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遠い記憶の中で02

 



『もう、聞くことは無い?』


「・・・」


『聞きたいことが多すぎてどれから聞いていいか混乱していると言ったところね。じゃあ、まず私が先に話すわ。そうすればいくつか疑問も解けるから。・・・返事は?』


 何でもお見通しと言うかのように言葉をかけてくるフー。

 そんな彼女にアヤカは頬を膨らませ渋々答えた。


「・・・わかった」


『拗ねた私らしい答えね』


 フーは嬉しそうにそう言うと、アヤカは余計不機嫌になる。

 しかし、自分と同じ顔にいじられていると思うと少し複雑でいつの間にか怒りが消える。


『フフ、自己嫌悪して冷静になる。私の精神統一の方法。記憶を失っても根っこは一緒ですね。まあ、あの人がお母さんなら当然ね』


「ずっと思っていたのだけど、なんであなたは私に関してそんなに詳しいの?」


『簡単。私は貴方だから』


 また同じことを言う。

 でも、これでわかることが一つ。


「記憶を共有しているのね・・・」


『!?』


 フーが少しだけ動く。それを見逃し程、軟な教育を受けていないアヤカはそれを肯定と受け取る。


「なら、この状態もうなずける。これは夢に近い・・・そう、深層意識内。お父さんの卒論で読んだことがある。深層意識に内における心理空間の論文」


『すばらしいね・・・』


 フーはとても満足そうにアヤカの導き出した答えに拍手する。


『さて、説明すると言っておきながら先に答えを導き出されてしまってはこちらのメンツは丸つぶれだから。一応話しておくべきだったことに加えて、追加情報をあげよう』


 フーはそう言ってベンチから立ちあがり、アヤカの手をつかんで歩き出した。


『ここは神世界と呼ばれる神々の住む領域だ。元々、君のお父さんレンジの最初は神から始まる』


 フーに連れられて歩くうちに信号で止まる人影をとらえる。


「お父さん・・・」


『この世界に名前を持つ者はほとんどいない。(あだ名、愛称はある)それは一級の神格を持つことを示すから。けど、彼は持っていたんだ。建御雷(タケミカヅチ)と言う日本神話最強の雷神の名を継承した。そして何より彼はこの神世界においても警察に似た組織、神域警務庁と言う組織に所属し、その長である破壊神(神世界最強)に膝をつかせたものとしてこの世界のSPとして仕事をしていたの』


「・・・やっぱり、この世界でもそんな強そうには見えないのですね」


 レンジの見た目は温厚でおっとりしていそうな雰囲気を感じるので、とても武闘派には見えない。

 この夢の中のレンジ・・・いいや、タケミカヅチもまったく同じ見た目で、雰囲気も同じ。

 所々違うところは違うけど、どちらかと言うとレンジが染髪やカラコンをつけている感覚に近い。

 それほどまでにそっくりなのだ。


 アヤカは、信号を待つタケミカヅチの正面に回って彼を覗き込む。


「きゃきゃ」


「うん?・・・正面に誰かいるのか?」


「!?」


 赤ん坊のフーが明らかにアヤカに向けて手を伸ばしている。

 タケミカヅチの反応からしてアヤカは普通には見えていない。


「・・・どういうこと?」


『わからない・・・だが、ここは私の記憶に違いない。その証拠にこのあたりには人がいない。それは、私が覚えていないからだ』


 確かにあたりを見渡しても人(神?)は見当たらない。


「あうあうぁぅ・・・すーすー」


「おや、寝ちゃった。赤ちゃんは本当にかわいいな・・・」


 信号が変わったのを確認したタケミカヅチのはそのまま信号を渡る。


『私たちも行きますよ』


「あ、やっぱり着いて行っているんだね」


『正確には、この夢はあの私の赤ん坊を中心に構成されています。なので、あの赤ん坊の半径数メートルはしっかりと描かれ、それ以外は張りぼてですよ』


「じゃあ、あの掛かっている霧は・・・」


『そう。補正が掛かっているだけだからあなってるの』


 アヤカは、ためしに霧の下まで行くがある一定まで進むと先に進めなくなる。


『何してるの?言っちゃいますよ』


「あ、待って」


 アヤカは今、フーを姉のように感じた。

 なんだかんだ言って妹を可愛がってくれる、素直になれない姉。


『なに、笑っているの?』


「ふふ・・・なんでもない。ところで、お父さん…じゃなかったタケミカヅチさんはどこへ向かっているの?」


『・・・もうすぐ着くわ』


「え?」


 すると、タケミカヅチは先ほどの公園から少し離れた一戸建ての家に着くと、インターフォンを鳴らす。


『はーい』


 そう言って屋内から、一人の女性が出てくる。


「お帰りなさい、あなた様・・・って、おや?」


「えっと、トキ。・・・ただいま」


「・・・」


 家の中らから出てきた女性はタケミカヅチと抱えた赤ちゃんを見るなり、顔から表所が抜け落ち、温度が落ちたのか冷気が漂う。


 さらに背後には槍を持った般若の姿が見える。


「あ、待ってトキ!この子たち拾ったの!ちょっと見て!エデンの林檎使われてるようで」


「え?・・・じゃあ、早くあなた。地下室へ!」


「あ、ああ。わかった」


「わかってない!エデン御林檎取り込んだなら・・・」


 おくさんに手を取られてタケミカヅチは家の中へとつれて行かれる。


『・・・アヤカ?』


 そんな様子を少し離れてみていたアヤカ。

 そんな彼女にフーは声を掛けるも、名にも反応しない。


『あや「あれは・・・おかあさん?」』


 心配そうにするフーをの言葉を遮り、アヤカは問いかける。


『・・・そうよ。正確には、ミレイの最初の前世。神名はヴェルダンディ、タケミカヅチはトキと呼んでいたわ』


「そう・・・」


 アヤカは、家の中に入ろうとするがそれをフーに止められる。


『ここからは・・・見れないわ』


「・・・わかった」


 アヤカはそれ以上進むことは無かった。


『あの中でね、この先起こる悲劇の始まりが起こっていたの』


「それは・・・」


『それは、私たち3人がおった罪。・・・そして、あなたが思い出さなくてはいけない罪』


「・・・わたしが」


 アヤカがそうつぶやくと、フーがアヤカにぶつかるるのではないかと言う距離まで近づくと彼女はアヤカに問いかけた。



















『ねえ・・・ここから先を見る覚悟は貴方にある?』










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