遠い記憶の中で03
ちょっと短いです
「2つ、教えてください」
『・・・いいわよ』
アヤカから顔を話したフーは少し離れてミレイの質問を待つ。
「まず一つ。この夢の世界にいいる間に外の時間はどうなっていますか?」
『気にしなくても大丈夫よ?ここでどれだけ時間が経とうと丸一日寝ていたことになるだけだから』
フーは特に何でもないようにそう答える。
「2つ目に、これを全て見た後。私は強くなれますか?」
『過去を、私を受け入れたなら確実に強くなれる。・・・でも、それでもあなたの欲しい領域まで行くことはできないと思う。だから、あくまでこれは貴方が過去を見てそれでもなお力を欲するなら・・・そのときは道を示すわ』
フーはそう答えた。
すると、アヤカは一度息を吐き、フーをまっすぐ見つめる。
「覚悟は、・・・できました」
アヤカのその目には確固たる意志が見れる。
『そう・・・あなたは、私と同じで優しい。けど、溜め込みすぎないことを・・・約束して』
彼女はそう言って歩き出すと、あたりの風景が変わった。
※※※
白い世界の中に一本伸びる黒い道を歩き続けていると、唐突にフーが口を開く。
『タケミカヅチさまとヴェルダンディ様に助けられた私たち。でも、さっきタケミカヅチ様が驚いていたように、エデンのリンゴを一度でもその身に受けた存在は完全なる神へは帰れない・・・』
そう言ってアヤカに道を譲るように黒い道の端による。
彼女が前を開けたことによって見える黒い穴。
ここに入れという事だろう。
「ふぅ、・・・いってきます」
『行ってらっしゃい』
アヤカはそう言って黒い穴に飛び込む。
―――そこは傍聴席だった。
※※※
あたりを見渡すと裁判所の判決場であり、アヤカの隣には二人の赤ん坊を抱えるヴェルダンディとフー(赤ちゃん)を抱える女性がいた。
「・・・あれ?誰かに似ている気が」
人から見えないことをいいことに彼女のかをじっくり見るアヤカ。
「あァいい!」
突如として、その女性の中の赤ん坊フーがアヤカに向けて手を伸ばし、暴れる。
「ふーちゃん?」
女性は戸惑ったように赤子をあやす。
「あれ、やっぱり見えてる?」
アヤカは赤ん坊のフーにそう声を掛ける。すると、・・・
「あい!」
と言う元気のいい返事が聞こえた。・・・偶然、か?
「どういうこと?」
アヤカは戸惑いを隠せないものの、誰かに見られることは無いのであたりで何ら騒ぎになっている様子はない。
今こうやって周囲を確認することで気が付いたが、傍聴席はすでに満席。
少し偉そうな方たちが多く見える。
「ふーちゃん、今はしずかにね。お姉ちゃんの雷堕ちるよ」
「・・・あい」
そう言われ、思い出したようにヴェルダンディをみる。
ミレイによく似た彼女は、少し暗い面持ちで傍聴席の前にある柵の向こう側に用意された、主役の出てくる扉を不安そうに見つめている。
「・・・まさか、これって」
その瞬間、扉が開かれて裁判官が入場する。
どうやら、私たちの知る裁判所とは違うようだ。
裁判官と思われる人たちが入ってくるなり、傍聴席の半数が立ち上がる。
裁判官たちも席の前に着き、傍聴席を見て何やら驚いている。
ちなみにフーを抱えた女性が立ち上がったのに対し、ヴェルダンディは座って、裁判長を睨みつけている。
その裁判長は出す脱水症状にならないかと言うくらい、汗をかいている。・・・あ、倒れた。
すると、隣の裁判官が裁判長の席に着き、マイクを持つ。
『これより、神典の果実。エデンのリンゴを注入された幼児に対する無免許摘出手術を行ったことに対する裁判を行います』