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壊れかけの魔王と己を殺す聖女

 



 レンジの中にいる主人格『自分』による自身の殺害命令。

 それを見て、一番取り乱したのはミオだった。

 レンジはミオと共に試練に挑み、・・・そして、バラバラになった。



 それを自覚した瞬間、彼女の中に『黒』が広がる。



「・・・!まてっ!?それはまずい!」


 ハクレン、コクレンに送られたメールを見ていた周囲の人物は一人離れたところにいるミオの肩をつかみ、色々な言葉を駆けるジルドニアに驚き、そして・・・気づく。

 ミオの中に得体のしれないなんかが今表に出ようとしている・・・。


「ミオ様!」

 全員がその得体のしれない驚異に怯む中いち早く動いたのはコクレンだった。


「落ち着きましょう・・・本当の私にあった時、そんなあなたを見てはどんな顔をしてしまうか、わかりませんよ」


 そう言ってコクレンはミオを抱きしめた。

 すると、ミオの中の何かは奥へと戻り、彼女の目に光が戻る。

 ミオはそのまま顔を上げ、抱きしめていたコクレンと顔を合わせる。


「・・・うぅ、うぇえええええん!ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい―――」


 コクレンの顔を見たミオは目尻に涙をため、大声で泣き出した。

 コクレンはそのまま何も言わず、謝り続けるミオをやさしく抱きしめ彼女の背中を一定のリズムであやすようにやさしくたたく。


「・・・ハクレン」


「わかってる・・・だが、どうする?」


 それを見ていたミレイは弱弱しくハクレンの袖をつかんだ。

 それが何を意味するのか分からないハクレンではない。

 ハクレンはレンジの過去の記憶を持っている。

 ミレイの声、この様子。

 これらから何が言いたいのかはある程度分かる。


「・・・ミオからコクレンは多分離せないぞ」


「うん・・・ミオちゃんのあれ、多分やばい。それこそ、邪神と同じくらい」


「共同戦線・・・は無理そうだな」


「・・・ハクレン、私決めた。レンジ君を助けるチャンスを一回に絞る」


「・・・いいのか?」


「本当は嫌だ。・・・今にももう一人の私が暴れようとしてる。でも、レンジ君はきっと悲しむからそれは押し殺す。・・・わたしは、あのレンジ君の奥さん。彼は、最も悲しむ人の少ない結果のみを目標とするの・・・だから、私もがんばる」


 その目は闇を必死に抑え込む、一人の恋する乙女の顔であった。

 その顔をかつて一度だけ主人格と共に見たことがある。

 その時も、困っている女の人がいて、救えるのはレンジだけだ。

 彼女はその時、今のような表面上いつもより明るくふるまうも、普段を知る者なら違和感を感じてとても見ていられなくなるような苦しさを漂わせるのだ。


「・・・ミレイ」


「ッ!・・・ハク、レン?」


 ハクレンはミオをやさしく抱きしめ、頭を撫でた。


「・・・俺は主人格じゃない。でもね、レンジの中で一緒に君を見てきたんだ。人生経験豊富だから転生した君でも娘に思えるくらいね。だから、これは父親が娘をあやしているだけ」


 すると、ミレイはハクレンの胸元に顔をうずめたまま言葉を発する。


「・・・レンジ君も同じことをしました」


「・・・そうだね、『自分』は不器用だからな。でも、勇気はあるやつなんだ。『俺』だったら、あのとき、動けなかった」


「・・・」


「『自分』はさ、俺達のどの人格よりすごいやつなんだ」


 ハクレンはミオに言う。


「俺たちは、全員英雄と呼ばれた奴のもう一つの人格として長く生きてきた。けどある時そんな俺らが引き寄せられるようにひつの肉体に収まった。最初は驚き、恐怖した。引き寄せられる時、俺は彼の中に暗く深く何もない純粋な闇を感じた。一度入ったら出ることはできない。光も、音も、希望もない。そんな闇の深い人物。・・・ごくまれにだがそういうやつは存在する。そういうやつはかなり強力な芯を持ていて人格をの取ることもできなかれば、そそのかすこともできない。・・・けどな、あいつは。知っていたんだ(・・・・・・・)。俺たちがどうゆう存在か。そして、他と変わらない不変不動の芯を俺たちに聞かせて行ったんだ。平凡な自分に力を貸してくれと・・・」


「・・・レンジ君らしい」


「そうだ、あいつは平凡と自分のことを言う。だけど、それはあいつのカリスマ性によって集められた人々が天才さえも超越する才をあいつに見いだされ、それらと引くするからだ。天才を超越した存在を導くのは確かに万能である『自分』では難しい。だが、身体系なら『俺』が、知識系なら『僕』がいた。俺らは元々そう言った奴を導くのが役割だ。才を自覚し、向上心のあるやつを伸ばすのはたやすい。ただ、わすれてはいけないのがこの基盤を用意したのが、『自分』であることだ。0を1にするのは1を100にする何百倍も難しい。故に『俺』や『僕』のような奴は一人の天才を生み出すことしかできず、天才を周囲に伝染させることはできなかった。積み重ねても何にもならない0。それを1にする労力は途方もない切っ掛けと、勇気と道しるべと、目標を用意した上で自覚させなくてはいけないのだ。それらが中途半端では秀才で終る。10の秀才より1の天才。俺たちのような霊の合言葉だ。天才とは0から1を生み出す者の事。秀才は1を100にするもの。どちらが社会に必要か?もちろん秀才だ。・・・だが、秀才は増えすぎた。不完全な天才。ゆえに我々、革新的なことを起こした者にとって秀才とは忌むべきものであり、天才とは己たちが一人につき、100%注力することでしか導くことでしかできないと・・・思わされていた」


「・・・レンジ君は、いつも100%以上を出すもんね」


「そう、あいつはいつも己の限界の上を上げ、常に平凡でいた。平凡だからこそ信用を得て、平凡だからこそ受け入れられ、平凡だからこそ、周囲に多くの友がいた。俺や僕のいないあやつは常に平凡。もしかしたら、邪神軍をそのカリスマ性ですでに何人か手籠めにしているかもな」


「・・・なんだか、不安のになってきた。また、いろんな女の子を落としてそう」


「はは、そうだね・・・」


「会いたいよ・・・ダーリン」


 ハクレンの胸に顔をうずめ誰にも聞こえないような小さな声でそう言ったミレイにハクレンは少し悲しそうな雰囲気を纏いながらもミレイの主人格を思う気持ちに自然と笑顔があふれていた。





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