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宿は・・・

 



「空中要塞とは聞いてましたが・・・いたって普通の町のように見えますね」


「ミレイ、この街の作りはこう見えてかなり独創的ですよ。江戸の城下町のようだ」


 ハクレンがそう言うとカクが振り返る。


「ふーん、あんた、あの方と同じようなことを言うんだね」


「あの方?」


「長である、アール様。さっき会った」


「カク、おしゃべりが過ぎます。あの方以外の地上の民など・・・」


 兎人であるスケはミレイとハクレンを敵を見るような目で見る。


「スケ、それしたらアール様怒るぞ」


「ッ!・・・そうでした」


 スケはこれ以上何かを思い出さないように二人から目をそらす。

 その様子にあのアールという男がわからなくなる。

 ただ、自分と同等かそれ以上であることはあると感じているハクレンである。


「・・・ふふ、スケ姐は本当にアール様大好きだよね」


「「!?」」


 その声は突如としてスケの真横に現れた幼女から馳せられた声だ。

 気配を察することのできなかったハクレンとミレイは驚きを隠せない。


「あれ?キイラじゃん、どうしたの?」


「会議、やるよ?」


 すると、二人とも一瞬呆ける。


「・・・あ、忘れてた」


「もしかして、待たせてます?」


 二人が少し青ざめた顔をする。


「うんん、アール様も伝えに行ったはずなのに目的を忘れていたこちらの落ち度だから気にするなって。だけど、そっちの二人を今日は領主館の客間に泊めてから来てほしいと言ってたよ」


「領主館ですか・・・。もしかして」


 スケの顔がより青くなってゆく。


「あ、ちなみに、しばらく夜はなしだよ?」


「「え!?」」


 推測が当たったスケと、意味が解らないと言わんばかりに驚くカクが声を上げる。


「だって、お客さんいるのにできるわけないじゃん。・・・お姐たち、痴女?」


「ば、キイラ、どこでそんな言葉を・・・」


「やはりキイラの見た目は信用なりませんね・・・」


 キイラ痴女扱いされた二人は顔を真っ赤に染め、ため息をついて肩の力をぬく。


「お三方、それくらいにして。・・・すみません、ミレイ様、ハクレン様。大事なお客さんだというのに」


 そう言って謝るのは半透明の体を持つ女性。


「わたくし、この空中要塞の総括をしております、霊体種のレイです。お見知りおきを」


 そう言ってレイは二人に挨拶をする。


「あたしは「結構です!」み・・・え?」


 ミレイもあいさつをしようとしたが、威圧的なレイの声によってさえぎられてしまう。


「はっ!・・・こほん。すみません。あなた方は試練に参加されるだけ(・・)の方。ならば、お客人と呼ばせて頂きます。私はこの歳に住む仲間しか名前で呼びませんので」


 レイがそう言うと、カクがハクレンに近ずき耳打ちをする。


「あの姉ちゃん何かしたのか?・・・レイがあんなの見せるのは、嫉妬している時だぞ?」


「それは、あのレイと言うことミレイに面識があるということだよな?」


「まあ、そうなんじゃない?」


「・・・ふむ」


 ハクレンはこの世界でのミレイの事を深く知っているわけではないので、何とも言えなかった。





 ※※※





「ここが領主館ですか・・・」


 案内された領主館は近代的な・・・日本にある外国の大使館と遜色のない物だった。


「この領主館は先日、アール様によって建てられたものです」


 レイの自慢するかのようなセリフに心がもやもやするミレイ。

 ハクレンはその領主館を見つめ、考える。


「ねえ、ここ誰も住んでないの?」


「はい、アール様が適度に清掃だけはしてほしいとのことなのであとはすべてご自身でなされます。ですので申し訳ありませんが、寝床の提供以外はすべてご自身で行うことになります。屋敷内の食料や調理器具を使って自炊して頂いても構いませんが、今しがたとおってきた通りならば飲食店も多いのでそちらでお食事をお取りいただけます。・・・ああ、キイラ。あれをお二人に」


「りょうかーい」


 するとキイラは懐から2つのリストバンドのようなものを取り出す。


「これの地では地上の貨幣は使えません。こちの貨幣がるのですが、お二方はあまり長くこの地にいないと思うのでアール様が代金を立て替えるとのことです。料金を支払うときにそれをお見せしてください」


「わかったわ」


「了解した」


 ミレイとハクレンが了解の意を示すと4人は踵を返し屋敷を後にする。


「では、私たちはこれで・・・」


「またねー」


「またバトルしようぜ!」


「・・・」


 四者四様の表情を浮かべる彼女らにミレイは控えめに・・・まるでアヤカを幼稚園バスに乗せて送るかにような娘を見る目で見送った。


 その様子にハクレンはふとあのアールという人物についての推測を立てるが、様々な理由を盾にそれを否定する。

 高度が高く秋のせいか夕暮れの風は少し寒かった。




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