチ。入廷してください』
裁判長代理の人がそう言うと多くの扉が開き、座っていた裁判官、さらに今まで座っていた人の半数が立ち上げる。
ミレイに似たヴェルダンディも柵に手をかけ、目元に涙を浮かべながら彼を見た。
「姉さん。落ち着いて・・・」
「でもぉ・・・もう、旦那様と放されて、3日だよ・・・」
何とも弱弱しいヴェルダンディ。
こういったところもミレイにそっくりに見えるアヤカとしては思わず笑ってしまう。
ミレイは、生まれ変わる前もお父さん大好きだ。
玄関で赤ん坊を見たときの空気と言い、日本にいたときのお母さんそっくりである。
『ちがうわ。ミレイが、ヴェルダンディ様・・・トキ様にそっくりなの』
「フー。どこ行っていたの?」
『わたしは、この夢の行き先が確定するまで現れることはできないの』
「夢の行き先が確定?この未来は、未確定だとでも?」
『そうみたい。・・・その影響で』
フーは赤ん坊の自分を指さす。
彼女はこちらをじっと見て笑顔で手を振っている。
『あの私は私たちが見えているのよ』
アヤカはフーに向けていた視線を赤ちゃんのフーに移す。
「・・・それは、どうして?」
『わからない・・・わ』
「そうですか・・・」
フーは本当にわからないわけではなさそうだった。
おそらくだが、推測の域を出ないのだろう。
アヤカも同じく考えはあるが、それが正しいとは思えなかった。
そうこうしているうちに裁判は進む。
罪状を読み上げられ、罪の内容をはした後、被告人の弁解だった。
今回のタケミカヅチの罪は神典の果実。エデンのリンゴを注入された幼生児に対する無免許摘出。
解り易く言えば、違法薬物を注入された幼児に対し、医師免許もなしで手術を行ったことに対する刑罰の話だ。
今回使用されたエデンの林檎とは原初の神と呼ばれる存在が作った5つの始まりの世界のうち一つの世界で、生き物のいないただ自然の実が存在する世界に生まれた堕落の果実。
それは、原初の神が最も手に入れたかったものであり、神では消して手に入らないもの。
『成長』と言う名の全能を捨てる果実であった。
原初の5つの世界のうち、いまだ存続を続けるのは1つ目の星。地球のみ。
この世界に神は何も与えず、ただ眺めるだけだった。
・・・いいや。一つだけ与えたものがある。『不完全』であること。
他の世界は全能者に近いものがあらわれ、王となり、星を喰いつくし、星を殺した。
また、唯一知成体のいないエデンの星はそこになる神々の果実めぐって争いが起きたことで、原初の神が自らの星をどこかに封じた。
そんな封じられた星へと至るための鍵がエデンの林檎。
エデンの星に一定周期でしかならない、奇跡の果実である。
近年、エデンのリンゴの現物を保有していた巨大派閥のほうかに伴い内部情報が流出。
そこにあったエデンのリンゴの遺伝子パターンの解析論文。
それによって作られたエデンのリンゴは現物と違い大きな副作用が存在し、神を完全なる人に落とすわけではなく、不完全な神と言う概念矛盾を引き起こし、終焉になりかねない存在を作り出してしまうのだ。
それ摘出するには特殊技術が必要で、医師免許を持っている医療系の神名を持つ者の中でも片手で数えるくらいの人だけだ。
しかもそのクラスになると常に予約がいっぱいでエデンの林檎が広まって時がたち、下火になったこのご時世、どうせ申告してもまともに受け合ってくれないのが現状だという。
故にタケミカヅチは妻であるヴェルダンディと共に赤ん坊を手術した。
ヴェルダンディ医学神としての神名を得ることができるほどの腕と知識の持ち主で、秘密裏に手術を依頼されることもある。
特に、裏組織を潰した後とか・・・。
無論そこにはタケミカヅチもいるわけで、天才である彼はあっという間に手術を学び、自らも行えるようになった。
今回は、赤ん坊たちの深いところまで林檎の副作用が進んでおり、急を要したことには間違えない。
このような言い方はフーに必礼かもしれないが、世界を救たと言ってもいいのかもしれない。
『審議へと移る』
すると、突如として天秤が現れる。
天秤の中央にはモニターが付いていいるが今は何も映っていない真っ白な画像。
『正義と平定の天秤よ・・・彼に神判を』
『汝、タケミカヅチを有罪とし、――――――』
『――――――――罰としてエデンにおける管理者を命じる』
その瞬間、会場にいた全員が驚きの表情を浮かべた。




